『どぞう』(SABU出版、2005年)は、kuskusさんやみやもとかずみさんのお仲間の、むらおかずこさんの描いた本です。
左官屋のむらおさんが、師匠の名工加藤信吾さんが土蔵を建てたときの様子を描いているので、土蔵のつくり方が、とってもよくわかります。
壁をつくります。
柱には刻みが入れてあって、それに竹を乗せて、縄で縦横に組んでいきます。小舞いです。
小舞いが出来上がったら、あらかじめ藁を切って混ぜておいた土で、たくさんのだんごをつくります。
絵の中の女性で、赤い前掛けの人、男の子たちのお母さんがむらおさんのようです。
その土だんごを、竹小舞いにぱしぱしと打ちつけ、手で塗りつけていきます。
家は棟木をあげたら上棟、たてまえですが、土蔵は土をつけたらたてまえだそうです。
荒壁が乾いたら中塗りです。中塗りの土には細かく切った藁と川砂を混ぜて、こてで塗ります。
土を塗りながら、壁を丈夫にするために、ぐるぐると縄を縦横に巻いて、塗り込んでいきます。縄を止めるには、竹釘を使っています
扉も土でつくります。
土蔵の扉って、すごいですね。密封性を高めるために、何段にもなっています。
そして、まっすぐなこと!
仕上げはしっくいです。
つのまたを煮て、スサ(伝統的には麻くず)と石灰を加えてかき混ぜたのがしっくいです。
もちもちしたしっくいを、いかに平らに塗るかが左官屋さんの腕の見せ所だそうですが、難しそうでため息が出そうです。
左官は力も技術もいる仕事ですが、本を見ただけでその仕事量の多さに圧倒されてしまいます。
そうなんですよね、本当に作業工程がいくつもあって色んな分野の職人さんが一つの蔵を造るんですよね。年末に、こうした左官や壁塗りの実演を見に行く企画があったので参加しましたが、10年20年とかけて体で覚える仕事で奥が深いです。また、どれも自然からなる素材を使い作られていく工程がなによ一番興味深いところでした。竹を組み編んでいくのは蔓でした。この本は絵も素敵ですし、非常にわかりやすいいい本ですね!
返信削除hattoさん
返信削除「身体で覚えて」しかも一人ではできない「共同作業」を継承する難しさを感じますね。
何人かのカリスマ左官さんだけでは足りなくて、すそ野を広げるとすると、どういう社会を構築するかというところまで問題が広がるような(笑)。
我が家も、小さな壁がいっぱいあり、左官屋さんをお願いしました。中学を出るとすぐ親の手伝いをした腕のいい左官屋さんで、下に何も敷かなくてもこぼさず、マスキングテープを張ったりもせず、黙ってちゃっちゃとやってくれ、助かりました。でも、広い壁の前に、あとで棚をつくろうとして、だいたい真ん中あたりが高くなっているのがわかりました。柱に際は柱がガイドになるけれど、真ん中はなにもありませんものね。
難しいものだと、改めて思いました。もちろん壁が少なかったら定規でも何でも当てられたでしょうけれど、いっぱいあって、いちいちそんなことやっていられなかったと思います。
本はいい本です。確か、すごく買いにくかったのが欠点でした(Tel:0977-23-7141)。