みんなでばらばらに見ていると、
「えらい安くて、好きそうな籠があるよ」
と、珍しく夫が伝えに来てくれました。
ついて行ってみて、びっくり。1981年にシンガポールの雑貨屋で買った籠とまったく同じ籠がありました。
持っている籠と同じ籠があっても不思議はないのですが、買ってから30年も経って、しかも日本で見つけるなんて、そんな奇遇はめったにありません。
「この籠は、私に逢いにはるばる来たんだ」
買うっきゃないと思いました。
「よかったら、その籠に入っていた毛糸も持ってってくれる?」
とがんこやさん。
喜んでいただきました。
「おんなじところから出たオウムはいらない?」
昔、上海の工芸店にいろいろ並んでいた、動物の蓋ものです。
「・・・・」
「今もつくられているけど、ずっと仕事が雑になっているよ」
とがんこやさん。
「まぁ、もらおうか」
と値札に書いてあった300円を払おうとしたら、
「それもおまけ」
と、これもいただいてしまいました。
蓋は、顔の部分で曲げて編んであります。それに薄い竹を一枚一枚差し込んでいて、よく見ると確かに手が込んでいます。
蓋を裏返して見ると、羽の裏に緑色が残っていました。
売っていた当時は、原色の緑も生々しく、てかてかに光っていたはずです。
さて、手つき籠は、まるで双子のようでした。左が以前からあるものです。
三段になっていますが、一段だけ透かし模様があるところまでそっくりです。
長い間、シンガポールに移住した中国系の人がつくったのだとばかり思っていました。当時、バンコクにも、中国籠がつくれる方が三名ご存命でした。
しかし、こうして並べて見ると、中華人民共和国製のものが、シンガポールに輸出されて売られていたという可能性の方が高そうに思えます。今回見つけた籠に消えかかったラベルが残っていて、People's Republicの文字が見えます。
特定の地域とか、あるいは特定の人民公社の工芸所で同じものをつくっていたと思われますが、こう似ていると、もしかして同じ人がつくったのかもしれません。
それにしても、縁巻きがきれいにできている、美しい仕上げです。
同じような籠のミニチュアを持っています。
ただ、持ち手のところに輪っかがありますから、近いけれど、別の地域のものでしょう。
このような手つき籠は、菓籠と呼ばれ、お正月や結婚式などにお菓子を入れて配ったり行列したりするのに使われてきました。
しかし、近年、香港のお菓子屋さんが、お菓子の引き換えチケットを考案してから、贈る方も贈られる方もその方が便利だということで、慣習が廃れ、それにともなって籠も打ち捨てられているそうです。
寂しいことです。
ちょっと他のお弁当箱に脇に寄ってもらって、二つ、仲良く並びました。
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