2019年10月26日土曜日

カンボジアの知恵


昨日は、関東地方、ときに千葉や茨城はかなりの雨に見舞われました。
我が家は軒下が深いので、雨のときに安心なだけでなく、夏は陽はほとんど室内には入りませんが、冬は十分に入ってくれます。
この深い庇(ひさし)を支えているのは、軒下に室内から水平に伸びている出し桁(だしげた)という工法です。


左の写真は玄関から左を見たところ、右は右を見たところです。

自分たちの手で家を建てようと決めたとき、私たちはカンボジアのプノンペンに住んでいました。
建築を生業としてこなかった夫が、30年ぶりに家の設計をすることになり、
「何か参考になる建物がないかなぁ」
と周りを見回したとき、目に入ったのはカンボジアの家々でした。
というわけで、我が家には、随所にカンボジアの建物の知恵が詰まっています。


これはカンボジアの農家の軒下です。
だし桁づくりの軒下、真似したので当たり前ですが、我が家にそっくりです。もっとも出し桁が長いので、軒先では梁と柱で支えています。


プノンペンでは、絵画屋さんの3階に部屋を借りていましたが、通りを挟んで目の前には芸術大学がありました。
その芸術大学の軒下です。古い建物で、エンタシスになっている柱も素敵、全体をベンガラで塗ってあるのもいい感じでした。
軒が長く出ているので、手前の方の庇(右端)は、建物と並行に、二重に梁と柱で受けています。


これも芸術大学の建物で、レンガと木造の組み合わせです。
この屋根の掛け方も、おもしろくて素敵です。
カンボジアの建物で、庇の内側に詰んだ目で横桟が見えるのは、この横桟に下から順番に焼いた屋根瓦をひっかけてあるからです。


夫の設計の考え方は、まず「その土地をよく見て、その土地の力を引き出す」というものです。
そのため、ここに来てから本格的に設計したし、地域の建物を参考にし、地域の材料を使いましたが、その中にカンボジアの家の知恵も埋め込まれているのです。





4 件のコメント:

  1. 最後の写真の、屋根の角部分の材木が複雑に組んである姿がかっこいいです!
    庇いいですよね~。最近の家はストンと箱型なので、庇がある家ってほんと少ないです。庇のない家は雨が壁伝いに垂れて来たと前におっしゃってましたよね。屋根の面積が少ないので、メンテナンスの際は安くて済みますが。

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  2. hiyocoさん
    そうそう、箱型の家に住んでいたときは、ちょっと大雨になるというときは要注意、隙間隙間を伝わって入ってくる雨漏りの後始末に時間を費やしました。もちろん、床上浸水などとは比べものにならないレベルですが、室内を乾かすにも工夫が要りました。
    暴風雨の多い、多くなっている日本では庇さまさまです(笑)。

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  3. おはようございます。
    うちも三階の南側(ベランダ側)だけ庇がありません。そこから雨漏りするということはありませんが、雨が降ると窓を少しも開けられません。雨がいきなり降りこんでくるからです。1,2階は上の階のベランダがあるので庇がわりにはなっていますが…。
    三階の西と東の窓には庇があるのになぜ大きな南側の窓にはないのか不思議です。
    道路をはさんで見える新しく建った住宅はどこも一切庇が無くて、やはり雨が降って窓を開けたら全部吹き込むだろうと思っていますが、多分建蔽率というのかぎりぎりに建っているから庇がつけられないのでしょうか?
    近所を見回しても、3階の窓だけ庇がない家が多いのですが…私は建築には全く素人なのでよく分からないですが、そんな「決まり」があるのではないか?と思ってしまいます。
    雨が降っていたら窓を開けて外を見たいのに。まあ透明のガラスなので見えることは見えますが…。

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  4. karatさん
    多分、エアコンが普及して生活様式が変わってしまったからでしょうね。昔は雨でも暑いときは窓を開けないといられなかったのが、今は外がどんなお天気でも、壁も防水材料でできているのでへいちゃらということでしょう。
    敷地の関係で確かに室内を大きくしようと庇はつけないということもあります。税金の計算で、一般的には庇の下も課税対象になると聞いたことがあるので、庇をつけるのはばからしいと思われているのかもしれません。
    田舎にはまだ自由がありますが、都市に建物を建てる場合、その制限は恐ろしいばかりで、それが建築家を縛っています。形のことなど考えていられないほどのようです(笑)。

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