ちょっと古い話になりますが、お隣のひろいちさんが打ちたてのおそばを持って来てくれたときの話です。
この村では、ひろいちさんだけでなく、たくさんの人がそば打ちに、はまっています。
つとむさんもそば打ちにはまった一人です。一年ほど前にそれまでの勤めを辞めて、野菜直売所の二階にあるおそば屋さんで、そば打ちをするようになりました。アマチュアからプロになって、「夢」を実現したというわけです。
そのおそば屋さんは、つとむさんのおかげですっかりおいしくなったと評判で、いつもお客さんで賑わうようになりました。
ひろいちさんもときおり、公民館で人を集めて教えたりしています。庭には、そば打ち小屋まで建てているという熱の入れようですから、おそばの研究に余念がありません。
「このあたりに、ひろいちさんお勧めの蕎麦屋さんがあるかなぁ」
と、そのときおそばを持って来てくれたひろいちさんに夫が聞きました。
ちょっと考えたひろいちさん、
「石岡の猪口才(ちょこざい)がおいしいよ。若夫婦だけでやっている店だけどね」
八郷だけでなく、このあたり一帯はそばどころです。
手打ちは当たり前、その日の分だけ石臼で挽いた粉で打ち、売り切ったらおしまいになる店も多いし、十割そばの店も珍しくないという贅沢さです。
そんなおいしいと評判のお店でも、
「今日は、もうちょっとだったね」
というときがあります。
おそばは打ってすぐがおいしく、しかも粉、水の質、水加減、打ち方、茹で方などが揃ったときにおいしい、微妙なものなのです。
ひろいちさんが勧めるお店はどんな店だろうと、しばらくして、石岡の町に用事のあったときに、猪口才に行ってみました。
町の借店舗ですから、外見は味もなにもありません。
ところが中は、テーブル席とカウンター席をほどよく配置して、居心地のよい空間をつくりだしていました。
置いてある本といったら、おそばの本ばかりです。
おそばを待っている間に、このお店も載っている、『茨城のそば屋さん』という本をめくってみました。本に掲載されているお店の店主は、おそばが好きで好きで脱サラされた方が圧倒的に多く、猪口才のご店主もそうでした。
特約した農家の育てた蕎麦を、その日に打つ分だけ石臼で挽き、お天気や粉の水分量を考えて打ち、供しているということでした。
いただいたおそばは、ひろいちさんが推薦するに十分こたえて、とっても美味でした。
打ちたての蕎麦は緑色をしています。
もっとも、ひろいちさんによると、おそばにてんぷらなど一緒に頼むものではない、大盛りもだめ、もうちょっと食べたいなと思うくらいの量が一番おいしいのだそうです。
大晦日には、例年通り、ひろいちさんが打ったばかりの年越しそばを届けてくれました。
その日は、近所でお百姓をしているkm夫妻と忘年会、やはりおそば好きのkm夫妻と、ひろいちさんのおそばで締めました。
そばときいちゃー江戸っ子の血が騒ぎます。
返信削除出しの味は、、、
そば湯に二三本浮いていると得した気分です。
昭ちゃん
返信削除お帰りなさい。金曜から復帰と聞いていたのに早かった!健康診断、何でもなくてよかったですね♪
でも、江戸のそばというけれど、私が小さい頃の、東京の昔ながらのそば屋さんの蕎麦って、不味かったです。
そんな街角のそば屋とお寿司屋さんは、今はすっかり消えてしまいました。長寿庵、更科、増田屋など、いろいろありましたね。
そば湯は、別にしてあるのか、とても濃い店と、白湯のような店があります(笑)。濃いと、やっぱり得した気分ですね。