2013年12月8日日曜日

ひなまつり


ちょっと、季節先取りのお話です。
1991年2月、働いていた元職場に一通のダイレクトメールが届きました。
「ほら、あなたの好きそうなものよ」
と手紙を振り分けていた元同僚が手わたしてくれたのは、展示会「<いちえさん>のひなまつり」の案内でした。
ちなみに元職場では、その日郵便受けに郵便物を見つけた人が、受け取った日の印を押して、みんなに振り分ける習慣でした。そして、どうしてこの案内が届いたのかは、謎でした。


さっそく、「ひなまつり」を見に行きました。小さい会場に溢れんばかりにならんでいたお雛さまのかわいらしかったこと、どれもみごとな出来栄えでした。
マッチ雛、蛤雛、つぶ貝雛、


茶筅雛、石鹸の空き箱雛、糸巻き雛、とっくり雛、お手玉雛、


生花を使った花雛もありました。


松ぼっくり雛、銀杏雛、


サラダ雛、
 

中でも圧巻は、豆雛でした。


大豆一粒を頭にして、三粒を重ねて身体にしているというお雛さまは、


小さい小さいもので、集中力がないと、とうていつくれないものでした。


当時、いちえさんは、保育園の保母をなさっていました。
夫の帰りを待ちながら豆雛をつくる日々。ずいぶん経ってから、お連れ合いから、
「遅く帰ると、きみが起きていて人形をつくっていた。あの姿は鬼気迫るものがあったよ」
と言われたそうでした。


会場で、『ひなまつり』(渡辺一枝著、情報センター 、1987年)を手にして読むまで、いちえさんが椎名誠さんのお連れ合いであり、『岳物語』の岳くんのお母上であることを知りませんでした。


いちえさんは終戦の年の満州生まれです。
初節句のときの写真には、お宮参りの祝い着の上に、立ち雛さま、縫いぐるみの犬、這う子人形、セルロイドの起き上がりこぼしやがらがらが飾ってあり、ご両親のお気持ちが溢れているようです。


『ひなまつり』から十年後には、『またひなまつり』 (渡辺一枝、集英社、1997年)が出版されました。
このときいちえさんは、旅する作家として世に知られていました。
最初の本と重複するお雛さまも多いのですが、この本の写真は椎名誠さんではなく、カメラマンの方が写されたものです。


ふうせんかずら雛など、新しいお雛さまも加わっていましたが、


長年かけて完成された、「家宝」と呼ばれている、豆雛の素晴らしさは、お道具などが揃ってきていて、見事でした。



2 件のコメント:

  1. 可愛いものばかり。小さなものを美しく仕上げるのは難しいけれど、きっと間違いなく楽しかったでしょうね。
    以前お話しした大豆のお雛様は、もっと簡素で手作り色の濃いものでした。先日、ちゃんと直して飾ってあげようと出してきてみたら、悲しいかな虫の餌食になってしまっていて…(涙)惜しみつつ、お焚き上げの箱に入れてあります。お見せしたかったなあ。

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  2. topcatさん
    topcatさんの大豆のお雛さまの話を聞いて、一枝さんのお雛さまを思い出しました。何十年もかかってつくり上げる意志がすごいですね。
    そうか、虫の餌食になってしまったんだ。残念。木喰い虫とかの餌食にならないようにするには、一度冷凍にしておくのが一番です。しつこく生き延びる木喰い虫を、冬外に出しておいて退治したことがあります。もっとも、熱帯の木喰い虫だったかもしれませんが(笑)。
    また大豆のお雛さまつくってください。一枝さんのお雛さま、身体は二つくっつけた上に一つ乗せてくっつけているようです。さらに頭ですね。それを聞いただけで、「めんどくさそう」と思ってしまうようでは、何もつくれませんね(笑)。

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