八郷の中のどこかへ、用事で行ったとき、時間があれば、まだ通ったことのない道を通ってみることがあります。
八郷盆地の真ん中にある、富士山(ふじやま)をふもとの道を通っているとき、抜けられるかと思って入った道は、行き止まりになっていました。
その道沿いにあった農家の庭、大きくはないのですが、京都の禅寺の庭かと見まがうほどの美しい庭でした。
目立つ庭木は、百日紅と松です。ところどころに筑波石を配し、石と一体になって、サツキが植えられていて、見事に刈り込まれています。タマリュウが低い緑をつくっていますが、他には草花は見当たりません。
普通、農家の庭で、美しい庭を見つけるのは、なかなか難しいものです。豪農は、築山や流水、古木などで立派な庭を造っていますが、ちょっと重過ぎます。
また、大きな石や石灯籠などをたくさんおいて、「どうだ」と言わんばかりに、成金趣味が鼻につく庭もあります。欲張って、あれも欲しい、これも欲しいと、木や草花の種類を増やして、植木屋のようになった庭もよく見かけます。どれも、要素が多すぎます。
ところが、この庭はそんな一つ一つの欲望を抑えて、少ない要素で、しかし、ある空間をつくりだしています。
だんなさんが、刈り込んだばかりのサツキは、地面すれすれまで、びっしりと葉が繁っています。我が家の、手入れの悪い、すかすかのサツキが恥ずかしくなります。
言い訳はできません。この庭を造ったのは、なんと、たったの十年前だと言うのですから。
写真の右に道があり、家は左にあります。道との境に、塀などがないのも、すてきなところです。
また、八郷の素敵を発見しました。
「楼」宿舎の調査(笑)御報告お持ちしてます。揚屋には角屋なんていう文化財もありましたね。そしてこちらの庭も重森三玲や小堀遠州から声がかかりそうな腕前です。八郷には素敵な景色が沢山あるのですね。ここは茨城県ですかね。
返信削除はっとさん
返信削除はい、茨城県です。八郷は国道も鉄道も通っていない、三方を山並みに囲まれた盆地です。
でもこの庭みたいに素敵な庭がそうあるというわけではありません。豪農は、後ろを山に見立てて高くし、池を配した庭を作っています。滝も作ったり、山からせせらぎを引き込んだり。
歴史の重みは感じるのですが、重すぎてなかなか素敵な庭はありません。
10年前は茅葺屋根の家もまだまだ残っていましたが、少しずつ失われています。