マライラさんの絵は、不気味なようでなんだか心が和む、不思議な絵です。
そのとき、目についたのは素敵な額縁でした。
マライラさんにたずねると、アートフレイミングというお店でつくってもらったとのこと、私たち家族が住んでいた家から歩いて行ける距離だったこともあり、それからなにかといえばアートフレイミングに足が向くようになりました。
タイの額装は、絵を細い釘で留め、その上から水貼りテープを貼ってあります。
一つの額縁をいろいろな絵に使いまわししないなら、とても具合のよいものです。この方法だと、大きな重い絵にも、細い額縁を安心して使うこともできます。
当時、気に入った絵はがきや布を見つけると、すぐにアートフレイミングに持ち込みました。こんなものまでという端布などもあったのですが、いつも素敵に仕上がってきました。
細い額縁もあれば、
太い額縁もありました。
中でも好きだったのが、木の枠に半分に割った細い竹を貼りつけた額縁でした。
素朴な絵には、よく似合いました。
竹の上に金色を塗ってもらうこともできました。金色はタイの香りがします。
帰国してからも、ためておいた絵や布を持って行って、アートフレイミングのお世話になっていましたが、1980年代の半ばごろだったか、訪ねるとお店がなくなっていました。
タイが大きく変貌した時代ですから、どこかもっと都心に引っ越したのか、あるいはやめてしまったのか、知っていそうな友人にも聞いたのですが、誰も知りませんでした。
その後しばらく、額装したいものがあるときはバンコクの他のお店を試してみました。しかし、厚みのバランスが悪かったり、裏が汚なかったり、仕事が雑だったりと、満足のできるところは見つかりませんでした。
これは友人からもらったヴェトナムの帯ですが、帯の刺繍が盛り上がっているため、布の周りを高くしています。
周りを、紙でなくタイシルクでつくってもらえるのも、嬉しいことでした。
この額には、もともとガラスが入っていましたが、倉庫に保管していたとき、割れて、そのままになっています。
今は額縁をつくる機械もよくなり、部材もコンピュータで自由な形ができるようになったのか、バラエティーに富んだ額縁が、ホームセンターなどで簡単に手に入るようになりました。しかも値段も手ごろになったので、全然不自由しなくなりました。
しかしときおり、家具屋さんでもあったアートフレイミングの扉を開けたときのときめきと、おやじさんの顔を懐かしく思い出すことがあります。
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