息子(次男)が、『世界のはじまり』(バッジュ・ジャーム/ギーター・ヴォルフ著、タムラ堂、2015年初版、2020年3刷)という本を持って来てくれました。
長く本屋さんをのぞくこともなく、『東京新聞』だけとっていると、文芸の情報に弱い(朝日新聞は文芸は強かった)、この本の存在はまったく知りませんでした。
10枚の絵でできているのですが、この本はすべて手仕事でできています。
「動画を見ると、どんなにすごいかわかるよ」
と、息子。
確かに、シルクスクリーンで1色ずつ色を刷り、刷り上がったものを裁断して糸で綴じ、表紙をつけて仕上げるまで、すべて手仕事でやっているのが見られます。
一度にたくさんつくることができず、これは3刷目ですが、シリアルナンバーは310となっています。
この物語は、インド南部のゴンドの人々が伝承してきたものを元に、ゴンドの画家であるバッジュ・ジャームが描いた世界を、タラブックスという小さな出版社で本に仕上げたもので、英語版のほか、フランス語版、ポルトガル語版などがつくられています。
お話は、大気や土ができることからはじまり、
時のこと、季節のことが描かれ、
種からの芽生えが描かれています。
そして、生命の卵ができる様子。
人間だけでなく、動物や虫たちも同等の重みを持っています。
また嬉しいのは、芸術も描かれていることです。
もっとも芸術というのは生活に埋め込まれたもの、大地に暮らし、家や必要なものを土や木からつくることです。
そして、輪廻というか、循環が描かれて、物語は終わっています。
素敵な本!究極の手作りだけど、原画から版を作る部分はMACを使っているところがIT王国インドならではですね。
返信削除他の動画で作者のインタビューも見ました。印象的だったのは、植物の絵について、カルダモンなどはインドの人にとって大切なものだけど、今ではお店で買えるようになって植物そのものを知ることはなくなったので、それを描きたかったという話です。とにかく絵が素敵です!
hiyocoさん
返信削除原画から版をつくる動画もそうでしたが、人が働いているイラストもコンピュータでとても素敵に絵にしていました。
ターメリックは知っている、シナモンも丁子も知っている、ではカルダモンってどんな植物だろうとウィキペディアで見たら、ショウガ科でしたね。ターメリックと言い、ショウガと言い、ショウガ科のスパイスは多い。カルダモンの根はどんな香なのかしらと気になります。ところで、あの素敵な植物の芽生えの絵の中に、あまりカルダモンらしい植物はありませんでしたね(笑)。そこがまた面白いところでした。
ついつい、『タラブックス インドのちいさな出版社、まっすぐに本をつくる』という本を、ポチっとしてしまいました(笑)。
こちらのブログで紹介された本は、先ずは図書館で借りて読み、手元に置いておきたいものは購入する様にしていますが、この本は即購入を決めました。昨日Amazonに注文した時は最後の一冊でした。届くのが楽しみです。
返信削除reiさん
返信削除確かに、手に取ると質感が楽しめます。紙も絵も素敵ですが、開くと糸が見えるところなど、製本の原点に立ち返っているようで、300年後の未来の人の垂涎の一冊になっているかもしれない気がします。
西洋の古い本はリトグラフに手彩色や活版印刷、日本の古い本は木版画ですから、シルクスクリーンの本はなかなかないかもしれません。
というか、とにかく絵がきれいです。