そして、その古い家たちのほとんどが、新しい住人を得て、今も現役でした。
草葺き屋根の家は、維持費がかかる上、防火上の問題で保険料が二倍だとのことでしたが、それでも、たくさん残っているのを見ました。
デンマークの最北端目指して旅行したとき、一泊した港町レンビの近くの宿もそんな古い家の一つでした。
かつては豪農の家だったに違いありません。
もっとも、豪農と言っても、このあたりは、土地の痩せたところです。半島の真ん中あたりから西海岸へと、半島全体の面積の四分の一くらい、氷河期の終わりに氷河に表土を削り取られました。そのために土地が痩せ、作物は育たないので、人々は牧畜で生計を立ててきました。
今この家には、気丈な女主人が豚を飼いながら、気が向いたとき、気が向いた人だけを泊めて暮しています。
Bed & Breakfast、朝食は出してもらえますが、夕食は出ません。大きな、最初は工場かと思ったレンガ建てのりっぱな豚小屋は、歩いてすぐ行ける場所にあります。その隣には広い牧場もあって、馬も二頭飼っていました。
デンマークは最高峰が170メートルと平坦な地形ですが、この家は敷地の周りに掘りをつくり、その土を盛り上げて、丘をつくり、そこに家を建てています。
もともとは四棟の建物が四角く配置されていたようですが、今は三棟だけ残っています。
門の外から見て、左側が私たちの部屋でした。
夜明けの風景。
遠くに見える風車は日本でもおなじみの形ですが、デンマークのデザインで、風の強いデンマークでは、電気の40%を風力でまかなっているそうです。
この、ひときわ大きい、三階建ての建物の二階が女主人の住処で、食堂は右の端にあります。
もともとは、使用人もたくさんいたに違いない大きな家ですが、いまは女主人と最近帰って来て手伝いはじめた息子との二人暮らしです。
女主人には娘もいますが、町に出て画家になっています。その娘が描く絵は抽象画で、この家にはちょっと場違いな感じもしましたが、プライベートな部屋や廊下の壁にかかっていました。
ここでは娘の絵も売っているようで、値段がついている絵もありました。
この建物が、中庭から見た私たちの泊った部屋です。
一つの入り口を入り、右が私たち、左がアンとイエンスの部屋でした。
階下はくつろぐ部屋に、寝室は二階の、屋根から突き出した窓の見えるところでした。それぞれに清潔なお手洗いやシャワーもついていました。
これが寝室からの朝の景色です。
ただ、アンが言うように、デンマークのベッドや枕はふんわりし過ぎているのが欠点です。アンは枕を持参しましたが、持って行かなかった私たちは、柔らかすぎる枕をかき集めるようにして使いました。
もっとも、枕は一人につき三つくらいついていましたが。
さて、朝食です。
超豪華です。
チーズやハムがふんだんにあり、左の籠には茹で卵が10個くらい入っていました。
コペンハーゲンでイチゴを食べたとき、日本のイチゴよりずっとおいしいと思いましたが、北のイチゴはもっと美味しく、中まで真っ赤でした。
そしてこの椅子、背もたれの木に年季が感じられます。
暖炉の上には、このあたりで一般的に見られるタゲリ(Vanellus vanellus)のはく製が置いてありました。
食事のあと、主人の部屋のプライベートな部分も見せていただきました。
台所には、畳一畳分くらいの大きさの、古いクッキングストーブが置いてありました。
少なくとも百年は経っている博物館ものですが、いまでも現役です。
台所用品にも興味津々です。
いやはや、どこもかしこも、なにげに素敵です。
元は台所だった部屋を居間にしたとか、たくさんの客室をつくるなど、改装は大掛かりなものだったと思われます。
この家では、豚飼いを生業としているので、いたるところに豚の飾りものが置いてあります。それがまた、どれも素敵なのです。
ちなみに、デンマークの農業生産物はの筆頭は乳製品だと思っていましたが、じつは豚肉とその加工品だそうで、ヨーロッパ各地に輸出しています。
わぁ、このコバルトのガラスのコップはなんてきれいなんでしょう!
コップ入れも美しい!
美しい!美しい!
ただ、うんうん、うなるだけです。
ところで、骨董好きの私ですが、デンマークでは一度も骨董屋をのぞくチャンスはありませんでした。
ひっそりたたずむ豚くん。
女主人は、身長180センチもあろうかという大きな人、性格も豪快でした。
母と息子二人だけの生活を賑やかにしているのは犬たちです。
二か月前に6匹生まれたとか、子犬たちはころころと転げまわっていました。
古い家の庭は、どこもこんな石畳になっていましたが、雨が地中にしみ込むようにと、セメントは使っていないそうです。
素敵ですが、わりと歩きにくいものでもありました。
ともかく、素敵な宿でした。
素敵な写真の数々…、素敵な暮らしですね…。
返信削除それと、日の光が「横」から来ている感がよくわかります。
緯度の高いところでは、春から秋にかけて日光が横からさすので顔が日に焼けるとか、垂直な壁のペンキが融けるとか何かで読んだことがあるのを思い出しました。
行ってみないと、そこの土地の光や風や空気の感じとか潮の香りとか…わからないですね。
あと、単純な疑問ですが、言葉は何語で過ごされたのでしょうか?英語すらままならない身としては気になりまして(^^;)。
karatさん
返信削除陽が横から来ると、陽に焼けるのですか?どうりで、私はすっぴん、日焼け止めクリームも使っていないので、しばらくして鏡を見たら黒くなっていました(笑)。日本でもよく戸外で働いているし、焼けるなんておかしいなとは思ったのですが、そういうことだったんですね。
彼らにしてみれば、短い夏、思いっきり陽に焼けたいところでしょう。
ところで、会話は英語です。もう長いこと使っていないし、もともとへたくそなので、「あれは何だっけ、なんと言ったかな?」「○○か?」「ううん、そうじゃなくて、ほら」「じゃあ、××か?」「そうそうそれ、××よ」なんて具合に、相手を辞書代わりに使いました(笑)。
アン(ヴェトナム生まれ、フランス育ち)によればデンマーク語は難しいそうです。英語と似ている綴りも多々ありますが、あまりイントネーションがなくて、でも発音が難しい。まあ、いつもイエンスがいるので困らなかったのですが、ときおり、道をたずねたりして、「あの人すごい方言喋ってた」なんて言っていました。宿の人、お店の人などは、みんな英語が話せました。
ひとつひとつの写真に「素敵!」と心でつぶやきながら読み進みました。
返信削除空が青くて建物の色が映えますね!
キャンドルが日常で使われているんですね。豚さんもよくみるとキャンドルホルダー。
朝食も豪華!イチゴのように傷みやすいものは産地の近くで完熟を食べるのが一番美味しいですね。
hiyocoさん
返信削除食卓の上にも、キャンドルを立てるシャンデリアがぶら下がっていたので、よく停電するのかと思っていましたが、そんなことはないでしょうね(笑)。
ジャムもフランボワーズとか、いろいろありました。デンマークは日本より草刈りは大変じゃなさそうでしたが、あんな広大な家屋敷を二人で維持していくって、大変じゃないかと、余計な心配をしてしまいました。戸締りだけだって大変です。
まだまだいっぱい、豚の飾りものがあったんだけれど、豚ばかり載せてもと割愛しました。