2014年10月21日火曜日

生木でつくる椅子

古い仲間のKくんが遊びに来てくれました。
Kくんは岐阜の学校で、「暮しに生かす木工」を教えています。
Kくんの仕事は、facebookで見て知っていたのですが、「生木でつくる家具」にこだわっています。あまりよく見もせず、どうして生木にこだわるかも含めて、全然理解していなかったのですが、説明してもらって、なるほどと思いました。生木は、乾いた木を加工するほどエネルギーや力が要らず、電気を使わないでもできるのだそうです。
またKくんは、生木の加工は洋の東西を問わず、昔から伝承されてきた方法なので、それを次世代につなげていくのも意味のある仕事と考えているようでした。


日本の生木細工で、代表的なものと言えば杓文字です。
杓子だけでなく、確か蕎麦などのこね鉢も生の木を彫りますが、臼はどうだったでしょうか。太鼓はどうだったでしょうか。

facebookをちゃんと見ていれば、生木でどんな椅子をつくっているのか、一目瞭然でしたが、木を割いていたあたりだけしか見ていなかったので、どんな椅子ができるのか知りませんでした。


だから、このシェーカーの椅子のような椅子をつくると聞いて、驚いてしまいました。

Kくんは学生時代に私が働いていた団体に参加して、一年ほどタイの難民キャンプで働きました。卒業すると最大手の放送局に就職し、報道記者として、今度は私たちの団体の活動をテレビで紹介したりしてくれたり、夕方の人気報道番組で、時にはカメラの前で報告する姿も見ていましたから、そのまま行くのだろうと思っていました。
ところが、Kくんはそれが自分の一生の仕事とは思えなかったそうで、退職して木工を学びました。

日本で木工の仕事をしばらくした後、数ヶ月の予定で行ったイギリスの各地で、結局は五年働きました。最後は、できるだけエネルギー(電気など)を使わない、今につながる家具づくりを学んだのだそうです。


「知らなかったけれど、これがその生木でつくった椅子かしら?」
私は、半世紀も前に買った、スペインの椅子を引っ張り出してきました。
「まさにこれです。浜田庄司が、もうちょっと素朴なのをスペインで見て、いくつか持ちかえって日本に紹介したんです。これどうしたんですか?」
「学生時代に買ったの」

「まず、脚のところの細い部材を先につくっておくと、細いからすぐ乾燥するでしょう。あとから垂直な脚に差し込めば、自然に締まって接着剤も要らないんですよ」
「すばらしい!」

背の部分はへぎ板ですが、生木の時は曲げるのも曲げやすいそうです。


買った当時は妙に白く、しかも轆轤でけばだっているようなところがあるのが気になった椅子です。
でも、生木を挽き、しかも動力が足踏みだったとしたら、この挽き傷も勲章のようなものだと、改めて思ったことでした。



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