クラブ糊、わりと大きめのビンです。
糊の特長の説明文は、ラベルがはがれていて読めませんが、接着力が強く、腐敗せずと、もう一つ何か書いてあったようです。
文末の会社名は、上半分はちぎれていますが、「・・・業株式会社」だけ読めます。また、送り仮名はカタカナになっていますが、「かいしゃ」は「会社」と、新しい漢字表記になっていて、商品名が左からの横書きなので、戦後のものと思われます。
使用上ノ注意も、ラベルが破れていて、完全には読めませんがおそらく、
ナル可ク縁方カラ中ヘト御使イ下サイ。
御使用後ハ必ズ蓋ヲシテ下サイ。
だと思われます。
糊ビンの蓋は、ガラスビンにはネジを切っているものの、ブリキの蓋はかぶせるだけになっているものが多く、しっかりとは閉まりません。すぐ糊が乾燥して、縁の方のはカチカチと固まりがちです。
このビンに蓋が残っていてよかった! 蓋には大きなトランプのクラブ(クローバー)のエンボスがあります。
そして蓋の裏には、蓋がぶかぶかだったのでしっかり閉めるために、糊を使った人がはさんだと思われる厚紙が残っていました。厚紙は長谷川藤太郎商店の会社案内(?)で、表(見える側)には何故か祝日が書いてあり、裏にはローマ字表記で、会社概要が書かれています。
ちなみに長谷川藤太郎商店改め長谷川香料株式会社は明治36年(1903年)創業、香料の会社として、今も生産販売しています。
話が逸れました。
昭和7年4月24日・大阪毎日新聞 |
写真は、ブログ『どこまでも空・昭和新聞広告部』に掲載されていた、洗濯用クラブ糊の新聞広告をお借りしました。ロゴがトランプのクラブなので、文房具のクラブ糊と関係がありそうです。
さらに、検索するとヤフーオークションで「大阪天満の佐伯澱粉工業製「クラブ糊」の陶製容器」が扱かわれたと思われる文が見つかり、文房具のクラブ糊も佐伯澱粉工業製であることはほぼ間違いないことがわかりましたが、残念ながら画像を見つけることはできませんでした。
昭和8年5月18日・大阪毎日新聞 |
ブログ『どこまでも空・昭和新聞広告部』には、もう1つ、洗濯糊のクラブ糊の広告が載っていました。
『文房具屋さんドットコム』を見ると、日本では古来から膠(にかわ)や漆(うるし)などの粘着性のあるものが接着剤として使われてきましたが、江戸時代中期に澱粉質を原料とした「姫糊」 が普及してきました。
明治中期頃までは、この「姫糊」(澱粉性のもの を水に溶いて煮た糊)が多くの用途に使われていて、半固体の「姫糊」は、桶をかついで売り歩く姿もありました。当時の「姫糊」は腐りやすく買い置きができなかったため、容器(茶碗のようなもの)を持って使う分だけを買ったといいます。
そこで、腐らない半固体糊の開発を行なったのが、東京の木内弥吉氏のヤマト糊と、大阪の足立市兵衛氏の不易糊でした。
不易糊は1896年(明治29年)、ヤマト糊は1899年(明治32年)に、それぞれ腐らない糊を発売していますが、当時はとても高価なものでした。そこで、一般家庭では、自家製の糊が昭和まで使われたものと思われます。
洗濯糊は、かつては着物を着ていたので必需品でした。高級着物には布海苔(ふのり)が使われていましたが、昔話の「舌切り雀」のおばあさんのように、家庭ではゆかたの洗い張りなどに、やはりご飯をすりつぶして水で溶いたそっくいが使われました。
私が小さいころ、祖母は小麦粉を水で溶いて煮てつくった糊で障子を張り替え、紙や布を貼り合わせるときは板の上でご飯粒を練った「そっくい」を使っていましたが、洗い張りをするとき、どんな洗濯糊を使っていたかは、残念ながらまったく記憶にありません。
毎度、どれだけ糊の商品があったんだと驚きます。そしてほとんど情報が残っていないことも。
返信削除今の生活で糊を使うことは滅多にありません。セロテープやメンディングテープがあるし、封書も両面テープが付いていたりします。洗濯糊は一度も使ったことありません(苦笑)。
hiyocoさん
返信削除昔は学校で、会社で、家庭で、どんだけ糊が使われたんでしょうね。袋貼りの内職などもありましたね。そして、糊をつくっていた人もいっぱいいて、みんな生きるのに必死でした。
我が家では今でも、チューブ入りのヤマト糊と、新聞の切り抜きを貼るスティック糊を常備しています。チューブ糊は便利、あまり手は汚れないし、固まらないし。チューブ糊は少なくなったので予備を買ってから早1年、なかなか使い切りません(笑)。
私も洗濯糊は使ったことがありません。柔軟剤も漂白剤も1回も使ったことがないけれど、世間では柔軟剤はいっぱい使われているのかな?そのくらいの頻度で洗濯糊も使われていたのでしょうね。高田郁の『あきない正傳金と銀』の何にでも糊を強くつけ過ぎるお梅さんというのが出てきますが、糊付けは日常のことだったのでしょう。私の母方の祖母も、祖父のふんどしにまで糊付けしてアイロンしていたそうです(笑)。