2012年8月16日木曜日

サロン用のプリント布地

しばらく前まで、東南アジアに行くなら、サロン(腰巻)は必需品でした。
今はどうでしょう?池や川で水浴びする機会なんて、少なくなっているかもしれませんが、サロンがあると、やはりなにかと便利です。
昨年の夏、姪の娘のみおちゃんがラオスに行くとき、サロンを一枚あげました。行ってみるまでは、役に立つかどうかわからなかったと思いますが、向こうではずいぶん役に立ったようでした。

サロン用布地は、もともとはバティク(蝋染め)でつくられていましたが、代用のプリントのものがつくられるようになって一気に量販品になり、東南アジア各地の庶民の普段着として、広くいきわたって定着しました。
あるとき、フィリピンのネグロス島の女性たちとタイ東北部に向かっていたのですが、タイ・カンボジア国境の町の市場で、インドネシア製のサロン地が安い安いと、彼女たちがお土産に買いあさっているのを見たときは、笑ってしまいました。
その布は、どこ経由でタイ・カンボジア国境まで来たのか、同じ布を、東南アジア地域のどれだけたくさんの人たちが利用しているのかと思ったら、なんだか愉快になったのです。
もちろん、庶民だけでなくお金持ちも、水浴び用に一枚や二枚は持っているはずです。

サロン地はしっかりした木綿で、約100センチ幅の布を、あらかじめ170センチ前後に切って売っています。一着分が、300円から500円程度でしょうか。
市場で布を買って、やはり市場の中にある仕立て屋さんに持って行けば、待っている間に、ちゃっちゃと端と端を縫い合わせて、サロンに仕立ててくれます。


インドネシアのスマトラ島の内陸部、たぶんブキティンギだったと思いますが、宿の前でくつろいでいたら、若い男性がやってきて、大きな包みを広げました。
中にはサロン模様のプリント地でつくったたくさんのズボンが入っていて、聞けば自分で縫って売っているとのことでした。

模様合わせがとっても上手で、縫製もしっかりしていて素敵なズボンです。
しかし、男性用につくったのか大きいサイズのものが多くて、小さいサイズのものは一つか二つあるだけ、その中に気に入る色と柄のものはありませんでした。

それよりなにより、その男性がはいているズボンが、一番素敵に見えました。


「あなたがはいているのがいい。サイズもちょうどよさそうだし」
「えっ?あはは」
最初は笑って取り合わなかったおにいさんですが、とうとう別の、確かピンクのズボンとはき替えて、自分のはいていたのを譲ってくれました。

これがそのズボンです。


前は扇が散っていて、後ろはボーダー柄を活かしています。 


以来、二十余年。膝がちょっと伸びていますが、今でも大切に着ています。



気に入った模様のサロン用の布を見つけたときは、二枚買っておこうと思うのですが、めったに同じ模様を二枚見つけることができないほど、サロン地はバラエティーに富んでいます。

これは二枚見つけて、自分で仕立てたものです。 インドのパンジャブ風チュニック、いわゆるパンジャブスーツ(パジャマの語源)に仕立てました。


スマトラ島のおにいさんほど模様合わせはうまくいっていませんが、惜しげもなく着られて、とくに熱帯では重宝しました。


ほかにも、ブラウスとスカート、カンボジア風の巻きスカートと小さな上着など、結構いろいろつくって楽しみました。


ボーダーをどう活かすか。
それを考えている時間が、とても楽しいのです。


サロン地一着分を「輪」にするとサロンになりますが、二枚合せて、耳(長い方)を縫い合わせると、カンボジアの寝袋になります。この寝袋は、プノンペンで暮らすまで知らなかったことでした。
あらかじめ縫ってあって、寝袋用にと売っているものもあります。


どこにでも転がって、その寝袋を首まですっぽりかぶって寝ると、寝心地満点、本当によく考えられているものです。

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