E.T.A.ホフマン著の『くるみわり人形とねずみの王さま』(リスベート・ツヴェルガー絵、山本定祐訳、冨山房、1981年)という、児童図書があります。
『くるみわり人形とねずみの王さま』は、1816年にドイツで発表された古典で、作家のホフマンは、作曲家、音楽評論家、画家、法律家としても活躍した、多彩な人でした。
『くるみわり人形とねずみの王さま』の出版は、世界中で何度も繰り返されたと思われますが、ツヴェルガーが挿絵を描いた版は、ドイツで1979年に出版されました。
同じホフマンの物語で、渡辺茂男さんが英語から訳した『くるみわり人形』(モーリス・センダック絵、ほるぷ出版、1985年)という絵本があります。
この絵本は、パシフィック・ノースウエスト・バレー団の美術監督のケント・ストーウェルが、1981年のシアトルでのバレー公演のために、センダックに「くるみわり人形」の舞台をデザインを要請したことから、生まれた絵本です。
センダックはそのとき、舞台2幕と180種類以上の衣装のデザインをしました。
『くるみわり人形とねずみの王さま』は、文がおもな本で、挿絵の枚数はそう多くありません。
したがって序章の、子どもたちに内緒で広間にプレゼントを用意しているドロッセルマイヤーおじさんの絵も、センダックの方にあるだけです。
ドロッセルマイヤーおじさんはガラスでできたかつらをつけています。
ツヴェルガー絵の、クリスマスプレゼントでもらったくるみわり人形に、男の子のフリッツが、無理やり固くて大きなくるみを口に押し込んで、歯が欠けてしまったのを女の子のマリーが優しく抱いている場面です。
そして、センダック絵の同じ場面です。
7つの頭を持ったねずみの王さまが現れて戦いになる場面は、ツヴェルガー絵ではシュタールバウム家の広間を舞台に描かれています。
センダック絵の戦いの場面は舞台らしい、こんな感じです。
センダック絵のねずみの王さまは、7つ頭になったり、
1つ頭になったり自在です。
ツヴェルガー絵の、マリーがねずみの王さまに、甘いお菓子をよこさないとくるみわり人形をかじってしまうぞと脅かされている場面です。
そして、センダック絵の同じ場面です。
センダック絵には舞台や衣装の絵がふんだんに描かれています。
くるみわり人形は、マリーにやさしくされたので、醜い姿からもとの姿に戻り、わかいドロッセルマイヤーとして登場します。わかいドロッセルマイヤー王子に求婚され、マリーはお妃になってお城で楽しく暮らしましたとさ。なのですがすべてが空想で、わかいドロッセルマイヤーはドロッセルマイヤーおじさんの甥っ子でもあるようです。
センダック絵は終章に近い「都へ」という章で、いろいろなところを旅します。
島影から、『かいじゅうたちのいるところ』の怪獣の姿も見えています。
何故か、日本人や中国人の姿も見えます。
そして最後は、センダックらしい、くるみわり人形の大アップの絵で終わっています。
私は海外の絵本作家(挿絵家)の中で、モーリス・センダックとリスベート・ツヴェルガーが大好きです。
だから、その2人が同じ物語の挿絵を描いているのは、とても楽しいのです。
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