2025年12月2日火曜日

夜な夜な針を持って

夫の思いつきから、先日八郷のBOOKCAFEえんじゅのアトリエでキルト展を催しましたが、じつは2月末から3月のはじめにかけて、東京からもアクセスのいいつくばで、夫の講演会に合わせて、再びキルト展をやることになっています。
昨日は、夫の講演会場を申し込む日で、朝早く出かけ、しかし道が通勤者で異常に込んでいて、着いたのは受け付け開始の5分前の8時25分、もらった受付番号は25番だったのでやきもきしましたが、無事に希望日の2月28日に、集会室を抑えることができました。


というわけで、先に予約を済ませているつくば市民ギャラリーで、数日間(5日予約しているけど、5日はきついので、短縮を考慮中)キルト展をすることが本決まりになりました。
会場が広くて手持ちのものだけではちょっと寂しいので、もう一つだけですが、昔つくってすでに使い倒してしまったキルトのコピーを、しばらく前からつくっています。


材料の布はたくさん残っているので、これを使っています。その昔、木綿屋さんでいただいた布で、少しだけ自分で染めた布も混じっています。


取り出してきて、色をできるだけそろえて並べてみました。
足りない色は、それなしですます以外ありませんが、量は十分あります。

パッチワークが世に知られ始めたころ、吉祥寺の木綿屋さんからシーチングを染めたいので、見本色を決めて欲しいと頼まれたことがありました。その返礼として、染めあがった布を数メートルずついただいたのは、とてもありがたいことでした。20色ずつ、2度ほど色見本をつくったと記憶しています。


いただいた布はお店に並べる前の巻いた布の端ですから、スタンプがあったり、中には結んで染めたのか、絞った形に染まってない布角があったりしました。

今では色のついたシーチングは当たり前に売られていますが、それまではシーチングは背広の裏打ちなどに使うもの、すべて生成りで、色のついたものはまったく売られていませんでした。先駆的に染めたシーチングを売り出した吉祥寺のその木綿屋さんは以後数十年間大繁盛して、一世を風靡しましたが、数年前に店を閉じたと、何かで知りました。


染めたシーチングが現れる前まで、木綿の無地の布と言えばブロードでした。ブロードは袋物の裏布として使われたりするもので、シーチングより細い、撚りの強い糸で織られています。夏場だけ布地屋さんの片隅で売られていましたが、えんじ、紺などくすんだ色ばかり数色しかないのが常で、布地屋さんを何軒まわっても、欲しい色はなかなか手に入りませんでした。
あちこち探しているうちに、自由が丘で、輸出用の無地のブロードの半端ものを売る、しかも冬でも売っている、たった2、3坪の小さい店を数軒見つけました。狂喜して明るい色の布などを手に入れ、定期的に通ったりもして、パッチワークもつくりやすくなったものでした。


さて、今はもうないキルトの写真を見ながら、画用紙で実物大の型紙をつくり、色を決めて布を切ります。布を広げたり、色合わせをしたりするのは昼間の光でないとできないので昼間に作業して、夜に縫い合わせます。
失われたキルトはブロードでつくっていたので、どの色もはっきりしていたのですが、シーチングは濃くは染まらず、どうしてもパステルカラーになってしまいます。


昔のコピーと言いながら、いざ復元しようとしたら好きではない模様も多々あったので、デザインを替えたりしながらピースを縫い、昔の写真を参考にしながら配置を決めます。


縦まつりで縫い合わせているので、こんな形に綴じ合わせていきます。
全部で121枚のピースをはぎ合わせるのですが、もうあと20枚ほどつくらなくてはならず、あれこれ、デザインを思い浮かべては楽しんでいるところです。




 

2025年12月1日月曜日

ワンゴルパフ


韓国のイグサの籠、楕円形のワンゴルハプです。
しなやかだけど腰のない、イグサで編むものですから、へたらないように二重に編まれています。


本体の底です。
楕円に編まれていますが、


内側を見ると、底の編みはじめが楕円ではなく円形に編まれています。円形に編みはじめたものを楕円にして、胴へと編みあがるところからはまっすぐ立ち上がっているので、その立ち上がりの起点で外側の大きさと内側の大きさを合わせているようです。外側と内側の間にずれや隙間などなく、内籠は美しく収まっていて、縁の始末も端がここに隠されているのかと疑うくらいきれいです。


蓋の外側は、本体の外側よりさらに細かく編まれています。
写真の右の方、ちょっと波打って破綻が出ていますが、材料を足しながら楕円に編んでいくのは、とても技のいることだと思われます。


蓋の裏も楕円ではなく円形に編まれています。
よく見ると、円から楕円に移行するために、途中で折り返して段数を増やしていますが、とても自然で、折り返したところに穴も開かず、きれいに編み上げています。


褪せていますが、本体にも蓋にも水鳥が編み込まれています。
この水鳥は、花婿が花嫁に贈る家鴨でしょうか? だとしたらおめでたい。こんなワンゴルハプをもらった花嫁は、どんなに嬉しかったことでしょうか。


蓋には、花らしきものも編み込まれています。


細い材料を選んで細かく編んでいる蓋と、強度を出すためにちょっと太いイグサで編んである内側を比較してみました。技術の高さに驚きます。


韓国の藁と草の文化』にワンゴルハプのことが出てこないのは、ワンゴルハプは民具ではなく、両班の使うものだったということだったのかと、知りもしないで夢想しているところです。