2012年6月13日水曜日

姉さま人形+トウモロコシ人形

福岡県にお住まいの、人生の先輩昭ちゃんが、素敵な姉さま人形をUPされています。
お連れ合いと、お連れ合いの母上が、その昔つくられたものだそうで、トウモロコシの皮でできています。
私が幼い時期を過ごした岡山県南部には、トウモロコシの姉さま人形も、ノカンゾウのお嫁さん人形もありません。誰かにつくってもらったり、自分でつくったりしたことはもちろん、目にしたこともありませんでした。
家庭菜園にも、サトウキビはおやつとして植えていましたが、トウモロコシはなかったように覚えています。

でも祖母か他の人に、姉さま人形をつくってもらったことも、あるような気がします。
もしつくってもらったとしたら、材料は和紙の反故紙ではなかったかと思います。
また、薄皮をかぶったネギ坊主も姉さま人形に見立てて遊びましたが、それがその地域に一般的な遊びというわけではありませんでした。


これは秋田県横手の中山人形、樋渡義一さん(故人)の姉さまです。
学生時代に、友人二人とお家を訪問したとき、数ある土人形の中から、これも選んだというのは、小さいころに似た姉さま人形を持って遊んだ記憶があって、懐かしかったからだと思います。


これに似た、顔が土でできていて、色紙の髪と衣装を着けた姉さま人形は、子どものころ知っていました。

しかし、この横手の姉さまには、なぜ串がついているのでしょう?
『THE WORLD OF TOYS』(おもちゃの世界、 HAMLYN、ロンドン、1992年) を読んで初めて知りました。 雪に突き立てて遊んだのだそうです。
素晴らしい!


その『THE WORLD OF TOYS』に載っていた、大正時代の姉さまです。
しわをつけた和紙でつくってあります。


ところで、トウモロコシ人形は、ボリビアのサンタクルスでつくられた、小さいものを一つ持っています。


元同僚のKさんが、イベントなどで販売するためにボリビアから買いつけてきたものの一つで、身長7センチ、全体にシンプルですが、Kさんにそっくりな長い髪が素敵です。


ボリビア娘は、いつもメキシコのヤシの葉のカウボーイと一緒に飾っていましたが、カウボーイは引っ越しを重ねているあいだに、行方不明になってしまいました。
写真は、『FOLK ART OF THE AMERICAS』 (アメリカ各地の郷土芸術、HARRY N. ABRAMS, INC., ニューヨーク、1981年)に載っていたもの、私の持っていたのとは色違いのカウボーイです。


トウモロコシ人形をひっくり返してみると、皮を重ねて束ねてつくってあるのが解ります。手の中心には針金が見えています。

トウモロコシ人形は、南米だけでなくチェコ、スロバキア、オーストリアなどヨーロッパ諸国でもつくられていいます。そして、わりとよく似ているのです。

トウモロコシは南米原産で、メキシコの地層調査などから、5000年以上前から食べられていたことがわかっています。
そして、ヨーロッパに最初にもたらされたのは16世紀ですが、穀物として広く食べられるようになったのは、ジャガイモよりさらに遅れる17世紀です。

当時、慢性的な食糧不足を、聖書に記されていないからと敬遠されていたジャガイモを食べることでやっとしのいだヨーロッパは、やがて食糧を大きくジャガイモに依存するようになります。
ところが、1840年代半ばに、葉枯れ病でジャガイモは壊滅的な被害を受け、アイルランドをはじめとする、ヨーロッパ諸国に大飢饉をもたらしました。
このときの飢饉で、アイルランドでは100万人が餓死し、100万人が外国へとのがれようとしましたが、その大半が船上で、弱っていた命をチフスなどで落としました。
以後、ジャガイモの単一栽培は見直され、これも聖書にないトウモロコシも、食べらるようになりました(『世界を変えた植物』、B.S.ドッジ著、八坂書房、1988年)。

このことを見ると、トウモロコシ人形がトウモロコシと時を同じくしてヨーロッパに伝えられたと考えるのは、無理があるような気がします。
それに、ボリビアのトウモロコシ人形も、服装はちょっとヨーロッパ的です。もしかしたら、人形は逆方向、ヨーロッパでつくられたものが南米に紹介されたのかもしれません。


というのも、ヨーロッパには、トウモロコシが入って来る前から、白樺の樹皮を使って、似たような人形がつくられていました。
イラストは19世紀のスウェーデンの白樺細工の人形です(『THE WORLD OF TOYS』 )。


薪割りするための薪を運んできた少女は、『FOLK ART OF THE AMERICAS』に載っていた古いトウモロコシ人形で、合衆国テネシー州の品評会に出されたミニチュアです。
当時、農地を求めて、ヨーロッパ各地から新大陸に渡った人々が、開拓者として森を切り開いて木の皮で葺いた小屋を建てて暮らしていましたが、その生活を人形に写したものです。

これを見ると、ヨーロッパ人がアメリカ大陸にこのスタイルのトウモロコシ人形を持ち込んだ可能性が、さらに高まります。


しかし、このメキシコのトウモロコシ人形を見ると、別の考えが湧いてきます。
ヨーロッパ文化と出逢って、姿形を変えたとしても、トウモロコシ人形が古くからアメリカ大陸の人々につくられ続けてきたと、確信できるような素敵な人形です(『THE WORLD OF TOYS』)。
きっとお母さんやお父さんの手づくりで、子どもたちにおんぶされたり,抱っこされたりしていたのでしょう。


背景に置いたのは、ボリビアの布絵です。
ボリビアでは、お土産用に、いろいろな布絵(アップリケと刺繍)の壁かけポケットがつくられていますが、これはそれを解いて、額装したものです。
小さい人形は、グァテマラのものです。バスケットはやはり南米のものですが、どこの国ものか忘れました。メキシコっぽいでしょうか?

大地の歌が聞こえてきそうです。


4 件のコメント:

  1. 春さんやっとたどり着きました。
    可愛い人形たちですね、大事そうに遊んでいる様子が目に見えるようです。
    昔ものを大事に使う時代がありましたね。

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  2. わっ昭ちゃん
    よかったです。おめでとう。
    昭ちゃんちの姉さまがいい例ですが、愛しむというか、形になったものとの向き合い方が、もっといい時代がありましたね。
    でも、またそんな時代が来るし、来させなくてはなりませんね。
    今日ホトトギスを聞きました。この近くのホトトギスは「てっぺんかけたか」は知らないようで、どれも「とっきょきょかきょく」と鳴いています。

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  3. ホトトギスは鳴きながら飛ぶので声は聞きますが姿は難しいですね。
    鳴き声にも地域差があるのでしょうね(笑い)
    tL

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  4. 昭ちゃん
    私も野鳥は弱くって、わかる方が少しです。
    もうちょっとじっとしていてくれると、助かるのですが、あちらは助からないですね。
    家の猫にやられてしまいます。

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