2012年6月25日月曜日
ベドウィンの敷物
一匹、お腹が痒い犬がいます。
毎朝、寝室に敷いてある、ベドウィンの敷物に、激しくお腹をこすりつけます。お腹の毛がすり減るくらいならよいのですが、一度皮膚が破れて傷になり、そこからばい菌が入りました。
というわけで、残念ながら敷物を片づけてしまいました。
干して、きれいに犬猫の毛を取り除いて、畳んでしまいました。
この敷物を見ると、私の民具収集の歴史は、言いかえれば重いものやかさばるものの運搬の歴史だったなぁと、しみじみ思います。
それは、ヨルダンのアンマンから陸路でパレスチナのエルサレムに入ったときの帰り道でした。再び国境を越え、アンマン空港に近いホテルに着いて、まだ日暮れまでには時間があったので、町の中心部にバスで出かけてみました。
みんなが公園代わりにしているローマ時代の円形闘技場の一番高いところに登ってみたり、あてどなく歩いて、仕事からの解放感を楽しみました。
アンマンの街は小さいけれど、落ち着いています。
パレスチナでは見られないことに、女性はほとんどすっぽりとニカーブ(ベール)をかぶっていますが、旦那さんと手をつないで、華やかな声でおしゃべりしながら歩いていて、笑い声がニカーブの中から響いたりすると、その艶めかしさに、どきっとさせられました。
のどが乾いたら、コーヒースタンドがあります。
椅子もなくて、道端での立ち飲みだし、客は男性ばかりでしたが、喉の乾きには勝てず近づいて注文しました。すると、コーヒーを飲んでいた、背の高い男性が話しかけてきました。
彼は内戦を逃れてヨルダンまで来た、スーダンの難民で、アンマンで働いているとのこと、逃げてきたときのことなどしばし話し込みました。そして、私より先に帰るとき、なんと私のコーヒー代も払って行ってくれました。
素晴らしい!
スーダン人にヨルダンでご馳走してもらうなんて、めったにあることではありません。
さて、コーヒーを飲んで元気が出たら、通りの反対方向へと歩いてみます。
しばらく行くと、敷物屋さんがありました。一階には新しい敷物がきれいに並べてあり、二階には古い敷物が積み上げてありました。
二階で、根気よくひっくり返して、気に入った敷物を二枚見つけました。お祈り用の短い敷物ではなく、ベドウィンがテントの中に暖房のために敷く、自分で織った、幅約90センチ、長さ約250センチの敷物です。 一枚は経糸(たていと)が麻で、緯糸(よこいと)が手紡ぎの羊毛を草木染めにしたもの(写真上)で、もう一枚は経糸緯糸ともに羊毛でできていました。
こんなとき、重いからあきらめるとか、かさばるからあきらめるという選択肢は、私にはありません。すでに大きすぎるほどの荷物を持っているというのに、迷わず買ってしまいました。
そのあとは、もちろん大変でした。重い敷物に引きずられるようにして、家にたどりついたときは、もうへとへとでした。
写真は、長いので半分に折った敷物です。
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