2013年3月6日水曜日
猿のおもちゃ
インドには、ハヌマンという、猿の王である神様がいます。
ハヌマンは、古典劇や古典舞踊ラーマヤーナには必ず登場するキャラクターで、タイ、カンボジア、インドネシアなどでも愛されています。
乱暴者のハヌマンが登場して暴れまわると、舞台は必ず活気づきます。
タイの、古典劇を演じるときの、ハヌマンのお面です。
こんな立派なものばかりではなく、市場では張り子でできた素朴なお面も売っています。下町の臨時につくった舞台で、庶民のお芝居であるリケーなどを演じるときは、そんなお面をかぶったハヌマンをはじめ、たくさんの猿たちが登場して、際限なくいたずらをしまくって喝采を浴びます。
猿は中国の京劇にも出てくるようで、土人形にもなっています。孫悟空もそうですが、中国でも猿は愛されてきたようです。
では世界的に見て、猿のおもちゃが諸所にあるかといえば、とっても少ないと思います。
世界中に、伝統的にわりとよくある、馬、鹿、熊、犬、猫、羊、豚などのおもちゃと比べるまでもなく、猿のおもちゃはほとんど見かけることがありません。
ところが、日本は猿のおもちゃの一大宝庫です。
全国的に見られるので、猿がそれだけ生活に身近な存在だったとも言えますが、言葉遊びの部分も、大きかったのではないかと思われます。
「見ざる、言わざる、聞かざる」が、その言葉遊びの典型です。
何が起こっていても、知らんぷりして、首を突っ込まなければ円滑な社会生活を送れるという、いかにも日本的な処世術を、「ざる(しない)=猿」にひっかけています。
「はじきさる」 も、「くくりざる」同様、厄を弾き去るという意味の言葉遊びです。
弾き猿は、動くおもちゃの少なかった江戸時代に、作り方も簡単で好まれたのか、関東、九州、四国などの各地でつくられていました。
これは、確か、熊本県日奈久のものだったと思います。猿の下の竹を下方に押して、たわませてから手を離すと、猿が弾き飛ばされます。
東京の柴又帝釈天でも、弾き猿が今でも売られているはずです。
猿の三番叟は、滋賀県小幡人形。
お正月の猿回しからの発想でしょうか。
福岡県赤坂の義太夫猿。
熊本県の「木の葉猿」は、奈良時代にさかのぼる古い伝説を持つ猿で、子孫繁栄などの縁起ものです。
大阪府堺の組み猿は、とっても魅力的な猿です。
三匹組は猿の鳴き声にちなんで、「喜々猿」と呼ばれているもので、木の葉猿同様、手びねりです。
シンプルなのに、猿にしか見えない、かわいい顔をしています。
喜々猿は三匹ですが、七匹の組み猿もあり、千匹猿と呼ばれている、巨大な猿のタワーもあります。どこかで千匹猿を見たことがあって、長い間憧れていましたが、今もつくられているのでしょうか?
干支人形制作の盛んな日本、言いかえれば干支人形くらいしか活気を呈していない日本の郷土玩具ですが、猿は干支にも含まれているので、つくられるのが絶えることもないと思います。
世界的には、猿をモチーフにしたおもちゃが少ないんですね。日本には沢山あるので思いもよらないことでした。昔、祖母が生きていたころ
返信削除午前中に「酉」午後に「申」という言葉を使ってはならないと言われました。
ゲン担ぎで、悪いことを「とる(酉)」、良いことが「さる(申)」だという理由でした。
でも、逆で考えれば使ってよしって事ですよね。笑
hattoさん
返信削除新しいもので、有名なものではカイ・ボイスンの猿(http://www.scope.ne.jp/kay_bojesen/monkey/)がありますが、少ないですね。
酉、申は知りませんでした。逆を考えたりすると、こんがらがって、覚えられそうにないです(笑)。
そういえば、私の祖母はちゃんちゃんこのことを、「さるこ」と言っていました。後ろから見て、背中を丸めていたりすると、猿に見えたのでしょうか。
宮崎県延岡市ににも「のぼり猿」という玩具があります。
返信削除のぼり旗をふっと吹くと、お猿が竹ひごを登ります。
宮崎弁で「さるく」は、歩くですが、猿と関係あるのかな?
mmerianさん
返信削除あっ、のぼり猿のことを書いていたのに、「言葉遊びになってない」と書いたところから消しちゃってそのままになってしまいました。
のぼり猿、かわいいですね。持っていたんだけれど、張り子だったのでボロボロになって、ずいぶん前に壊れてしまいました。ここに来るまでは、人形の棚に光があたりすぎても、どうしようもありませんでした。先日、骨董屋のまことさんが来て、「ここのものたちは幸せだなぁ。たいていは段ボール箱に入れられっぱなしだから」と言っていましたが、実際のところどっちが幸せかわかりません。紙のものはずいぶんなくなってしまいましたから。
「さるく=あるく」おもしろいですね。祖母は、雨戸の錠前を「小ざる」と言っていました。