2020年3月27日金曜日

製図用具


引き出しの中に、後生大事にとってあるものがあります。
製図用具、息子のコンパスです。
かつて夫のコンパスもあった、私のものもあった、でもとっくになくして、これは息子が学生時代に使っていたものの一部です。


ところが、尖った針や鉛筆の芯を止めるネジ金具が、すべて失われています。それに、これだけではなかったはず、もっといろいろ種類があったはずです。
そうなのです。製図用具というものは、大切にしていても何かしら失くなってしまう、そして、いつか失くなったものが出てくると取っておいても出てこなくて、使いものにならなくなってしまっても捨て時に迷うものなのです。

ネットショップで、製図セットを見つけました。写真で見る限り、揃っているみたいでした。
とくにカラスグチが懐かしかったので購入しました。


箱の横に金属の棒の先に釘のような頭がついていて、それを引っ張って開ける構造、そうそう、こうやって開けなくてはならないものが、祖母の家にもありました。
私や夫の時代というより、私の父の時代のもの、こんな箱が引き出しの中にあったのは覚えていますが、中に何が入っていたかは思い出せません。


開いて、しげしげと見ると、ビロードでできたくぼみに収まって、コンパスやカラスグチが奇跡のように、全部そろっています。

私はカラスグチを、ポスターカラーを使って、絵(いわゆるグラフィック)を描くのに使いました。夫は製図するのに使いました。
コンピュータで図面が書けるようになる前は、製図はすべて手書きでした。この製図器具をつくるにも、ほかの製図器具を使って図面を起こしただろうし、小さな精密機械から、大きな汽車や飛行機の設計をするのも、すべて製図器具を使って、紙の上に描きました。


コンパスは、左から本体、先のとがったケガキするもの、鉛筆の芯、コンパスの直径を大きくする延長部品、そしてカラスグチです。


カラスグチは、ネジで線の太さを調節し、墨壺やインク壺に入れて墨やインクを隙間に含ませて使うものです。


左は小さな円用の精密なコンパス、真ん中はコンパスに装着するもの、右は直線定規や雲型定規を使って、図面の墨入れをするのに使います。


鉛筆の芯入れのねじの細かいこと、これは手でねじを切ったのかもしれないけれど、鉛筆の芯ホルダーは、図面を描いて、その通りに仕上げたものです。お尻のネジを回すと、鉛筆の芯が出たり入ったりします。


動物の骨(象牙ではないと思う)でできた物差しの目盛りも数字も、手で彫ってあります。
ちなみに、単位はセンチではなくて寸です。
  

この小さなものだけ何だかわかりませんでした。
カラスグチは使用するうちに、ざらざらしたトレシングペーパーで削れて、先が太くなるので、時々研がなくてはなりませんが、砥石ではないようです。


ところで、うっかり見逃すところでしたが、箱の蓋の部分につまみがあるのに、写真を見て気がつきました。
物差しがあったので、十分と思っていましたが、この中に何かあるはずです。


開けると、分度器と布が入っていました。


布は、分度器が動かないように入れたものだと思われますが、広げてみると、まぁ、使い古したぼろ布でした。
こんなぼろ布を大切に使うような人が、当時は高額だったに違いない製図器具を持っていたことに、驚いてしまいました。
おそらく、何にもまして大切な宝物だったに違いありません。


その分度器の目盛りは、手彫りでした。
円の中心に穴が開いているので、丸い線は、自社のコンパスを使って、ケガキの部品で彫ったものに違いありません。


そして、数字は裏から、手で彫っていました。


カラスグチが欲しいと手に入れた、コンパスセット、思いがけず小林理研の職人さんたちの熱い心や、持っていた人の熱い心に触れることができました。







17 件のコメント:

  1.  春姐さん製図用の高級品ではないけれど子供の頃から
    三角定規や分度器・磁石で良く遊びました。
    木の高さや方角を見たり崖から飛びおりたり、
    遊びには欠かせません男の子だもん。笑い

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  2. 昭ちゃん
    昭ちゃんは文房具大好きですよね。
    でも、私が三角定規や分度器を買ってもらったのは4年生くらいかしら、授業で必要になったときでした。学業に使うものだから、そんなもので遊ぶなんて、想像もつきませんでした。
    磁石はアルミの水筒の蓋についていました(笑)。

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  3. 製図の道具は初めて見ました。カラスグチはこれで1本の線が引けるのですよね?2本にならないのが不思議な感じがします。万年筆の先が割れているのと同じことだとは思うのですが。

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  4. 秘密の場所に素敵なものが入っていましたね!

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  5. 今私が夢中になっているのは筆ペンで
    指圧次第で面白く書けます。水筒の磁石懐かしいなー

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  6. hiyocoさん
    0.5㎜くらいから、2㎜くらいの線が描きやすいです。私の場合、ポスターカラーを使っていましたから、ポスターカラーを水で溶く濃度も、書きやすさに関係しました。また、定規を当てると、へたをすると、毛細管現象というのかしら、絵の具が物差しに移ってべったりと染み出すので、気をつけなくてはなりませんでした。
    例えば、ポスターを描いてレタリングするとしますよね。字をフリーハンドで筆で書いてもいいのですが、大きな文字になると真直ぐな線が書きにくい。そんなときは直線部分はカラスグチを使い、直線でない部分はフリーハンドで書きました。
    昔、レタリングする人はみんなそうしていましたよ。隔世の感がありますね。

    あの布ね。お布団にしていたのか、とっても安っぽい生地です(笑)。手彫りの分度器はすごいです!

