2011年7月18日月曜日
インドの鋳造
インドの鋳物の象と、象に乗る人です。
象の足の先が輪になっていて、そこに鉄の棒(たぶん太い釘を利用)を通してあって、その鉄の棒の両端に車輪がついています。
鋳物は土で型をつくり、その中に高温で溶かした金属を流し込みます。
そのため、湯口(金属を流しこむ口)が必要です。湯口から、つくりたいものに到達するまでの湯道(金属が流れていくところ)は、型を壊して取り出したあとで切り落としますので、たいていは裏や底など目立たないところにつくります。
例えば、タイのアヘンの分銅を見てみます。
裏返すと、底の真ん中に、かすかですが丸が見えます。それが湯道を切り落とした跡です。
ところが、インドの象の足の先は、輪がついている複雑な形をしています。お腹のあたりを見ても、湯道を切ったらしい跡が見えません。
考えられるのは、足の先についた輪は、別につくって後づけしたかもしれないということです。でも、そうだとすると、小さな輪をいちいちつくって、蝋づけするのが大変なのですが。
全体にきれいな仕上がりですが、象の頭の上のあたりだけ、修正した跡のように、でこぼこしているのが見えます。まさか頭の上から流しこむという、大胆なことをしたでしょうか?
ちょっと考えられません。
車輪がまた、なんだかおもしろいのです。厚みがあれば、もっときれいに立つのですが、コインより薄いくらいなので、よたよたと左右に倒れかかります。
車輪は、平らに敷いた砂にハンコのような型で形をつけ、そこに金属を流し込んでつくってあります。
たぶん、鋳物の村には、車輪だけを来る日も来る日もつくり続けている家族がいるのでしょう。材料費を節約するためか、薄く薄くつくってあります。
真鍮(黄銅)は融点が1000度前後、青銅は1200度前後です。
鋳造するときは、金属をしっかり溶かすことが必要ですが、流しこむ時間に合わせて、粘土でつくった型を熱しておかないと、型が壊れたり、型の中に流れ込んだ金属があっという間に冷えて、途中で固まり、その先には金属が流れなくなります。
砂型に上から溶けた金属を流すのは、目で確認できるぶん、楽かもしれません。でも、少量ずつ、熱い温度を保ちながらきれいに流していくのは、やはりたいへんそうです。
型が少しでも傾いていると、厚みが偏ります。強く注げば、型が歪みます。注ぐのが少なすぎればいい形にならないし、多ければ流れ出してしまいます。
それにしても、後ろがぺったり平らなこの人は、人ではなくて神様でしょうか?
子どものおもちゃだったら、需要もそこそこでしょうから、車輪だけをつくる家族が食べていけるとは、なかなか思えません。神様だったら、需要は少なくないでしょう。
横浜のトルクメンに、大小置いてあったなかから、一番小さいのだけ買ってきたのではなかったかと記憶していますが、ずいぶん前のことですから、違ったかもしれません。
大きいのを買わなかったのは、精巧にできすぎていたか、あるいは高かったからだと思います。
たぶん、これは1000円ほどのものだったでしょうか。
小さくてちゃちなものですが、鋳造的に見ると、象の向こうにインドの村が見えてくるような気がします。
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