五年ほどかかっていた、作業棟のコンクリート工事が終わりました。
その間、大地震と原発事故がおこったことで、精神的・実際的な中断がありました。また、身体の衰えから立ち居振る舞いがしゃきしゃきとはいかなくなったり、疲れやすくなって長時間は働けなくなったり、なにごとにも前より時間がかかってしまうようにもなりました。
それでも、いよいよ新しい局面を迎えました。
先日、夫は組んでつくる、鉄骨の間に収める大梁の詳細図面を描き、小貝川の向こうにあるプレカット屋さんに、プレカットを頼みに行きました。
なぜ、普通の梁を使わないで、箱に組んだ梁を使うのか?
それは、作業場なので明るくしたい、大梁の箱のてっぺんにガラスを入れて、長い天窓とするからです。
これは夫が描いた絵で、室内から東を見たところです。
左右(南北)の扉は、開け放しています。黒く塗ってあるところがガラスで、大梁の上に黒く見えているのが天窓です。
プレカットとは、木組みの家の刻みを機械でやることです。
かつて、どの大工さんも家を建てる時は、材木を手で刻みました。柱と梁などをどう接合させるか、経験と技術がものを言う、大工さんの腕の見せどころでした。
でも、最近はほとんどの大工さんが、刻みをプレカット屋さんに頼んでいます。プレカット屋さんは、平面図と立面図を受け取ると、それをコンピュータ入力して、プレカット機械が読み取れる図面につくり直します。
そして、必要な材木を用意すると、機械がコンピュータの指示を受けて、一本一本正確に刻んでいくのです。
大工さんが自分で刻むとなると、何日も、あるいは何週間も、そして大きな家だと何ヶ月もかかりました。ところがプレカットだと、数時間から半日もあれば刻んでしまい、最初にしっかり数字を拾っておくと、間違いもないのです。
友人に設計家と大工のご夫婦がいます。
だんなさんはお寺も請け負うような、本格的な木組みの大工さんで、これまでご夫婦で何棟もの住宅を、設計・施工してきました。それが、つい先日完成した家は、刻みを初めてプレカット屋さんに頼んだとのこと、
「えっ、あの人も」
と、びっくりしてしまいました。
さて、母屋の刻みもお願いした県西プレカットの玄関には、お寺の屋根のような、反った屋根の模型が置いてありす。
プレカット屋さんにも大小いろいろありますが、ここは、規模と技術で、日本で一二を競うプレカット屋さんで、直角ではない仕口も刻むことができ、金物を使わないでも収まる仕口を得意としています。
全国から注文があり、ちょっとした増築から神社仏閣まで、一日平均で三軒分の家の材木を刻んでいるそうです。
我が家の大梁は、長さが8メートルもあり、材木を途中でつながなくてはなりません。
そんな時は、「追掛け大栓」という方法でつなぎます。
下に支えがあるなど、あまり力がかからない、土台や梁をつなぐときなら、もっと簡単な「腰掛けあり継ぎ」や、「腰掛けかま継ぎ」でつなぎます。
木組みは、見た目より複雑に刻んであります。
我が家の母屋の、丸柱と梁が組み合わさっている木組みは、出来上がったのを見たところ、すっきりしていますが、9年前にプレカット屋さんから届けられたとき、とくに丸柱の仕口があまりにも複雑だったので、驚いたものでした。
プレカットした材木には、すべてに順番に番号を振ってありますから、大工さんも間違えません。
ただ、我が家の母屋の場合、とても複雑な組み方で、組む順番もあったので、プレカット屋さんの大工さんのばんばさんも来てくれました。
さて、今回発注した大梁は、仕組みとしては簡単です。
来週にはプレカット図面ができるので、それでよいとなると、材木屋さんで乾燥してもらった材木を運びこみ、刻んでもらったら、来月から大梁をつくりはじめることができます。
上棟をお願いする大工さんは、11月まで忙しいそうです。というわけで、日の短い時期ですが上棟は12月以降になりそうです。
お寺のような屋根の骨組み、スゴイですね。反った形を切りだすってことですか?
返信削除材木のいろんな継ぎ方、誰が考えたんでしょう?!ただただスゴイの一言です。
hiyocoさん
返信削除八郷には、家道楽(他人のことは言えないが、笑)のおじいちゃん、おばあちゃんが生き残っています。屋根を反り返したり、反対に「むくり」をつけて、京都のような屋根をつくったり、格天井もあれば、垂木を放射線状に並べた天井など、密かに競っていますが、今でも対応できる大工さんがいます。
反った木は、削り出すこともありますが、うまくつないでもいます。プレカットの場合、この模型は削り出しているかもしれませんが、大きなものでつないでいるのを見たことがあります。かつて、軒を長く出すと木の重みで先が下がって来て、見苦しくなったりしたので、前もって反りかえらせておくという方法が取られたのかもしれません。
継ぎ手、組み手はすごいですよ。プレカット屋さんでは機械がやりますが、プレカット屋で統括している元大工さんは、もちろん頭に入っているし、自分でもできます。入り込むときに、「かぷっ」と音がします。クロスする場合、T字型にあう場合、斜めに引っかける場合、いろいろあります。組み手は奈良時代のころから、変わらなかったり、あるいはもっと工夫されたりして来たのでしょうね。
男型と女型がぴったり反対の形をしていなくてはならないので、私なら頭がこんがらがり、一つつくるのに一ヶ月くらいかかるかもしれません。おまけに重くて長いものに細工するわけですから、手勝手も悪くなり、片方はなんとかできたけれど、片方は寸法を勘違いしたなどとなると、目も当てられません。
今の建設現場の多くは、ただホッチキスのようなものをパンパン打ちつけて行くだけなので、本当の木組みを習いたい大工さんの卵は苦労しているみたいです。でも、そんな修行を積んだ友人でさえ、プレカット屋さんに頼んだというのですから、時代ですね。