2019年11月16日土曜日

鳩笛

今、東京の丸の内の丸善で開催されているみそろぎ展に、いまどきさん(吉田義和さん)が身を削るようにしてつくられた鳩笛が出展されています。
みそろぎ展の準備中に入院されて(もう退院されたが、今年三回目)、鳩笛しか出展できないけれど、会期中に退院されたら、急遽他の人形も仕上げて並べられるということのようでした。
友人Kが自由が丘で個展を開いている日にちと重なっており、その両方に行こうと予定していた日の前日、妹から思いがけない訃報が入りました。そのため、予定していた日の次の日とその次の日に東京に行くことになり、みそろぎ展と個展をまわる予定は崩れてしまいました。

自由が丘は遠くて無理ですが、東京駅は通り道にあります。通夜と葬儀に向かう途中、
「行きじゃなくて帰りに寄ろうぜ」
という夫を、帰りには絶対そんな余裕はないからと説き伏せ、途中下車してみそろぎ展に行ってきました。


いまどきさんは大きい鳩笛と小さい鳩笛を出展されていましたが、何せその数日前から人生の無常を感じていたので、「鳩さん、私のところへ来てもらってもこれからどうなるの?」という悲観が先立ち、小さい鳩笛だけいただいてきました。


いまどきさんは、東京の土にこだわり、昔の型にこだわり、昔の顔料にこだわってつくっていらっしゃいます。
吹くと、「ほーほー」とよい音がします。


大きい鳩笛には足がありませんが、小さい鳩笛には足があります。


ものを増やすのはいかがなものかと思っているにもかかわらず、芝原人形四代目の千葉惣次さんの招き猫も、みそろぎ展から一匹連れて帰ってしまいました。
千葉夫妻は、招き猫をいくつか出展されていて、芝原人形(千葉惣次)の招き猫もみ太郎窯(千葉真理子)の招き猫もいましたが、気持ちもお金も沈んでいて、小さな招き猫一匹が精一杯でした。
いまどきさんの大きい鳩笛同様、千葉さんの小さい犬もとってもかわいかったのだけれど.....。


人の世は無常、命あるものはいずれは命をなくしていきますが、その志は引き継がれ、技も引き継がれ、ものでさえ、過去と未来とのつながりの一助となっていきます。
いまどきさんの人形も、江戸の大火、関東大震災、東京大空襲などをくぐり抜けてきた、半欠けや黒焦げで、土の中から掘り出された昔の人形たちがいまどきさんの関心を呼び、復刻意欲をかきたて、そのお手本となっているのです。


今度いまどきさんの大きい鳩笛に出逢うときには、気持ちも上向いていると思うので、元気に鳩笛をお迎えしたいと思っています。
  








2 件のコメント:

  1. 春さん、
    私は時おり無常を感じます。そんな時は、春さんのことを考えるんです。春さん宅を思い出しながら。それで気合いを入れるんです(笑)。

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  2. Bluemoonさん
    元気づけてくれてありがとう。
    へこみそうになることは多々ありますが、お互い明るく生きましょう!
    「無」ではなくて「空」を感じれば、元気を出せますよね。
    ありがとう。

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