2013年12月11日水曜日

プレプレ

さまざまな民族に、喜びを表すとき、悲しみを表すときに被って、踊ったり練り歩いたりした、お面があります。
お面だけでなく、衣装もつけて異人になるお祭りは、獅子舞、なまはげ、サンタクロースなどなど、世界中各地に見られます。
倉敷の、私が育った農村部では、秋祭に鬼が出ました。赤や緑の衣装を身につけて、三尺帯でたすき掛けにし、髪降りみだした鬼のお面を被った青年たちが、数匹連れだって、あるいは一匹だけで歩いている姿は、子どもにはそれはそれは恐ろしいものでした。
鬼は、子どもを見つけたら容赦なく追ってきます。家の中に隠れている子どももいますが、おおかたは怖いもの見たさで、外へ出て、遠くに鬼の姿はないかと目を凝らします。そして、遠くでまだ安全とわかっていたら、囃し立て、近づいてくると逃げました。ときには、距離の測り方を間違えて、走って逃げても捕まえられて、肝をつぶすことになります。

あるとき、鬼が陰から、逃げる暇もなく出てきました。足がすくんでいたら、その鬼が、
「青い鬼を見なかった?」
と聞きます。そして、被っていたお面を脱ぐと、なんと同級生でした。小学生も高学年になっていたのでしょうか。
遅まきながら、鬼も息苦しいお面を被って、みんなを楽しませ、自分も楽しんでいる生身の人間だと実感した瞬間でした。


さて、お面の中でも、アフリカのお面は特に多彩です。
たいていは、木を彫ってつくったお面で、どのお面にも物語があり、捨てがたい魅力をたたえていますが、「愛嬌がある」という点では、コートジボワールのバウレ人のお面、プレプレに勝るものはないような気がします。
もちろんお面ですから架空の生き物ですが、丸い顔に角がついています。
 

目の下には穴が穿ってあって、被った時に見えるようになっています。
 

あまり厚みのない側面の穴に紐を通してかぶります。

2011年3月の地震の時、我が家は激しく音を立てて揺れ、鏡が割れたり、ガラスビンが割れたのが床に散らばったりしました。
数日は、とりあえず人と犬猫が安全に歩けるよう、床ばかり見て、めちゃくちゃに壊れたものを取り除くのに夢中でした。


二、三日後、ふと壁を見ると、プレプレが裏を向いていました。ぞっとしました。
地震の時は外にいて、東西にも南北にも揺れていたのを知っていましたが、ピアノ線で吊ってある、重くて平べったいお面が、どう揺れれば裏返るのか、考えられないことでした。
おそらく家は、渦を描くように揺れたものでしょう。


その後、何度も余震がありましたが、もちろん震度5弱くらいでは、お面が裏返るどころか、揺れもしませんでした。





4 件のコメント:

  1. 面白いお面ですね(笑)
    写真で見てるだけなので憶測の限りですが、結構な大きさと重量のありそうな感じです。装着して踊ったりしたら、首が痛くならないのかなあ?
    前頁の椅子もそうですが、アフリカの木製品は黒くかっちりとした美しいものが多いですね。どんな手が作り、どう使われてきたのか、興味がつきません。うっとりしてしまいます。

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  2. topcatさん
    いつだったかテレビで見ましたが、お父さんがつくっているそばで、小さい子もナイフを持って何かつくっていました。大人になるまでには、それはそれは年季が入るのでしょうね。ナイフはあり合わせのもので、ガラスのかけらで、きれいに磨いたりして。アフリカには、木工にすぐれた民族グループの人たちがたくさんいます。

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  3. 確かに愛嬌のあるお顔ですが、表情は喜びにも悲しみにも見えるように思いました。
    どっしりした作りなのに裏返ってしまったなんて、あの地震の揺れの恐怖を物語っていますね。

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  4. hana-ikadaさん
    お面の中には、表情が重すぎて、日常的には見ていられないお面もあります。
    そういう意味では、プレプレは重くはないのですが、暗くもないのですが、確かに悲しみもたたえているように見えますね。
    こんなお面を被った人たちがたくさんで踊っていたら、どんな感じでしょう?きっと、素敵な太鼓の音とセットでしょうね。

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