豆奴印の桐山染料は、華々しい宣伝をしていたことがわかっている家庭染料ですが、ガラスビンではなく、缶入りもありました。
染料は、自然染料も化学染料も、色を堅牢に定着させるため媒染を行います。
木灰、ミョウバンなどを媒染材として使いますが、鉄で媒染することもあります。例えばススキで染めてミョウバンで媒染すると黄色になりますが、鉄で媒染すると灰緑色になります。つまり鉄分が混じると、黒ずんだ色になってしまうので、鉄媒染した鍋は、次に染めるもののために、しっかり洗っておかなくてはなりません。
半世紀ほど前には、染色用のステンレスの寸胴鍋は発売されてなくて、琺瑯(ほうろう)の鍋を使っていました。しかし、ちょっとぶつけて琺瑯がはがれて鉄がのぞいてしまったら、もうその鍋は思う色を染めることができないので、使うことができませんでした。
だから、鉄の缶に直接染料を入れていたなんて、化学変化を起こすに決まっている、ちょっと信じられないことに思われます。
かつて、ビニール袋などがあったわけもなく、染料は直接入っていたようで、赤い色が残っています。
ブリキ缶の影響がどんなものであったか、あるいはまったくなかったのか、興味津々です。
缶のラベルはなかなか格調が高いもので、唐草が素敵、豆奴印もついています。
桐山染料で、ブリキ缶がどのくらいの期間使われたのか、ガラスビン以前だったのか併用されたのか、失敗だったのか成功だったのか、どうだったのでしょう? 高さは蓋まで入れて4センチです。
桐山染料は今も大阪に健在して、ソメロンという名の家庭染料を売っているようです。
戦中戦後の、必要に迫られて家庭で染めものをした時代を生き抜いて、近年は卓上ろうけつ染め器、卓上絞り染め器などなど、趣味で染色をする人たちにターゲットを合わせて、生き延びていたようです。
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