益子の陶器市の帰りに寄った内町工場の一角に、経木の箱がぶちまけたように積んでありました。
アイスクリームの箱です。
その昔、経木に入ったアイスクリームは鉄道の駅でしか売っていませんでした。しかも、比較的大きな町の駅にしか売っていませんでした。冷凍設備がどこにでもあるというものではなかったからです。
昔の汽車は、急行ですら駅には長く停まりました。発車するまで、お弁当、お土産もの、お茶などの売り子さんが、停まっている列車のホームを足早に行きかい、呼ばわる大きな声が共響して、旅心を盛り上げていました。
「えぇ、アイスクリン、アイスクリン」
と、肩から紐をかけた木の箱に入ったアイスクリームを売る人がホームを歩いていて、買ってもらえるとわかると、開けた窓から身を乗り出して手を振って合図したものでした。
経木の箱には蓋はなくて、すりきりに入ったアイスクリームには紙がかぶせてありました。
どうやって凍らせていたのか、冷凍ミカンやアイスクリームはカチカチに凍っていたので、すぐには食べられず、しばらく溶かしてから紙の蓋を取ると、アイスクリームはかすかにクリーム色で、卵の味がほんのりとして、とても美味しいものでした。
内町工場の経木の箱はどれも反り返っていたので、わりと反っていない箱を二つばかりいただきました。
みやこ染のビンも見つけました。
「みやこ染」というビンのエンボスを見る前に、錆びた蓋の灯台模様を見て、
「あっ、みやこ染だ!」
と気づきました。
写真に撮るとわりと読めますが、肉眼ではその上の写真のように錆びていて、字までは読めません。
持っている中身入りの
ビンの蓋と比べてみると、まったく同じでした。
さて、夫が本を2冊、私も2冊買ったので、なんとビンとアイスクリームの箱はおまけにしていただきました。
本だって、1冊300円とか500円なので申し訳ない気分ですが、ありがたくいただいてきました。
夫が買ったのは、ゴッホの画集と『石田徹也ノート』です。
「あれっ、この本うちになかったっけ?」
「あったかもしれないなぁ」
我が家には私が買った石田徹也と夫が買った石田徹也、2冊あるはずです。
「取り置きして、後でご連絡いただいてもいいですよ」
と、内町工場のSさん。
「あぁ、まあいいです。いただいていきます」
「そうですか」
というやり取りのあった『石田徹也ノートでしたが、
やっぱり、ありました。
私が買ったのは、池澤夏樹の『見えない博物館』と田中小実昌の『香具師の旅』でした。
田中小実昌さんは、
野見山暁治先生の妹さんのお連れ合いで、野見山先生のエッセイの中では「こみちゃん」としておなじみですが、本は読んだことがありません。
これは夫が大好きな絵、ゴッホのジャガイモを食らう人々です。
そして私は、画集の中に「織り機」という絵を見つけました。
当時の織り機の様子がとてもよくわかるのですが、さらにじっくり見ると、よくわからないところが一か所あって、何だかもやもやしてしまうのですが。