2020年6月16日火曜日

江戸へ逃避


ちょっと古い話になります。
NHKのオンデマンドで、ドラマ「蛍草」を見たのをきっかけに、文庫本の『蛍草』(葉室麟著、二葉文庫、2015年)を買って読んだのは、2月だったか、3月だったか。葉室麟の名前も作品もまったく知らなかったのですが、それを手始めに、コロナ禍の3月4月は、すっかり葉室三昧でした。

葉室麟は、北九州で地方記者などを経て、50歳から執筆活動に入り、2017年に66歳で亡くなるまで、わずか12年間にたくさんの、物語を残しています。
おもには武士や、武家の女性を主人公にしたお話で、実在の人物を描いたものもあるようですが、それは読んでいません。


毎日、寝る前にちょっとだけ読むのですが、時々やめられなくて、一冊全部読んでしまうこともありました。そんなときは目も冴えて、読後もなかなか寝つかれません。
しかし、毎夜毎夜、九州の小さな藩(架空の藩)のことで一喜一憂していていいのかと、後ろめたく思うこともありました。
「物語の世界に浸かっているより、もっとやることがあるんじゃないの?」
一冊がなかなか長いのです。

葉室さんのお話は、お住いの九州を舞台にしているものがほとんどです(私の読んだものに限ってかもしれませんが)。小さな藩とはいえ江戸屋敷があって、頻繁に往来したりしている。九州から江戸は、大阪まで船で行ってそこからは陸路だったようですが、その行程を考えるだけで、ため息が出てしまいます。

江戸時代に暮らすということは歩くこと、江戸市中もそうですが、ほかの地域から江戸への行き来は時間がかかりました。
『武士の娘』にありましたが、明治20年ごろでも、新潟県長岡から東京に行くのに、人力車やお籠(山道)を使って、高崎からは陸蒸気(汽車)があるものの、8日間の道のりだったそうです。

猪牙

そういえば、杉浦日向子の『江戸アルキ帖』は面白かった。運河を走る猪牙(チョキ)に乗ることもありますが、どこに行くにも、ひたすら歩け、歩けです。


杉浦日向子といえば、コロナ禍の間に、『東のエデン』を読みました。





4 件のコメント:

  1. 葉室麟を初めて読んだきっかけは、私もNHKの番組でした。「究極のおもてなし」と言うタイトルで、葉室さんとある女優が谷中にある茶室を訪ねて、茶道のもてなしの精神を語るといった内容でした。その中で、茶道を主軸とした小説「山月庵茶会記」について触れられていていたので早速読みましたが、葉室氏の風貌から(失礼ながら普通のおじさん)こんなに優しい気品のある小説が生み出されたのかと意外でした。その後読んだ何冊からも、春さんがハマったのが分かります。

    「武士の娘」手元に届いたのでこれから読みます。司馬遼太郎も注目していた様ですね。

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  2. reiさん
    一番最初に知ったのは、映画化された「散り椿」だったか、ラジオでたぶん木村監督の話を聴いたのだと思いますが、映画の撮り方のことだけが印象に残っていて、肝心の「散り椿」そのものについては、作家の名前も知らなかったし、まったく関心にありませんでした(笑)。そのときの印象が強すぎて、まだ『散り椿』は読んでいません。

    まだまだたくさんご著書があるので、ゆっくり楽しみます。
    宇江佐真理の髪結い伊三次の話は、一話一話はともかく、物語としては完結していないのに作家が亡くなられてしまって、先を読みたかったという気持ちでもやもやすることがあります。書き残してほしかった(笑)。それに比べると、葉室麟の物語は、一冊一冊完結していて、ストレスなく読めます(^^♪

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  3. 蛍草、私も見ていました。
    コロナ自粛は、FBでいろいろ本が紹介されて楽しめました。
    蛍草、読んでみたいです。

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  4. mmerianさん
    よくあることですが、ちょっとお話が違っていました。
    どっちがどうかなと、考え比べても思いましたが、読んでいるとドラマの人々の姿や声が浮かんできますね(笑)。
    とくに、北村有起哉の轟平九郎が印象的でした。演じていて楽しかっただろうなぁと思いました(^^♪

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