2014年3月28日金曜日

何でもやってみよう

先週、姪の娘のみおちゃんが、我が家の近くのUさんの家で一週間、農業研修をさせていただきました。
初めての畑仕事と自炊生活、おいしい野菜、いろいろ学ぶところがあったようですが、もっとも印象深かったのは、Uさんの農場の近くに住むSさんご夫婦の生き方だったようです。

Sさん夫婦はそれぞれ別に、「卵の会(現暮しのじっけん室)」のメンバーだったUさんのもとに研修生として八郷に来て、そこで出会って結婚して、今では三人の子どもを育てながら農業をしています。
「味噌だけじゃなくて、お醤油も、納豆も、うどんも自分でつくって、お酒もビールも自分でつくっちゃうんだよ。おじちゃん、おばちゃんの生活見てて、これが自給生活かなぁって考えていたけれど、全然程度が違うよ」
「そうだよ。俺たちは甘っちょろく、都会生活を田舎に持ち込んでいるだけなんだよ」
「ねえねえ、Sさんたち家も建てはじめたんだって。エネルギーも自分でつくるんだって」

みおちゃんが我が家に帰って来た朝、私たちも東京に行く用事があったので、一緒に行ったのですが、みおちゃんの興奮はいつまでも続いていました。
「肉は、五人家族なのに月に500グラムの豚肉だけだって」
「それってみわさんの肉?」
みわさんは、飼料を選んで、薬などいっさい使わずに少数の豚を育てている人です。
「そう」
このあたりで農業をやっている人たちは、決して食費は安くすませればいいとは思っていないので、食べるからには安心できるものを食べているのです。

研修の最後の夜、みおちゃんはUさんの出小屋で孤独な夜を過ごさず、Sさんの家に泊めてもらいました。その日は昼間の仕事で疲れていて、六歳、四歳、ゼロ歳児と過ごすのに耐えられるかなあと思いながら行ったそうです。
「なんて言ったらいいのかしら。すっごい疲れていたのに子どもたちにパワーをもらっちゃって、どんどん元気になったの。忙しいのに、おむつだって布おむつだよ。それに三人目はお風呂場で自分で産んじゃったんだって」
「すごいね」
「もし子どもが小学校へ行きたがらなかったら、やらないでいいと思っているんだって。それがね、悲壮感なんてないのよ。二人ともめっちゃ明るくて楽しそうなの」


さて、今週、暮しのじっけん室の面々が遊びにきました。
彼らが育てた豚は、野菜とともにおいしいお鍋になりました。出汁は、先日Uさんにいただいたのガラでとりました。
暮しのじっけん室は、みおちゃんがお世話になったUさんやSさんの近くにあり、いまは四人のメンバーと、そろそろ一年の研修期間を終えて出て行く一人の研修員、そして一人の短期(一ヶ月)滞在者の六人が共同生活をしています。

「みおちゃんから聞いたけど、Sさんとこ、お風呂場で赤ちゃん産んだんだって?」
「あれっ、お風呂場で産んだのYくんとこだよ。そうかSくんちもそうだったかな」
とIさん。このあたりには、自分で家を建てている人なんていっぱいいますが、子どもを一人で産んでしまうことも、そう驚くこともないようでした。

暮しのじっけん室のメンバーの、一番新しいHさんとは初対面でした。
「彼はおもしろい経歴を持っているのよ」
とKさん。
「山を歩いていたの」
山歩きのどこがおもしろい経歴なのか聞いてみると、Hさんはカナダからアメリカを通って、メキシコまで、尾根を歩いて縦断、しかも三回も歩いたのだそうです。高いところは4000メートルものところを、全部で一万キロ以上歩いたのです。
「食べ物はどうしたの?」
「あまり担げないから、地図を見て一週間か長くても二週間に一度山を下りて調達しました」
「そうか、アフリカ大陸だと、食料を売っているところがないから、そうはいかないね」
「そう、アメリカだからできたんです。それで、そのときのことがあって、食料も自分でつくろうと、ここ(暮しのじっけん室)へ来ました」

Kさんの話だと、Hさんはセーターを自分で編むそうです。しかも毛糸を買って編むのではなく、原毛を手に入れ、紡いで糸をつくって編むのだそうです。
「紡ぐのって時間がかかるでしょう。昼間、目いっぱい農作業して夜紡ぐの?」
「そうです」
「彼はなんかかんか夜なべ仕事をしているわね」
と、やはりKさん。
暮しのじっけん室は、農業だけではなく、もっと幅広くいろいろやってみたいと、映画上映会、コンサート、お祭りなどいろいろ試みていますが、Iさん、Hさんは最近籠づくりもはじめました。

S夫婦もHさんたちも三十そこそこです。
今の世は、自分の力では生きられないように生きられないように仕向けられていて、みんなそれに甘んじて(喜んで?)いるのですが、突然変異というべきか、こんな人たちに出会うと、人間も捨てたものじゃないなと思います。



2 件のコメント:

  1. 本当の意味での「生きること」をしていらっしゃる方ですね。私たちの暮らし方生き方は、一見丁寧に見えてもそれはまがい物である気がしました。

    ご主人の「地球を生きる」何度も読み返しています。先日、車点検の待ち時間に夫が読んだ雑誌にご主人が掲載されていたそうです。
    (どこかで見た家だな)と思ったら春さんの御自宅だったそうです。

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  2. hattoさん
    いくら情報が手に入りやすい時代だからと言って、本を片手に、あるいはネットを見ながら夫婦だけで子どもを産んじゃうなんて、私など考えてみたこともなかったことを、平気で楽しくやっている人がいることに驚いています。原発反対も、政府が悪いとデモを掛けるのではなく、自分で電気を作っちゃおうというのですから、すごいですね。自分の手に自分の生存をしっかり握っています。
    夫の本は重たいでしょう(笑)。読んでいただいてありがとうございます。

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