2019年3月5日火曜日

古いマトリョーシカ


日曜日に、深大寺の後は「道上克アンティークマトリョーシカ・コレクション展Vol.2」の開かれている、銀座7丁目の「木の香」へと向かいました。
有楽町の駅を降りて数寄屋橋の交差点を渡ろうとすると、まだ東京マラソンが続いていて渡れません。しかたなく、地下で横切りました。

マトリョーシカのお店「木の香」は明るくて、とても素敵なしつらえでした。
お店に入ったら、すぐ螺旋階段で地下のギャラリーに向かいます。


写真撮影は自由なのが嬉しい、古いマトリョーシカは予想通り圧巻です。
昨年の同じころ、やはり「木の香」で、道上克さんのコレクションのセミョーノフとセルギエフ・パサードという二大産地のマトリョーシカを中心に展示会を開いたとのこと、残念ながら知りませんでした。
そして、今年はそれ以外の産地のマトリョーシカを中心に展示、ノリンスク、キーロフ、ヨシカル・オラ、メイデン、ウクライナ、モルドヴァ、ブレスト、カリーニンなど、そしてポーランド、中国、インド、ドイツ、日本などのマトリョーシカが並んでいました。


これは、初めて見るものでした。
スカートの一段目つきで上半身を外すことができて、下はなんとインク壺だったそうです。中にビンが残っているのもあったし、ビンが割れたのか木(スカート)にそのままインクを入れて使っていたので、インクのしみ込んだものもあったそう、一度に買ったのではなく、一つずつ集められたそうです。
説明してくれたのは誰かって?
そうそう、お店に着いてからわりとすぐに、所蔵者の道上克ご夫妻がいらして、道上さんご自身が、とてもご親切に解説してくださったのです。
「全部がポーランドじゃないよう、これなど顔がロシアです」
と、一体を指さされます。
道上さんは手に入れたマトリョーシカをいろいろな角度から分類、分析し、年代や場所を特定されてきましたが、未知のものに遭遇するとどんどん意欲を掻き立てられるタイプの方と見えて、目を輝かせていらっしゃいました。


そして、見ず知らずの人間(私)に、人はあんなにも優しくできるものなのか、自分を振り返ると恥ずかしくなるほど、道上さんはやさしい方でした。


これら、博物館にあってもおかしくないような100年以上前のマトリョーシカの数々を、道上さんは骨董市、ヤフーオークション、セカイモンでおもに集められたというのだから、その途切れない熱情にはもう、敬服するばかりです。


マトリョーシカでも何でも、何かをつくると必ずつくった人の個性が出てしまうし、時代も出てしまいます。今では決してつくることのできないマトリョーシカの数々を目の当たりにできたのは、とても貴重な体験でした。

そうだ、本を買って帰ろうと本を置いてあるテーブルを見ると、置いてある本は『マトリョーシカ ノート3』だけでした。これはすでに持っています。
「どんな本が欲しいの?」
と道上さん。
「写真集があればと思ったのですが」
「ほとんど残っていないんだけど、一冊持っているからあげるよ」
とカバンから取り出されました。
「とんでもない。買います」
「市販してないんだ。いいよ、あげるよ」

表紙はセルギエフ・パサードのマトリョーシカたち

何てこと、かねてから欲しいと思っていた『マトリョーシカアルバム』をいただいてしまいました。


『マトリョーシカアルバム』は130ページ余り、たくさんの写真が収録されています。

さて、マトリョーシカを堪能した後、せめて絵葉書でも買っていこうかと見本を見ていると、


道上さんが寄ってきて、絵葉書二組の入った袋をくださいました。
売れば、1セット1500円だし、制作費もかかっているというのに。


袋には、11枚入りの絵葉書セットが2組、マグネット、缶バッチ、シールと、前回の展示会のダイレクトメールまで入っていました。


絵葉書のいろいろです。


展示されていたマトリョーシカたちはどれも素晴らしいものでしたが、こんな木の人形たちも素敵でした。
民族衣装を身に着けていますが、前段の人形たちはこけしやベンタ人形をほうふつとさせます。


ちょっとピンぼけですが、このおじさんのお腹には、ままごと道具が入っていたのだそうです。なんて素敵なのでしょう!


