2014年5月21日水曜日

クロマー

カンボジアには、クロマーと呼ばれる浴用布があります。幅は、50-60センチ、長さは150センチくらい、平織りの、手ぬぐいを大きくしたようなものです。


ポル・ポトがいつも肩に掛けていたのを、覚えていらっしゃる方も多いかと思います。


クロマーはたくさん持っていたはずなのに、戸棚の中をざっと見渡したところ、絹のクロマーしか見つかりませんでした。
黒と赤のは餞別にいただいたもの、桃色と緑のは骨董市場で買った古いものです。古いものは手紡ぎの糸を使っているので柔らかく、現代のものは中国から輸入した機械紡ぎの糸を使っているので、固く撚りがかかっていて、いつまでも張りがあります。
絹のクロマーはおしゃれ用、木綿でできているものが日常使いのものです。

木綿のクロマーはたぶん、どんな田舎の市場に行っても、売っていないところはないのではないかと思います。
クロマーは手ぬぐいと同じ機能だけではありません。両端を縛ると、赤ちゃんのハンモックになり、肩から掛ければおんぶ紐になり、お昼寝の肌掛けにもなります。
男性が池や井戸端など、戸外で水浴びする時は、腰に巻いてそのまま水を掛け、身体を洗うことができます。また家で、腰にはクロマーを巻いただけの姿、上半身裸でくつろいだりします。
先日、我が家に泊っていたタイのサナンさんも、お風呂にはタオルではなく浴用布を持って行っていました。
もっとも、タイ語ではクロマーではなく、パカマーと言います。
 

この写真の、クロマーで顔をぐるぐる巻きにして、顔が見えていないのが私です。

雨季と乾季ではメコン川やサップ川の水位は8メートルも違います。冠水面積は何倍になるんだったかしら、忘れましたがそこいらじゅう水浸しになり、川沿いの村への交通は船しかなくなります。

屋根もついていない船に八時間も乗っているには、クロマーなしではとうていやっていられるものではありません。
じっとしているので腰も脚もがくがくですが、クロマーで暑さがしのげます。


増水を見越して建てた家の人たちの、移動手段は船しかありません。
クロマーの、この巻き方をしているのは女性、遠くからでもわかります。
 

小魚が移動してくる季節、漁業権を持たない人でも、漁場の近くに住んでいない人でも、誰でも魚を捕ることができます。
一年に一度だけの、自家用のプラホック(魚醤)をつくる時期です。人々は一家総出で、泊りがけで、水辺に集まります。
子どもも一人前の労働力、クロマーを小粋にかぶっています。


男も女も、誰もが頭にクロマーを巻いています。帽子をかぶっても巻いています。
この二枚、プラホックづくりの写真は、元同僚のSさんが写したものです。


ラタンを揃えている、ラタン屋さんで働く娘さん。


村のご夫婦は、おそろいのクロマーを身につけています。


牛の世話をしている、プノンペン近郊の村の女性。

カンボジアで、クロマーなしの農村生活は考えられないものです。



2 件のコメント:

  1. karat2014年5月21日 8:51

    おはようございます。
    へー!、知らなかったです。
    全部貴重な写真ですね。特に最後の写真は素敵。
     ブログを楽しみに拝見させていただいていいますが、知らないことばかりたくさん出てきます。
     「籠玉」もへぇー!でしたが、それを建てるエネルギーの方にも驚きました。飾るのも大変なんですね。

    返信削除
  2. karatさん
    ありがとうございました。片づけをしていたら写真が出てきたりしたので(そんなんばっかり、笑)、UPしました。カンボジア人は帽子も好きなんですよ。お隣のタイの人たちは(とくに都会人は)全く帽子をかぶらないというのに、カンボジア人はみんなかぶっています。
    ラタン屋の女の子の写真あたりからデジカメです。発売当時はすぐ電池が切れて、村などに行くとあまり写真も撮れませんでしたが、フィルムと比べて管理は抜群に楽ですね。フィルム代もかからないし、写真をメモのように使えるようになりました。十年ちょっとで様変わりしましたね。
    籠玉、たいへんでした。まだ後遺症でぶらぶらしていたりして(笑)。

    返信削除