私はその昔、郷土玩具を集めていたことがありますが、今は集めていません。でも、郷土玩具を含めたおもちゃは私の永遠の友でもあります。
骨董市で、土人形などよく見かけますが、心は動かされず通り過ぎるだけです。ところが、知り合いの骨董屋さんが郷土玩具を持っているとなると、ちょっと話が違ってきます。玩具談義をするのもおもしろかったりして、ついつい見てしまいます。
先の骨董市で、がんこさんが持っていた、熊乗り金太郎です。埼玉県鴻巣の、「赤もの」と呼ばれる、練りものです。
かつて中山道の宿場町だった鴻巣は、桐下駄の産地でもあり、そのおがくずを利用した練りものが、盛んにつくられました。材料はふんだんにあり、近くに江戸という一大消費地を控え、土人形より軽くて運びやすい練りものは売れに売れたそうでした。
「これは、とっても状態がいい方だよ」
と、がんこさん。同感です。ネズミにかじられただけです。
おがくずに正麩糊を混ぜてつくるので練りものはおいしいらしく、ネズミにかじられたり、木喰い虫に中からぼろぼろにされてしまって形をとどめなくなったりしてしまうのです。
今だったら、防腐剤を混ぜるという手もあるかもしれませんが、なにせ昔のものです。
江戸から明治にかけて、疱瘡はとても怖い病気でした。子どもが疱瘡にかかると、親や近所の人たち総出で、枕元を赤いもので埋め尽くして、疱瘡の治癒を祈りました。
そんな、赤ものの代表格の一つが金太郎でした。
前姿もいいのですが、後ろ姿は赤いお供え餅のようで、とくにユーモラスです。
『日本郷土玩具事典』(西沢笛畝著、岩崎美術社、1964年)に載っていた金太郎です。お顔が違いますが、いったいどちらの方が古いんでしょう?それとも、昔は製作元が何軒もあったというので、別の家でつくられたものでしょうか?
以前手に入れた、現在もつくられている金太郎と比べてみました。
「あっ、月代がない!」
月代のある子どもなんて、当節どこにもいませんものね。
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