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  7. 昭ちゃん
    筆ペンは苦手です(笑)。
    水筒の磁石、懐かしいでしょう?水筒のお茶って、独特の味がしましたね。アルミっぽいというか。

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  8. アルミの弁当箱はいつも同じところに
    梅干しを乗せると腐食し穴があきましたね、
    アルマイト加工以前であまり気にしない時代でした。

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  9. 昭ちゃん
    お弁当箱、密閉できず困りました。
    といいながら、中学生から大学生まで、母にお弁当を作ってもらって、ずっとアルミ(アルマイト)のお弁当(箱)で過ごしました。

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  10. 我が家にも同じ様な製図道具が残っています。他の製図道具でも見られるKENTブランドです。調べてみると、このブランドは内田洋行が販売していた物でした。内田洋行と言うとオフィス家具の納入を依頼したり、知人がデザイナーをしていたなど縁のある会社ですが、満鉄に勤めていた測量技師の内田小太郎さんが満州で製図機器や事務機器の販売会社として110年前に創業した会社との事。現在でも教育システムなどで頑張って?いますが。
    我が家の製図道具の隠し部屋には、分度器と機器掃除用のフェルトの布と保証書が入っていました。持ち主が私ですから、古い布が見つかるはずは無いですね。

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  11. 文具は好きなので上京すると銀座伊東屋と池袋のハンズで一日楽しんでいました
    バリーの財布は60年以上健在です。

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  12. reiさん
    ちゃんと、部品が欠けないで持っていらっしゃるのですか?偉い!
    でも、reiさんのものなら、カラスグチはないんでは?(笑)ロットリングが出現したのはいつ頃でしたかね?それとも、墨でなく色を使う場合、ロットリング出現以降もカラスグチが現役だったとか?あり得ますね。
    内田洋行知っています。でも「洋行」と言って思い出すのは、長崎に行ったとき、町で〇〇洋行という古そうな看板をたくさん見たことでした。それまで何とも思っていなかったけれど、洋行とは貿易会社とか商社という意味だと気づかされました。
    私は、立派な箱入りの製図セットは持っていませんでした。カラスグチやコンパスは単品で買いました。夫も物はなくしやすい人なので、持ってなかったような(笑)。ただ、雲型定規は木のを持っていて、「高かったんだから捨てるなよ」と言っていたような記憶もありますが、みごとに失せております(笑)。
    結婚してから引っ越しすること13回、なんだかんだで失せるものもあれば、さして大切にしていないのに、いつまでも居残っているものもあります(笑)。

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  13. 昭ちゃん
    私はそれほど文房具好きではないかも。
    伊東屋の隣の銀座松屋で、お鍋や雑貨を見る方が好きでした(笑)。あの辺りを用事で通るとき、伊東屋には寄らなくても松屋と教文館にちらっと寄りました。アンパンの木村屋にも寄ったけど(笑)。

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  14. ブログを読んでカラスグチとガラス棒を探しているのですが出てきません。もう使うことはないかも、と移住の時に整理したのかな。それともどこかにあるのかな。溝線引き定規は目の前に立てているのですが。画材を揃える時の学校指定の定規とコンパスはUCHIDAでした。雲形定規もUCHIDAです。木の雲形定規はカッコいいですね。

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  15. Bluemoonさん
    ものって、探しているときはなかなか出てきませんよね。
    今日はある本を探していて、ここいらにあるはずだと簡単に見つかるつもりだったのに見つかりませんでした。もう一度しらみつぶしに背表紙を指さしながら全部見たけどありません。
    それではと階下の本棚を念のために見たけれどないので、もう一度元のところに見に行ったら、やっと見つかりました。最初にあると思っていたあたりにあって、しらみつぶしに見たのに、どうして目に入らなかったのか不思議でした。
    目に見えるものでさえそんなだから、カラスグチは息をひそめて、探されるのを楽しんでいるのでしょう(^^♪

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  16. ブログを読んだ時は、カラスグチもガラス棒も持っていると思ったんですけど。連日探しても出てこないので持って来ていない可能性が大きい、そんな気持ちです。隠れてたらいいのになぁ、また改めて探してみます。

    主人が仕事帰りに寄ったお店で、アッチャチャ(achacha)という果物を、名前に惹かれて買ってきました。長男の検索によると原産地はボリビアです。今のところはオーストラリアだけに輸出しているようです。種が大きくて実は少しです。食べた時はビワを思い出しました。ビワよりパサパサしていますが。主人は期待外れだったようで「買ってしまってアッチャチャ」言ってました。皮のしぼり果汁と水を混ぜたら飲めるようです。これはまだ試していません。メールで写真を送りますね。

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  17. Bluemoonさん
    コメントが遅くなりました。アッチャッチャの写真を見ました。
    パッションフルーツに似ていますが、種は大きいのですね?
    その昔、ガーナで初めてアボカドを食べたときは、なんじゃこれは、食べない方がましではないかと思いましたが、今では病みつきです(笑)。ヴェトナム土産のドラゴンフルーツを初めて見たときも、「わぁ、ゴマが入っているみたい」とびっくりしましたが、今では普通に見られます。
    ほんと、地球は狭くなりましたね。
    アッチャッチャも、今に日本にも来るでしょうか?

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