アイヌの男性たちの人形です。
あんなによく知られたアットゥシアミブ(半纏のようなアツシの着物)をまとわず、日本の着物に袖なし羽織のようなものをまとっているのには、何か理由があったのか、なかったのか、着物はシナかオヒョウの繊維で織られたもの、袖なし羽織はからむしなど草の繊維で織られたものと思われます。
美しく織られた布たち。着物にはアイヌの唐草模様が木版で押され(あるいは手描きされ)、袖なし羽織は草木で染められています。
張りのある生地なので、小さな端布を折ったり曲げたりするのは難しいと思われますが、とてもきれいに仕上げてあります。
男性たちは二人とも、堂々とした立派なお顔をされています。髪や髭が黒々としているので、壮年の男性でしょうか。
お土産ものとしてつくられたものかどうか、手は片方を動かすと、連動していてもう一方の手も動きます。
アイヌの服装は、西から保温性の高い、しかし布としては薄手の木綿が手に入るようになって変貌します。木綿の普及で、織りあげるまでに数カ月かかる、木の皮を剥いで繊維を採って糸にするアットゥシはやがて織られなくなり、薄手の木綿布を重ねて綴ったりすることによって、上着にはより手の込んだ模様が施されるようになります。
実際に、こんな服装をしていたアイヌがいたのかどうか、いぶかしく思いながらも木綿以前の着物をまとった男性たちの佇まいを楽しんでいます。
我が家のアイヌコーナーはむき出しのところ、ここに置いては布が埃で傷むので、この場所にいていただくわけにいきません。
というわけで、アイヌの男性たちは、ガラスケースに収まっています。フランスの若くはない女性、メキシコの女性、ノルウェーの女性たちに囲まれて、ちょっと居心地は悪いでしょうか。
アイヌの衣装を知るには、『アイヌの衣文化の研究』(津田命子著、2014年)をダウンロードすることができます。