2015年8月22日土曜日

デンマークのテキスタイル


デンマークの半島の、ほぼ中央のハーニングにある、テキスタイル・フォーラム(織りもの・編みもの博物館)です。

デンマーク半島の西海岸沿いの地域は、氷河時代が終わるとき、氷河に表土をごっそりとはぎとられてしまいました。そのため、土地は痩せていて農業ができず、人々は牧畜に活路を見出しました。

HERNING MUSEUMの冊子より
ハーニングはその痩せた土地のほぼ中心地域にあります。
羊を飼い、その毛を刈り取って毛糸にし、織りものをつくったり編みものを編んだりして、それを国中に売りに歩いたのだそうです。そして織りもの・編みものの一大中心地になりました。

テキスタイル・フォーラムでは、織りものの歴史もわかりますが、靴下編み機のように、今でも実働しているものもありました。


これは、チロリアンテープやタグなどを織る機械で、一度に何種類ものテープを織ることができます。


チロリアンテープはこうやって織っていたのです。


織り機を見て、私が一番興味をひかれるのは、織った布を巻き取る装置と、織った糸を締めて一定の間隔に保つ筬(おさ)の材料です。他の部分は、そうたいした変わりがありません。

糸を上げ下げするための綜絖(そうこう)は、糸綜絖と針金綜絖がありますが、手織り機には、糸綜絖が一般的です。
筬は、竹のあるアジアでは竹の筬を使いますが、竹のないヨーロッパでは、いったい何でできた筬を使っていたのでしょう?


やったぁ!
テキスタイル・フォーラムの一角で見つけました、古い筬です。
私は、材料は葦ではないかと思いましたが、イエンスは、
「葦にはこんなに厚みがないんじゃないか」
と、言います。
いったい、材料は何でしょう?
テキスタイル・フォーラムのスタッフに聞きましたが、
「いまは金属の筬を使っている」
と言うばかりで、誰も古い筬の材料のことは知りませんでした。
エチオピアの筬にも、素材が似ています。

羊の毛を織るなら、この程度の粗さでも、問題はなかったことでしょう。でも、細い麻(リネン)となると、けっこう目の粗い布ができたのではないでしょうか。


空引き機(そらびきばた)もありました。
模様は、パンチカードを使う、産業革命以後のものです。

空引き機で織った紋織りは飾ってありましたが、あいにく写真を撮りませんでした。左側、壁にかけているのがちらっと見えますが、よく見えません。
たいていは二色織りで目も粗く、あまり素敵に見えませんでしたが、お湯を通して起毛すれば、風を通さない、暖かい厚手の布や毛布ができたことでしょう。


パンチカードをつくる機械の美しさには、見とれてしまいました。


この植物で、織った布を起毛させたのでしょうか。それとも、紡ぐ前に羊の毛を揃えるカーダーとしても使ったのでしょうか。


日本の、キツネノクシを彷彿とさせます。


後日、コペンハーゲンの青空博物館(民家園)の家庭菜園で、この植物を見ました。


花。


そして花の散った後です。
自然は、素敵な贈り物をするものです。


家に帰ってから、テキスタイルフォーラムに置いてあった、ハーニング博物館(行かなかった)の分厚い冊子(無料)を開いて、私は喜んでしまいました。
『赤毛のアン』で、もらわれてきたアンが女の子だったため、畑仕事がさせられず、マリラががっかりする場面があります。
西洋では(アフリカでも)、かつては「男の仕事」と「女の仕事」がきっちり分かれていて、その境界を犯すことはなかったと思っていました。

でもこの写真。男性が糸を紡いでいる!


そして、男性と女性が混じって編みものをしている!
説明がすべてデンマーク語で、デンマークにいた時は開いてみる余裕がなかったので、もしかしたら糸を紡いでいるのかもしれませんが、編みものに見えます。
寒い地域ですから、毛糸編みの靴下や下着は、とても重要なものだったことでしょう。しかも、これを全国に売り歩いて、生計を建てていたのです。

さて、イエンスは同じ場所に行きながら、私とはまったく別の視点から写真を撮っていました。
これぞ、ヨーロッパの産業革命!と思われる写真なので、以下に載せておきます。

 




アジアやアフリカが圧倒されたのも、無理はないですね。

追伸:

6年も経ってからですが、博物館で見た木靴と、草、あるいは葉製の室内履きを載せておきます。









8 件のコメント:

  1.  お帰りなさい
    バルト三国に面しドイツとは陸つづきなので
    第二次大戦には即ドイツに接収された国ですね。
     男の子だからその方に走ってしまいます。
    緯度が高いですねー

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  2. 昭ちゃん
    重要ルートですものね。
    今スウェーデンからデンマークのコペンハーゲンのある島には橋がかかっていますが、近い将来ドイツとの間にも橋がかかるそうです。ナチスに「ユダヤ人を捕まえろ」と言われたけれどデンマーク王は拒否したので、今も戦前と同じくらいユダヤ人が住んでいるそうです。
    スウェーデンと比べると本当に小国です。でも、ヨーロッパで初めて自転車道路を整備したとか、バスも地下鉄もいい具合に利用されていて、首都は爽やかでした。
    昭ちゃん、化石のこと書いているから、もう一つのブログものぞいてみてください。デンマークの海は日本の海とはまた趣が違って、素敵でしたよ。http://manekineko44.blogspot.jp/

