私の、今年のお年玉はこの箱でした。
杉の木でできている六角形の木箱は、蓋を五枚もはいであって、反らないようにできています。浮きだした木目がそろっているので、木の色が違っていないと、一枚板かと思えるほどです。木の色はわざと濃淡をつけてあるのでしょう。
端に見えているところは3ミリもありませんが、中心で高くなるよう、むくりがついています。
箱の側板は、厚さ1.5ミリの板を曲げて六角形にしてあります。一辺で両端を薄く削って重ねた木を、貼り合わせてありますが、見事に正六角形で、蓋はどんな組み合わせでもぴったり閉まります。
底もやはり、側板ほどの薄い板でできています。
六角形の一辺は4センチほどの大きさで、箱に二ヶ所、蓋に一ヶ所、胡粉で菊の模様が浮かせてあります。
箱の中には嵯峨人形(たぶん)が入っています。
家の近くの栗の家骨董市の初市の日、がんこさんは、今日あたり東京で開かれている骨董ジャンボリーに出す品物を並べて、見せびらかしていました。
「いいでしょう。見せるだけ」
古いお雛さま、開けた口の中に歯が見える這子、香合犬筥犬などなど、楽しい品揃えでした。
もしかしたら、これも見せびらかすだけのつもりだったのかもしれません。
がんこさんは明治から大正にかけてものではないかと言っていましたがどうでしょう?
古ければいいわけではありませんが、丁寧につくられていることに、うっとりしてしまいます。
人形たちはおもちゃづくしです。
娘人形は昔のおもちゃの定番です。
これは、謎の人物です。
最初は雅楽でも舞っているのかと思いましたが、赤毛なところを見ると、西洋人のつもりなのかもしれません。眉も赤いし。あちゃさん(あちらさん)、オランダさんなど、西洋人の土人形もいろいろあります。
これが西洋人だとして、紙でつくってわざわざ手に持たせているものは、いったいなんでしょう?
ピーナッツほどの大きさの鶴の背中には、おめでたい松竹梅が描いてあります。
ふくら雀の背中に描いてあるのは、椿でしょうか。
この犬は、不思議な招き猫にちょっと感じが似ています。
優しい顔のだるまさん。
でんでん太鼓は、盛り上がった模様が素敵です。
がんこさんは、箱と中身は別ものではないかと言っていましたが、この胡粉を盛り上げて模様にしているところが、箱の模様と通じるものがあります。
一つだけ台座つきの鳩(ふくら雀?)は、艶消しの彩色であるところも、他の人形と違います。もしかしたら、これだけ嵯峨人形ではないのかもしれません。
でもかわいいことには、変わりないので、よしとします。
ああぁ。
古いものたちと合わせると、両脇の香合犬筥犬の顔が品のないものに見えます。なんて、香合犬をつくった人に失礼でしたね。
胡粉盛りの菊花は、どうやって作るのですか?作ってみたいです!
返信削除私も、絵画にそれを使った作品はいくつか製作しましたが、この菊のように盛るには粘度を持たせるために、何か別の固定剤のようなものを混ぜるのでしょうかね。また、木に貼り付けるには、はがれないように定着させる糊剤を使うのでしょうか?春さん、技法を教えてください。
hattoさん
返信削除あてずっぽうです(笑)。きっと胡粉だろうと。
でも、土人形の下塗りを胡粉でするとき、膠を混ぜるようですから、たぶん胡粉に膠を混ぜたものでしょう。
ただ、膠が弱いとだめですが、強すぎても剥離してきます。側板を張り合わせているのも膠だと思いますから、膠を日常的に使っていた人の知恵だと思います。やってみるとしたら試行錯誤しかないですね。なんて、他人ごとだと思って言っていますが(笑)。膠は使うときの温度も大切だし、奥が深いと思います。
ははは、でも胡粉にみえるし私もそうだと思います。春さんの言われる通り、膠でしょうね時代的には。でも、、、無精者の私にはちょっと面倒くさいですねえ。代用に木工ボンドとかリキテックスのメディウムなんかでやってみても似た様に作れるかも?!
返信削除hattoさん
返信削除今風につくるなら、いろいろな粘土があるのではないですか?くっつけるところだけ工夫したら、乾くとそのままでいい磁器粘土でなんとかなりそうですね。
私も震災で壊れた猫の修理を磁器粘土でしましたが、なにもしないでよくくっつきました。
春さん、談交社から出版されている「茶の湯の曲げ物」橋村萬象をみていたら、ありました。
返信削除同じような箱が。やはり春さんの教えてくれた通り胡粉に膠を混ぜてつくるのだそうです(菊の部分)。置上げ、、という技法だそうです。
hattoさん
返信削除ありがとうございます。この小さな箱は、橋村萬象かその流れをくむ人がつくったものでしょうか。橋村萬象は継いでいく名前のようですね。
人形に惹かれて手に入れたのですが、箱もよくできています。hattoさんのおかげで、いろいろ知ることができましたし。