招き猫には、おおざっぱに分けると、大衆食堂に飾ってあるような一般縁起ものの招き猫、郷土玩具の招き猫、瀬戸、九谷など焼き物産地の招き猫、個人作家のつくる招き猫などがあります。
陶器や磁器だけでなく、ガラスの猫、縫いぐるみの猫、プラスティックの猫など、材質もさまざまで、できたてのほやほやの猫もあれば、百年も経っている古い猫もあります。
私が持っている招き猫たちは、ありきたりの猫たちで、作家さんがつくったものなら、作家さんの「勝負猫」ではなくて「枯れ木も山の賑わい猫」たち、珍しい猫もいなければ、古い猫、手に入りにくい猫なども持っていません。
ところが昨年、骨董まこと屋さんがさがしてきてくれた、ちょっと珍しい猫が我が家に来ました。どの猫もかわいさは同じですが、希少さとしては私の持っている猫たちの中で、随一だと思われます。
三河系招き猫と呼ばれる古玩で、高さが57センチあります。
歌舞伎や文楽などの芸能が盛んだった愛知県三河地方は、三州瓦の産地で、良質の粘土に恵まれていました。そのため、江戸末期から、歌舞伎や武者を題材にした土人形が盛んにつくられるようになり、土人形は親しみを込めて「おぼこ」と呼ばれていました。
雛の節句には、三河一帯では雛人形だけでなく、「おぼこ」をはじめ、家じゅうの人形を総動員して飾る習慣がありました。
そのため、節句の季節になると、農閑期につくりためた「おぼこ」を担いで、行商の人形売りが町から村へと売り歩き、各家々では、毎年、一つ、また一つと「おぼこ」を買い足したそうです。
三河土人形の主流であった歌舞伎人形や武者人形に比べると、招き猫は傍流だったのですが、それでも縁起ものとして、福助とともにつくられたそうです。
三河系招き猫の大きさは群を抜いています。一番大きいものは高さがなんと、90センチもありました。
何故大きくなったのか?
一説には、個人の家に置くのではなく、宿屋の開業祝いなどに贈ったので、「もっと大きく、さらに大きく」と、つくり手も買い手もエスカレートしたのではないかとされています。土も、大きな人形をつくるのに耐える、よい土だったのでしょう。
三河系の招き猫は、世界最大の猫の土人形です。
招き猫は、一匹ではなくて、ちびとペアで来ました。
ちびと言っても、高さが33センチあります。
我が家にもとからいる、三河系もどきの招き猫たちです。
素焼きに胡粉彩色の、郷土玩具の招き猫もいましたが、残念ながら先の地震で失われてしまいました。
こちらは、日本招猫倶楽部の昨年の復刻猫です。
三河系招き猫は大きな耳、おかっぱ頭にも見える耳の前の黒い毛などが特徴で、一目見たら忘れられない猫たちです。
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