2020年11月18日水曜日

『日本その日その日』


このところ、読みかけているのに読み終えていない本が停滞していました。
眠る前の布団の中で読んでいるのですが、もうろうとして来たら別の本を開いて気分転換したりしているうち、うっかり漫画に手を伸ばすと、読んだ漫画なのにそっちに夢中になったりして、どれもおもしろいのに、なかなか最後まで行きません。


その中で、まず読み終わったのは、reiさんに教えていただいたエドワード・モースの『日本その日その日』(石川欣一訳、講談社学術文庫、2013年)でした。
東洋文庫版の『日本その日その日』(石川欣一訳、1970ー71年)全3巻は、1929年(昭和4年)に出版された完訳版の復刻版(たぶん)で、絶版になっているため古本の値段も高かったので、講談社学術文庫版にしました。
講談社学術文庫版は、訳者の石川欣一さんが、最初の出版から10年後の1939年に、『創元選書』の中の1冊として出されるために短くされたものの復刻版で、あとがきに石川さんは、削るにあたって、モースの日本人論というべきものを主に残したと書かれていました。

さて、短縮版ではありましたが、全編からモースの好奇心と、見るものすべてにそそがれている愛情に溢れたまなざしが伝わってくる、素敵な本でした。
ものだけでなく、市井の人々の心意気、力など、当時はあったのに今では失われたものが多いことに、世の習いとは言え、ちょっと淋しく感じました。


スケッチもたくさん入っていて楽しめました。
左は、いろいろな富士山の絵の傾斜角度と、実際の富士山の傾斜の比較です。モースは、富士山をより高く見せようと鋭角に描くのを、おもしろがっています。
右は、まだまだ着物姿の日本人が多い中、どうやって調達したのか、身体に合っていないダブダブの燕尾服を着て、シルクハットに埋もれそうになっている人の絵です。他にも小さすぎる燕尾服で、ズボンの前が合わず、前を開けたままで紐で結んでいる人にも触れているくだりがありました。
どんなものも好意的に見ているモースの目にも、服が身体に馴染んでいないことや、日本人が誰も帽子をかぶっていないことには、違和感を覚えたようでした。



これは、日本橋の三井呉服店(越後屋呉服店=現在の三越)の接客の様子です。反物をずらっと並べている中から客が選ぶのではなく、客の好みを聞いてから、店員が奥の蔵に反物を取りに行くのを面白がっています。


その三井呉服店を、別の角度(上の絵の奥から)見たところで、お店の一角にお茶を入れている場所があって、お客にお茶をふるまっていたそうです。店内に漂うお茶の香りが伝わってくるような絵でした。

これまで、モースと言えば住まいやものに重きを置いた本を読んでいましたが、モースの愉快な人となりを知るには、『日本その日その日』が最高でした。
原著『Japan Day by Day』(1917年)は、アメリカでは絶版になったものの、モースの遺言で東京帝国大学に寄贈されたプレートで、1936年(昭和11年)に興文社から出版されました。






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