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  3. 「クリントの教会」のコメントの返信です。
    絵馬のようなもの。なるほど! よくわかりました。

    そうです、7月31日はブルームーンでした。気に掛けてもらってありがとうございます。アート&クラフト工房を持ちたいと思い、のろのろ準備中です。私自身の思い入れが深いブルームーンという名を考えていましたが知的障害を持つ次男が言えるような簡単な音の名前にしました。いつか織り機(日本製)を買おうと思っています。平織りが主になると思います。春さんの織り機はノルウェーのものでしたよね。どのような色柄を織られていたのかなぁ。また掲載してくださいね。

    ほんとうに、視点が違いますよね(笑)
    だけに、写真が豊富で、得した気分です。

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  4. Blue moonさん
    90cm幅の織れる織り機ですか?それとも着物幅でいいのですか?もし幅広の布も織るのだったら絶対北欧のものがお勧めです。どの作業も楽、たぶんすべてが楽々です。言ってみれば、日本の鉋を使いこなすのに十年かかるのに、西洋の鉋なら一日目からうまく使える、そんな感じの違いがあると思います。
    日本では、フィンランドのトイカ社の織り機が一番普及しているのようです。織り易いみたいだし。
    私が織っていたのはタペストリーのようなものですが、まったく手元に残っていません。織り機は、室内に入れてやりたいんだけどなかなか場所がなくて。今頃カマドウマの糞だらけになっていると思います。金属の筬は錆び錆びだし(涙)。

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  5. 織り機は、堺精機産業株式会社(さをり織り)の折りたたみ式のものを考えています。メールに事情を書いてお尋ねすると、新しい整経の仕方が考案されて従来より簡単になったようなのです。その昔20歳頃に、電車から見えた織り物の色が綺麗なので途中下車して教室を訪ねたこともありますので。

    初めて名前を知ったトイカ社の織り機を見ました。その時の検索に出てきた工房のブログも覗いてみると、タイ(!)にお暮らしの時にさをり織りに出合い、帰国後はいろいろ活動されている方のブログでした。こんなことをしたいなぁと思っていることを、されている方で参考になります。どうもありがとうございます。

    タイのことで春さんにお尋ねしようと思っていたことを思い出しました! 行く度に在庫なしのタイのクロックでしたが先月にアジア食品店に行くと、ふたつありました。よく見ると、角度があり底がせまいのと、そうでないのと。素焼きと、内側になんか薄っすらと塗りがあるのと。はてさてどっちがいいんだろう、となり買わずに帰ってきました。どんなものがいいですか。

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  6. Blue moonさん
    さをり織りの織り機見ました。硬く打ち込むものをつくらないなら、折り畳める織り機はとてもいいかもしれませんね。
    私も整経機などの周辺機器は日本のものを使っていました。折り畳みできるドラム式で、使い勝手はいいものでした。枠で整経したことは、一度もありません。
    ただ、当時は日本のものはみんな木の材料がラワンかホオノキで、私はラワンもホオノキも嫌い(笑)、なかなか愛着が持てませんでした。いまはもっといろいろな木が使われているようですね。

    タイのクロックは見ないと何とも言えません(笑)。私は、底が狭くて安定感があるように底にドーナツを貼りつけたような形のを使っています。石のがいいという人もいますが、私はこれ専門です(笑)。タイでも使っていたし、カンボジアに住んだ時も、着いてまず買ったのはこれだし、友人に買って来てあげた(重い!)こともあります。中には何も塗っていません。そのうち、いろいろなものが浸み込みます。ただ、焼きが甘くて赤っぽいのや、黒っぽいのもあったような。
    最終的な判断は、好きかどうかですが、内側には何も塗っていない方がいいと思います。つくばのタイ料理屋で売っているクロックはいつも一つしか展示していませんが、どんぶりのような形で、すりこ木も形が整い過ぎていて、好きじゃありません(笑)。

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  7. 昨日、アジア食品店を覗く時間ができました。素焼きのクロックは売れて、塗りのあるクロックだけでした。記憶ではうっすらとした塗りだと思っていましたが、しっかり塗ってありました。クロックの形は春さんのと同じです。入手報告できると思っていましたが(笑) 

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  8. Blue moonさん
    残念でしたね。クロックはまた同じものが入る可能性大なので、待っていたらどうですか?
    タイにいたころ、一度見て気に入ったものはすぐ手に入れなくては、もう二度とお目にもかからないということが多々ありました。とくに手づくりのものは。
    カンボジアではもっとひどくて(笑)、お菓子は個人でつくって自転車などで売り歩いているのですが、おいしかったと思っても二度と食べられない、「幻の味」がたくさんありました。タイのお菓子の方が、一般化されていて、バンコクの味が地方でも食べられたりしますが、カンボジアのお菓子は奥が深い。毎日同じ時間に来るわけでなく、市場にも毎日出ているわけでなく、まさに一期一会、あとで、「あのお菓子が食べたいよう」ともだえることになります(笑)。生ういろうのようなもの、生かるかんのようなもの、各種各色の寒天のようなものなどですが、デリケート、デリケート。想像しただけで生唾が出てきます。

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