2018年7月22日日曜日

ル=グウィン追悼

今年の1月に、アーシュラ・K・ル=グウィンが亡くなりました。享年88歳でした。
昨年暮れから、『ゲド戦記』を読み返していて、ちょうど終わった頃だったので、感慨深いものがありました。


『ユリイカ』の、ル=グウィン追悼号を読んでいるうち、ほかの著作も読みたくなり、


『なつかしく謎めいて』を読みました。
現代版、あるいは未来版のガリバー旅行記、いろいろな世界が描かれている、短編集です。
本はとってもきれいで、挿絵もいいのですが、オムニバスではありながら、短編になんとなく物足りなさを感じていたら、kuskusさんのブログに、『西の果ての年代記』三部作を読んでいて、わくわくと楽しんでいるという記事が載っていました。 『ギフト』『ヴォイス』『パワー』です。


というわけで、早速読んでいる『ギフト』、面白いです。
ギフトとは、親から受け継いでいくある能力ですが、それをどうとらえるか、どう使うかという物語でしょうか。まだ三部作の一部を読みはじめたところですが、早く先を読み進みたいと、気持ちがはやっています。
私はたいてい、初めて読むときは先を知りたくて急ぎ、おもしろかったら何度でも読み返して、細部を楽しむタイプです。


『イシ』はル=グウィンの著作ではなく、ル=グウィンの母、シオドーラ・クローバーの書いたものです。
白人の侵略に追われ、ひっそりと隠れ住んでいた、最後の野生アメリカ先住民のイシが、絶望からどうともなれと姿を現してつかまってしまいます。カリフォルニア博物館に保護されたものの、人類学者たちが出向いて自作の辞書と首っ引きで会話を試みても、なかなか通じません。というのは、カリフォルニアあたりの先住民たちは小グループで生活し、同じ民族グループ内でも、言語が少しずつ違っていたからです。
それでもやっと意思の疎通ができ、イシだけでなく、カリフォルニアあたりの先住民の生活がいろいろわかってきます。イシは、5年後に結核で死ぬまで、凛々しく生き抜きます。

シオドーラの夫であるアルフレッド・ルイス・クローバー(ル=グウィンの父)は、実際にイシとかかわった当事者の一人でしたが、決してイシのことは書き残しませんでした。『イシ』は、これではイシのことが埋もれてしまうと、シオドーラが、夫の死後書いたものです。
また、ル=グウィンの寄せた序文は、涙なしでは読めない素晴らしいものです。

ル=グウィンは、親からの「ギフト」を強く感じていたのかと、思ったりしました。







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