2018年1月18日木曜日

ヨーロッパを席巻した(?)木の箱


雑に仕上げて、荒く塗装した木の箱です。
これを仕入れた、目利きのKさんは、
「オランダのものだと言われて仕入れたのだけれど、木や塗装の感じから、インドのものではないかと思う」
とおっしゃっています。
蓋を開けるときに触る部分の塗装がもっとも剥げているので、それなりに使い込まれたものなのでしょう。


ストッパーにもなっている蓋を引いて、


ねじると、内側で二段になっている下の部分が現れます。
ペンケース(筆箱)と思われます。


これは、ネットで見つけたベルギーのペンケースですが、雑貨屋をやっていた友人のSさんがこれとうり二つのペンケースを持っていました。
Sさんは、これと同じものをフランスの蚤の市で買ったとか、彼女はフランスのものと信じていましたが、堅木や真鍮板の象嵌(接着?)の細工から、これもインド製にも見えます。

Sさんがこれをフランスのものと信じる理由は、1980年代までフランスの文房具屋には、粗末な感じの木で雑につくられた、これと同じ形をしたペンケースが、どこでも見受けられたからです。
子どもたちが小学校に入学するとき、学校に持って行くために、誰もが買ってもらうのがこの形のペンケースでした。鞄の中で乱暴にゆすられても、まず蓋が開くことがないので、安心だったのでしょう。
ところがSさんが今、文房具屋さんにこの形のペンケースを売っているかと訊くと、
「あぁ、あれ?とっくに消えてしまったよ」
と、笑われるそうです。
 

この写真で見るように、上段に長い鉛筆やペンを入れると、箱をずらすことができません。短いものしか入れないか、下の段に入れたものを取りたいときは、上の段に入れたものをいちいち取り出すか、そう考えると、使うのも結構面倒です。
これとそっくりの、Sさんのペンケースは、下段には鉛筆が入らないくらい薄くできています。
「ほら、昔は羽の軸にインクをつけて字を書いたでしょう。羽を入れたんじゃないかしら」
と、Sさん。羽ペンはいつごろまで使われていたのでしょう?


これもネットで見つけた写真、ハンガリーの骨董市で見つけたペンケースだそうです。
ベルギーで見つけた人も、ハンガリーで見つけた人も、その国のペンケースと思っているようですから、フランスだけでなく、ベルギー、ハンガリー、オランダなどで、この形のペンケースが広く使われていたのかもしれません。


これもネットで見つけた写真、イギリスの小学校で使われていたペンケースで、骨董市で見つけたときにはこのように、中身も入っていたそうです。


写真だけからの判断ですが、底板はかなり薄いのに、どれも合板は使われていないようです。ということは、合板が安価で手軽な材料として使われるようになる以前につくられたものか、あるいは合板が手に入りにくかった地域、例えばアジアの農村地域などででつくられたものかもしれません。
このペンケースが出回っていたのは、いったいいつごろだったのでしょう?


この形の木のペンケースが、ヨーロッパの巷にありふれていた時代があったようです。そして、いつの間にか消えてしまいました。
そう言えば、今は世界では、子どもたちはどんなペンケースを使っているのでしょう?もしかしたら、ペンケースなど必要のない時代になっているのかもしれません。






2 件のコメント:

  1. 最初スライド式の箸箱だと思いました。途中で回転するとは!しかも国が違っても同じ形があるのがすごいです。
    今の筆箱はチャックが付いたポーチ式が多いですしょうか。たくさん入れられるし。でも息子はリュック全体が筆箱というか、裸でそのまま鉛筆や消しゴムがリュックに投げ込まれています。はぁ。。。

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  2. hiyocoさん
    つくって欲しいと言われたらお断りしたい手間のかかりよう。だのに安くて、しかもいろんな地域で使われていたって、どういうことでしょうね。「筆箱探偵団」になって追跡してみたいくらいです(笑)。
    お金持ちは家で家庭教師に教わり、貧乏人は学校には行かなかったのが、いつごろまで一般的だったのか、ヨーロッパでも、赤毛のアンに出てくるように、鉛筆と紙に前は石板をつかっていたのか、筆箱がいつから出てきたのか、知らないことが多すぎます。

    えぇぇ、息子ちゃん、筆箱なし!豪快!
    息子たちのときは、裏表どちらからも開けられる筆箱とか、アニメキャラクターのついた、それ自体が玩具みたいな筆箱が多かったです。「象が乗っても壊れない」っていう筆箱、今でもあるのかなぁ?

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