2019年8月28日水曜日

はさみのある生活

夫は時々しか行かない骨董市で、何度かラシャばさみ(裁ちばさみ)を買ったことがありました。
「なんでラシャばさみを買うの?」
「はさみが足りないからさ」
「何切るの?」
「何でも切るよ」
ラシャばさみを買ったのは、骨董市でラシャばさみしか売っていなかったからなのか、あるいは大きいから失せにくいと思ったのか、わかりません。
でも、小さいころから、ラシャばさみで紙を切ってはいけない、布だけを切るようにと言われて育った私には、ラシャばさみで布以外のものを切ることなど、とうていできないことです。

我が家のはさみ事情は、潤沢な方だと思います。
文房具をしまう引き出しに、はさみをまとめて入れていますが、夫専用のはさみは、夫のデスクの上の筆立てに立ててあります。その専用のはさみは、よく行方不明になってしまい、そのたびに引き出しのはさみや、食卓のカトラリー入れの中のはさみなどが、夫のデスクに移動しています。
作業場にもはさみは置いてあります。また、段ボールや古本などを縛る荷紐を入れた籠にも専用のはさみが入っています。
というわけで、どこにいてもはさみは間に合う状態にはなっているのですが、私に「元に戻して」と言わせない、夫専用のはさみを増やしたい気持ちがあるのでしょう。


そんな夫が買ったラシャばさみ、少なくても2本はあったはずなのに、1本しか見つかりませんでした。
その夫が今年、久しぶりに行った骨董市で、床屋さんのはさみを買いました。


左がそのはさみです。
とっても素敵なはさみで、私の菊一文字(右)より形もいいし、鉄がとろっとしていていい感じです。


よく切れるはさみだったのか、長年にわたって砥いでは使われてきたらしく、ずいぶん刃が減っています。


日常生活では、ラシャばさみより床屋さんのはさみの方が使いやすそうですが、私は、床屋さんのはさみで紙などを切ることにも、ちょっと抵抗があります。
「刃が減ってるから500円ね」
のはさみですから、惜しげはないのですが。

数か月前、私のラシャばさみが見えなくなりました。
置いてあったところ、置きそうなところをくまなく探しても出てきません。さして裁縫をするわけではありませんが、ないと不便しました。しばらく紙を切るはさみを使って布を切っていたのですが、切りにくいことこの上なしでした。
というわけで、ラシャばさみが見えなくなって1か月くらい経ってから、新しいはさみを買ってしまいました。
どうせ買うならいいものをとも思いましたが、贅沢も言っていられないので、値段の安いツヴィリングにしましたがあとで、
「私も骨董市で買うという手があったかも」
と思ったりもしました。
新しいラシャばさみのカバーをつくろうと布を探し、日曜日にちくちく縫っていたら突然、さがしていたはさみの在りかを思い出しました。
もう半年も前に、織り機の紐をつけ替えようと、織り機を置いてある作業棟の二階に持って行って、そのままになっていたのです。なんてこと、数日で紐替えの作業をすませるつもりだったのに、やりかけのまま、早半年も手つかずだったのです。


「あぁぁ、要らないものを買ってしまった!」
生活に何の役にも立たないものを買うことにあまり抵抗がないのに、無駄な必需品を買ってしまったことに後悔しきりです。
ツヴィリングもピンからキリまであるのか、布は切れるけれど極上というわけでもありません。ちょっと力が要ります。
そういえば、仕立て屋さんが使っていたような極上のラシャばさみは、もしかしたら一度も使ったことがないのかもしれません。切っているのか切っていないのかわからないようなラシャばさみ、きっとこの世にあるのでしょうね。








7 件のコメント:

  1. ラシャはさみで紙を切ると切れ味が落ちますからね、
    滅多に使わないけれど母のがあります。
    文具売り場にいろいろな種類があるので二つあれば充分で
    ゴムのりは補充用と小出しが三本です。
    万年筆を愛用していますが最近筆ペンに凝って字を書くのが
    手軽で面白いです。

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  2. 昭ちゃん
    私はラシャばさみをよく使うんです(笑)。
    でも、考えてみれば祖母のも母のもそこそこしか切れなかったような、きっと安手のものだったのでしょう(笑)。もっとも仕立て屋さんじゃないんだから、そこそこ切れれば十分です。
    でも一度くらい、当てただけですっと軽く切れて、切っていても切ってる感がないほどのはさみ、使ってみたい気もします。大工道具を使っていると、なまくらとそうでない刃物は全然違うことを実感しますからね。


    夫は筆ペンが好きですが、私はたまにしか使わないので、一度使っただけで二度目はがちがちになって使えなくなったりするので、ハナから使いません。万年筆も、15年くらい前に使おうとして、買ったカートリッジを全部使いきらないうちに挫折しました(涙)。

