2010年11月26日金曜日
手箕
手箕は、収穫したり、精白したりした穀物や豆類を、ゴミと選別するための道具です。
世界には、大きく分けて、二つの形と、二つの使い方があります。
一つは、ちりとりのような形をしていて、一辺が平らになっています。もう一つは、平たい円形をしていて、縁は、全体にちょっと高くなっています。
使い方では、できるだけ手箕を高く掲げて、選別したいものを落として、風でゴミを飛ばす方法と、
空中に放り上げて、ゴミをはじき出していく方法があります。
一枚目の写真はマレーシアのサラワク州のウマバワン村での写真ですが、日本では、これと同形の手箕で、同じ方法で選別します。
二枚目は、フィリピンの北ルソンのウボット村での写真です。丸い手箕を使い、打ち上げて、搗いたお米の籾や糠を選別しています。タイ、ラオス、カンボジアなどでも、同じ形のものを、同じ方法で使っています。
これはミレーの絵ですが、一辺が平らな箕を使いながら、打ち上げる方法をとっています。
私の祖母も、ちりとり形の手箕を高く掲げて、軽く揺すって落としながら、ゴミを風で飛ばしていました。でも、私には、全然うまくできません。
というわけで、足踏み脱穀機で脱穀したお米からゴミを取り除くのに、カンボジアやフィリピンの丸い手箕を使っています。
カンボジアの手箕は、卵型をしていて、真ん中に、竹の節の突起が、波型になるように編んであります。
「この突起がたいせつなんだ」と、彼らは言いますが、いまだにどう大切なのか実感できないでいるのですから、使いこなすには、ほど遠いのでしょう。
カンボジアではとても一般的な手箕ですが、村の籠師さんに編んでいただくものと、市場で売っているものでは、まったくできが違います。
市場に出回っているものは、太いひごで、時間とお金を天秤にかけながらつくられた、顔も知らない人の手に渡る商品ですが、村でつくられたものは、知っている人々が、たいせつに使う道具だからです。
二枚目の写真と同じ、フィリピンの北ルソンの手箕です。
竹ではなく、ラタンでできています。バギオの骨董屋で買ったものですが、いつもかまどの上に、別の籠と重ねて置いてあったのでしょう。真ん中のところだけ、あまりいぶされないで残っています。
フィリピンの村にも、カンボジアの村同様、籠師さんがいました。農民ですが、頼まれると、籠もつくるのです。
これも、なかなか使い勝手のいい手箕です。
こちらは、近所の骨董市で見つけた、日本の手箕です。木の皮と鈴竹でつくってあるのでしょうか?
裏を見ると、昭和30年に購入、1000円だったと記載してあります。
戦後10年に、1000円は大金だったのではないでしょうか?正確ではないかもしれませんが、ラーメンを当時20円として、今の物価は約30倍です。そして、この手箕を今のお金に換算すると、3万円ということになります。
同じようなつくりの、新しい手箕が、9000円ほどで売られているのを見たことがあります。中国製の安い籠に混じって置かれていると、それでも「高い!」と感じましたが、当時の高さは、いかばかりだったでしょう。
カンボジアの最北端、ラッタナキリの市場で見つけた手箕です。
縁がいきなり立ち上がらず、徐々に高くなっている、つまり全体に厚みがあるのですが、手箕でしょう。
あまりにも美しくできているので、使うこともせず、ただ飾ってあります。
バングラデシュの手箕です。
以前、泊めていただいたNGOで、上から落とす方法で使っていた、薄い手箕です。ただ、自然の風を利用せず、扇風機を持ち出して使っていたところが今風でした。
この手箕を見て、例によって、「どこへ行けば手に入りますか」と聞いたのですが、「新しいストックがあるから」と、いただいてしまったものです。
バングラデシュのこのあたりの農家では、細いラタンを栽培している畑をたくさん見かけましたが、これは、縁を針金で留めています。
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