2017年8月19日土曜日

竪機

『太陽の戦士』サトクリフ作、岩波少年文庫より

織り機は考えられた当初は、垂直の竪機(たてばた)だったと考えられています。
経糸(たていと)をぴんと張らないと、織りものは織れないのですが、経糸の下の錘(おもり)をさげれば、張ることができたからです。

竪機はやがて、経糸が錘なしでも張れるようになって、水平機となっていきますが、絨毯や段通(キリムなど)など、力を入れて緯糸(よこいと)を打ち込まなくてはならない織りものは、水平機から再度、竪機へとなっていったようです。

朝日新聞社『絨毯・シルクロードの華』より

これは、イランのザグロス山脈のあたりで遊牧生活を送る、カシュガイ人の水平機です。竪機になっていません。
織った絨毯の上に乗りながら織り進んでいきます。
織っている途中で次の場所へ移動するときには、織り機をいったん畳みます。織れた部分に乗って、均等ではない重さを経糸にかけたり、織り機を動かしたりしても、カシュガイの絨毯は歪んで織れることもなく、彼らは絨毯織りの名手と言われています。

朝日新聞社『絨毯・シルクロードの華』より

トルクの遊牧民ユリュック人の、夏営地に据えられた竪機です。
ユルックもカシュガイ同様水平機を使っていましたが、1960年代ごろから、竪機に変わっていったそうです。

朝日新聞社『絨毯・シルクロードの華』より

こちらは、トルコの街場の家庭の竪機です。
遊牧民とは違い、織り機をしつらえた部屋があるので、いちいち畳んだり持ち歩いたりしないで、織りあがるまで同じところで織ることができます。

Jon Thompsonの「Carpet Magic」より

1913年の、コーカサスの絨毯工房です。

経糸の上の掛けてあるのは下絵、あるいは見本を二つ折りにしたものでしょう。
具象的な模様では、下絵を経糸の下に置いて参考にしながら織り進みますが、抽象的な絵柄であれば、もう頭の中に入っているのかもしれません。


絨毯や段通(キリム)を織る場合、基本的に筬(おさ)は要りません。
模様を出しながら織るので、アンバランスに織り進むことがあります。というか、その方が普通です。
そのため、一段分全体を締める筬ではなくて、ほかの道具で締めます。


これが筬の代わりに緯糸を締める道具です。
この櫛のようなもので叩いてしめます。
素敵な道具で、うっとりします。 ちなみに、こんな道具がない場合は、ディナーフォークで代用できます。


そしてこのナイフやハサミで、経糸にループ状に巻きつけた緯糸を切ったり、短く切りそろえたりします。
(道具はいずれも、朝日新聞社『絨毯・シルクロードの華』より引用しました)


ループ状に巻きつけて、短く切りそろえたのは、アフガニスタンの絨毯。


そして、綴れ織りに織ってあるのは、パレスチナの遊牧民ベドウィンのキリムです。

アフガニスタンの絨毯は、経糸に麻糸を使っていますが、 ベドウィンのキリムの場合は、太い羊毛を使っています。
キリムは、アフガニスタンの絨毯よりずっと簡単に、早く織れたはずです。








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