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  3. ラシャばさみは初耳です!「裁ちばさみ」としか言ったことありません。
    人形は同じものを何個も持つことをよしとしているのに、生活必需品は厳選したもの1つがいいのですね(笑)。でも計量スプーンはたくさんあったような。

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  4. 実家は呉服屋を営んでいましたが、母はいつも店の一角を陣取って仕立てに出す前の反物を寸法や柄に合わせて断っていました。「裁ちばさみ」を使い、シャッシャーと音を立てながらの鮮やかな手つきを思い出します。他にも、竹製の曲尺や五つ玉の大きなそろばん等、呉服屋には不可欠な道具が有りました。結婚した時に持たせてくれた裁ちばさみは布専用として大事に使っています。

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  5. hiyocoさん
    この形のはさみにも歴史があって、洋服がもたらされたときに西洋のはさみを真似てつくられたのでしょうね。ラシャとはウールかな?紳士服の仕立てに使われたのでしょう。
    それ以前、反物を切るには日本ではいったいどんなはさみを使っていたのでしょう?
    切る長さが短いとはいうものの、まさか握りばさみじゃないでしょうね?私の祖母は今思うとかなり大きめの握りばさみも持っていました。糸を切るだけじゃなかったのかもしれません。

    そうなんです。一応ミニマムで暮らしたい。とくに電気製品などはできるだけなしで暮らしたい。といっても願望だけで、残念ながらいろいろ持っています(笑)。
    計量スプーンは決定打が見つかるまでの試行錯誤と思ってください(笑)。もう卒業しました。バターナイフもそうでした。落ち着いたら増やしません(笑)。
    それが、生活に使えるけれど愛でる対象にもなるものだったら、ちょっと事情が違います。例えばすり鉢のようなもの、日本のすり鉢も大小いろいろ持っていますが、タイのクロック、インドネシアの石臼、乳鉢など、あれこれ持っています。最近、バリに通っている人から「今の石臼はセメントでできていて、昔の石のとは違う」と聞きました。そして、私の石臼はセメントに見えるそうです。使ってもセメントの匂いはしないので、石が違うのだと思いましたが、ではセメントに見える泥岩ではない石の石臼はどんなんだろうと、早くも見たい、手に入れたい意欲に駆られています(笑)。でも、バリでも市場でも見かけないという話ですから、お目にかかることはないと思います。そんな日常品、骨董として売ったりしてもいないから、バリの家庭を訪ねて「これが欲しい!」という以外、手に入らないでしょうから(笑)。

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  6. reiさん
    結婚されたとき持たせてくれた裁ちばさみ、きっといいものでしょう。私が結婚するとき持たされたのは手芸店で買えるような代物ですが(笑)。
    そして、呉服屋さんだから、「ラシャばさみ」ではなくて「裁ちばさみ」だったのですね。

    私は結婚するときに、買ってもらった着物を選んだときぐらいしか呉服屋さんののれんをくぐったことはありませんが、小さいころは大きな風呂敷に包んだ反物を知り合いの呉服屋さんが背負って持ってきて見せてくれていました。しゃっと投げるようにして広げる手つき、両手でくるくる巻き戻す手際の良さ、懐かしいです。五つ玉のそろばんは祖母の実家で見つけて、学生時代だったかちゃっかりもらい受けています。
    柄合わせと聞くと、苦い思い出があります。大きな柄の浴衣地を買い、仕立て代をケチって母に縫ってもらったら、今一つ柄合わせが気に入らなくて殆ど着ていません(笑)。母は柄合わせより、布をいかに余らせようかと考える人ですから、失敗でした。

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  7. cycle-oyajiさん
    コメントありがとうございます。
    相変わらず研ぎは苦手で、毎日切れないノミや切れない鉋を駆使して作業しています(笑)。裁縫も落ち着いてする暇がなくて、裁ちばさみも無聊をかこっています。
    日本橋木屋にも、いろいろあるのですね。以前お話したように私の木屋の菜切り包丁はよく切れますが、牛刀と出刃包丁は、そこそこの値段のものでしたが、新品のときからハズレです。

    研ぎが大好きな方を尊敬します。知り合いの大工さんは、2時間使ったら2時間研ぐと言います。そんなこと、私には到底できなくて、ついついおざなりに砥いで、力任せに使っています。それでも、いざとなれば、優しい中屋平治さんが研いでくださるので安心です。以前、別の中屋さんに鉋を持って行ったら、鉋は自分で研ぎなさいと言われてしまいました(笑)。

    ところで、犬のトリマーの方が言っていましたが、かなり高額なはさみを何本も持っていて、どれも2,3年で使い倒すそうでした。どんな職業にも見えないところに苦労があるものですね。

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