大いに楽しんだマトリョーシカ展でしたが、帰ってから改めてDMを見たら、私がお暇してからしばらくして、道上克さん(左から二人目)と、マトリョーシカコレクターの砂川小夜さん(右端)を囲んで、「マトリョーシカの楽しみ方」という座談会があると書いてありました。
「木の香」の店長さん(右から二人目)も交えて、楽しいお話が聞けたかもしれませんが、会場でもDMを見たのに、うっかり逃してしまいました。
でも、長い一日でしたから、私はこれで満足でした。


それにしても、深大寺に行ってお参りをせず、マトリョーシカを見に行ってお話は聞かず、どこか抜けていたと言えば抜けていた一日でもありました。

次回の展示はいつ頃ですかとお訊きしたら、搬入が面倒なのでこれが最後とおっしゃっていましたが、「木の香」の店長さんは、
「いやいや、またやりましょう」
とおっしゃっていました。
また開催されることを期待します。






6 件のコメント:

  1. なんだか読んでいるこちらまでワクワクしてしまいました!道上さんとお話しできてラッキーでしたね。道上さんも春さんとお話しできて楽しかったと想像できます。本や絵はがきまでもらえてすごい!
    だるま市とマトリョーシカ展、とても一日のボリュームとは思えません。春さんタフですね!見習わねばー。

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  2. hiyocoさん
    一大決心でしたよ!
    以前は、東京へ行くならと複数場所を訪ねて、複数用事をこなしましたが、この数年は、たった一か所に行くのがやっとでした。すっかり田舎化していますから。しかもだるま市は10万人、ビビりますよね(笑)。でもだるま市の初日とマトリョーシカの最終日が重なってよかった、二度は行けませんからね。
    道上さんのやさしさ、すごいです。自分の来し方を考えて、態度の悪さの数々を思い出して反省したくらいですから(爆)。

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  3. 何と充実した一日!一つだけでも満足なのに…。
    マトリョーシカノート、昔は非売品で、しかも世田谷区の図書館には置いてなくて、検索して杉並区の図書館まで見に行ったことを思い出しました。今は売ってるので、マトリョーシカノート3を買いましたが…。
    マトリョーシカアルバム…うらやましい(^^)。
     本当に道上さんのその「その途切れない熱情…」には感服します。単なるコレクターではなく、多量に蒐集されたものを分析なさって本にまでしている…本場ロシアの人が聞いたら、驚くのでは…。あるいはロシアではもう有名だったりして…。

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  4. karatさん
    道上さんは本当にやさしい方でした。
    確か、ノートにも書いてありましたが、骨董市などあっちからこっちまで回られたようでした。セカイモンもヤフオクも、7、8年前まですごくいろいろ出ていたそうですが、それにしても継続的にチェックして入札したり、よくわからない汚い写真で想像したり、一つずつ出品されるのを一つずつ買ったりと、私だったら「もういいや」と思うような手間暇かけて集められたようでした。
    karatさんも実際に目にされたのでご存知でしょう、どれもわりと大きめで古いのに状態のいいものがいっぱいでした。
    FBでイベント情報などされているようですよ。

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  5. はい、ありがとうございます。
    前回の赤いお知らせ葉書にも印刷されている、ガチョウかアヒルをぎゅっとつかんでいるマトリョーシカを、手に取って子細に眺めたいですが、それはガラスケース入りの博物館級でしょうね…。
    一時そういう家禽をつかんだマトリョーシカが欲しくて探した時があります。その情熱はもうないのですが…あっても高くなってしまって難しいですね。
    道上さんは千葉にお住いのようで、以前京成バラ園で開催されたときに見に行きましたが、どなたかと熱心に話されていました。マトリョーシカは大きめのものを含めて大変な量でした。あれ全部を運ぶのは大変でしょうね。中に収めて、また出して…。でもまた機会があれば行きたいです。

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  6. karatさん
    小さめの部屋だったこともあり、とっても珍しい(古い)の以外、ほとんどはガラスに入っていませんでした。さすがに「触れないでください」とは書いてありましたが、道上さん自身がいくつか手に取って開けて見せてくださいました。
    あのガチョウをつかんでいるのは、セルギエフ・パサードのものなので前回の展示だったのでしょうね。私はガチョウどころか、もっと新しい、袋を持ったのが欲しいと思ったことがありましたが、一度も出逢ったことがありません(笑)。セカイモンを眺めていても出逢ったのは全部手ぶらでした(爆)。

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