2014年4月21日月曜日

煤猫

骨董屋がんこさんがおやじさんと呼ぶ人は、雑多な品を持っているがらくた屋さんです。骨董屋さんには、その品選びの基準(審美眼)がゆるがない人、カテゴリーを決めてその分野のものを持っている人、何でも扱う人などいろいろいますが、 おやじさんは、骨董ではなく中古品を、その時に応じて、いろいろ持っている人です。


そのおやじさんが招き猫を持っていました。
気品のある、よいお顔をしているのですが、全体に煤けていて、しかもところどころ煤が禿げています。


猫を見たあと、おやじさんはと見ると、おなじみさんと話しています。おしゃべりなおやじさんではありませんから、おなじみさんがおしゃべりなのでしょう。
安かったら、連れて帰ろうか。猫を持っておやじさんの方に行きました。
「この猫はいくら?」
「.....」
おやじさんは猫を手にとって、まじまじと眺めます。
「怪我をしているから.....、可愛がってくれるなら、.....」
「.....」
「可愛がってくれるなら、持ってっていいよ」
がんこさんと違っておやじさんは何も語らない人ですが、猫を見ている目には、何か思い入れがあったようでした。


もちろん、可愛がるに決まっています。
というわけで、煤けた猫はやってきました。
一緒に行ったMさんが、
「何買ったの?」
と聞くので、見せました。
「招き猫もらったの」
「へぇ、可愛いねぇ。どこの招き猫?」
「京都かなぁ」


京都でつくられる猫に姿形はよく似てはいますが、ちょっと違うところもあります。


京都の猫は、挙げた左手と首の間に隙間があって、赤い前垂(これは自分でつくった前垂です)をその穴に通して、後ろで結んでいます。この猫もそうですが、以前地震で割れてしまった猫もそうでした。
しかし、煤けたねこには隙間がありません。最初から首輪が描いてあります。


京都の猫ではないかもしれませんが、まあどっちでもいいのです。
他の猫に詰めてもらって、居場所をつくってやりました。




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