八郷にお住まいの矢部藤子さんの人形は、写真でしか見たことしかなくて、いつか実物を見たいと思っていました。でも、いつも人形を発表されるのは遠くばかり、これまで見る機会がありませんでした。
ところが今回、群馬県桐生で人形展をなさると知り、行ってきました。
数年前に、写真で初めて見た矢部さんの人形は、太った中年の女性が派手な着物を着て杓文字をかざし、モンペを履いて笑っている、度肝を抜かれるような一体でした。正直、ぞっとしました。
でも、ほかの人形たちは穏やかな、そこいらにいるような、おじいちゃん、おばあちゃんたち、優しい人形ばかりでした。
やっと、実物を目にしました。
なんと言ったらいいのだろう。人形なのに、小さいのにすごい存在感で迫ってきます。
人形本体や表情はもちろんのこと、細かい針目で縫ってある服、麦わら帽子、地下足袋、シャツのボタン、ズボンのベルト、手ぬぐいなどなど、どれもつくるのはたいへんそうですが、難しければ難しいほど、矢部さん楽しんでつくっていらっしゃるのだろうと思います。
「こんなおじちゃん、おばちゃん、いるいる!」
この人形は、このあたりでは、どこででも見かけるようなご夫婦です。はにかんだおじちゃんに働きもののおばちゃん。性格まで伝わってきます。
このご夫婦には、売約済みの札がついていました。
買われた方は、きっと家族が増えた感じではないかと思います。
毎日、「おはよう」、「おやすみ」などと声を掛けるうちに、さらに一体感が育ち、買った人のこれからの人生は、まったく寂しくないものになるに違いありません。
それにしても人形は不思議です。
この、
「よぉっ」
と言っている、男性は、
いやはや、ご近所のたもつさんに、瓜二つです。
傘をさした男性は、コートのボタンをはめているので、どんなシャツ姿か、スーツ姿か見ることはできませんでした。
ところが、入口の脇に立っていた別の男性は、帽子をかぶって素敵な皮鞄をぶら下げ、トレンチコートを着ていましたが、コートのボタンをはめてなくて、中の服が見えました。
コートの下にはなんと、細かい柄の泥大島のスーツを着込んでいました。
傘も、靴も、鞄も、帽子も、なにもかも全部、全部手づくりですから、驚いてしまいます。
さて、時節柄、サンタクロースもいました。
全身は写しませんでしたが、赤い上着を着込み、暖かい帽子をかぶって、すっくと立っています。
そして、帽子を取り、赤い上着を脱いで腰掛けて、素敵なセーター姿でプレゼントを袋詰めしているサンタさんは、とても優しいお顔でした。
みさこさん、矢部です。遠いのにわざわざご来場いただきありがとうございます。不在にして失礼いたしました。今日ギャラリーへ行って芳名帳にお名前があってびっくりしました。感激です。また楽しんでご覧いただけるように頑張って作っていきます。これからもどうぞよろしくお願いします。ブログたまに拝見してます。楽しくて読みふけってしまいます。
返信削除矢部藤子さん
返信削除コメントありがとうございました。
人形たちの世界、楽しませていただきました。お顔もさることながら、鞄や靴や地下足袋、どうやったらできるのか、もう謎でした。
そういうものをいろいろつくるのに比べたら、バランスを取ってお人形を立たせるなんて朝飯前なのでしょうね。
またまた、楽しませてください。楽しみにしています。