2012年9月17日月曜日

ラタンの椅子

遭難して無人島にいたジョン万次郎たちがアメリカの捕鯨帆船に助けられ、初めて船内の椅子の座らされたとき、足が床に届かず、ぶらぶらして落ち着かず、拷問に違いないと思ったそうです。

確かに、アジアやアフリカでは、椅子で権力を象徴しようと考えた一部の人の玉座を除いて、かつては床に座るか、とっても背の低い椅子が愛用されてきました。

小さいころ、薪でお風呂を温めるのは子どもの役割でしたが、 かまどの前に置いた低い椅子に座って火の番をするのは、とくに寒い時期には好きな仕事でした。
二方を壁に囲まれ、前には火が燃えている暖かい場所で、揺れる火を見つめながら、ぼんやり考えごとをする。今思えば、至福の時間でした。

タイやカンボジアの市場の中や、道端の食堂では、いまでは普通の高さの椅子が当たり前ですが、食べ物によっては、必ず低い椅子の座って食べるもの(たとえば、タイのカノム・チン)もあります。
遠くから椅子を見て料理がわかるなんて、なんだかおもしろいことです。


山岳民族、アカ人の椅子(スツール)です。
こんな感じのラタンの椅子は、インド、タイなどにいろいろあります。
床につくところまでラタンや草を巻いてあるものがほとんどですが、長持ちしません。家にもいくつかありましたが、床につく部分が切れて、解けて、始末に負えなくなってしまうからです。

でも、座面だけラタンを編んだこの椅子は、擦り切れることもなく、ずいぶん長持ちしています。


上の輪と下の輪をつないでいる材料は、表から見ると、ラタンか竹かちょっとわかりにくいのですが、


裏から見ると、竹に見えます。

東南アジアには、肉厚の竹、中が空洞になっていない竹もありますが、中が空洞になったラタンは、確かなかったような気がします。


もちろん、足の、輪になった部分はラタンです。


椅子の座には、このようにラタンを張ります(『Peoples of the Golden Triangle』より)。


それにしても、網代編みは、平編みに比べてしっかりと丈夫に締まります。竹を壁材として編むときも網代編みです。

織物の場合、平織りに対して、網代織りではなく綾織りと言いますが、やはり糸がしっかり締まり、密になるので、浴衣など夏の涼しさを求める布には風を通す平織りの布を、冬のコートなどには目の詰んだツイードなど、綾織りの布を使います。



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