2015年1月30日金曜日

ワタリガラス


上橋菜穂子さんの物語は、登場人物たちがすべて魅力的ですが、動物たちも、実在・架空を含めて、生き生きと描かれていています。
『鹿の王』(角川書店、2014年)の主要な登場動物と言えば飛鹿ですが、ほかにも火馬、狼、山犬などいろいろ、ワタリガラスも短いながら重要な役割を担って登場しています。
谺主(こだまぬし、民間医療師兼呪術師)のスオッル老人が、ワタリガラスに魂を乗せて飛び、遠く離れた場所の出来事を見聞きするのです。

ワタリガラスは、確か『オオカミ族の少年』(ミセル・ベイヴァー著、評論社、2005年)シリーズや、『ゲド戦記』(ル=グウィン著、岩波書店、1976年)シリーズにも、同じような役割を担って登場していたと思います。

ワタリガラス(Corvus corax、レイヴン)は、実在の鳥で、ユーラシア大陸や北米大陸に広く分布していて、日本では北海道だけに飛来します。
普通のカラスより一回り大きく、大きな声で鳴くそうです。


ワタリガラスは、その昔から、北欧神話や、シベリア、アラスカ、カナダなどの先住民の神話に見られる、特別な鳥でした。
吉凶を知らせたり、世界の事象を神に報告する使者であったりします。

イギリスでは、「ロンドン塔からワタリガラスがいなくなるとイギリスは滅びる」というジンクスがあり、ロンドン塔の衛兵の中には、ワタリガラスはの世話をする、レイヴン・マスターという役職があるというのもおもしろいことです。

 
星野道夫の最後の仕事は、ワタリガラス神話を持っているアメリカ先住民たちを訪ね、それを記録することだったそうです。





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