2015年3月29日日曜日

少女のおもちゃ

3月28日、29日と、北条の「矢中の杜」で「御殿まるごとマーケット」というイベントをしているとの案内をいただいて、行ってみました。
「矢中の杜」は、建材の開発で財をなした矢中氏が、昭和初期、戦前から戦後にかけて建てた家で、今はNPO法人「矢中の杜の守り人」の方たちが管理し、毎週土曜日に公開しています。

さて、その屋敷の中で市を開く試みは、古本屋さん、はんてん屋さん、洋服屋さん、帆布の鞄屋さんなど、部屋ごとに出店し、庭では藍染めの体験もできたりと、公開日とは違う賑わいを見せていました。
中で、私の目を最も楽しませてくれたのは、廊下のような、控えの間のようなところのガラスケースにさりげなく飾られていた、昭和中期のおもちゃたちでした。


こんなおもちゃは、ここでボランティアをしているいいじまさんのものに違いありません。
たくさんのお客さんをかき分けて今来た廊下を戻り、いいじまさんをさがしました。
「あのおもちゃは、いいじまさんのものでしょう?」
「そう、私のもの。あそこが寂しかったから飾ってみたの」
やっぱりそうでした。


これは、昨年の7月に、「てぬぐい展」をやっていたときの、誰もいない静かな矢中の杜です。
 

そのときは、ご近所で集めた、その昔は何かにつけて配られたてぬぐいを展示してありましたが、それに合わせて飾ってあった、てぬぐいをかぶったお人形たちは、全部いいじまさんのコレクションでした。

今回は、「御殿まるごとマーケット」と同時開催している、「乙女のつくば道」に合わせて、女の子のおもちゃや、お土産ものを飾ったのだそうです。


「ままごとセットは、とくにかわいかったぁ」
出回りはじめたプラスティックの色がかわいいし、羽釜(お釜)が、時代を感じさせます。
「あれはね、私が小さい頃遊んだものなの」
なんと、大切に持っていたのでしょう!
おもちゃに関心を失っていた、中学、高校時代に、私の数少なかったおもちゃは全部失われてしまいました。


人形製作キットは使ったことはありませんが、人形づくりは顔と髪の毛で苦労しました。
あっ、首も手足もみんな苦労しましたが。


紙の着せ替えは、美智子さまものが中心に飾ってありました。
 

「くび替え」という遊びがあったなんて、全然知りませんでした。
好きな首を切り取り、自分で身体や服をつくって遊ぶのだそうです。


ガラスケースには、乙女の夢がいっぱい詰まっていました。
「いいじまさんのコレクションは女の子ものが中心なの?」
「そうでもないかな。猫とかテディーベアとかもあるんだけど」
猫のコレクションも見てみたいものです。


下の段は講談社の絵本。
私も、子ども時代に何冊か持っていましたが、もちろんとっくに失われています。


私の周りには、おもちゃに関心を寄せる人はほとんどいません。
そんな中で、いいじまさんは、稀有な存在です。
いつかコレクションの全容を見せていただきたいものです。もっとも、こんなに保存状態がいいのだから、普段は箱に入れてしまっているのかもしれません。

追記:


hattoさんのコメントにありました、お猿の戸の詳細です。


お猿の戸を反対側から見たところ。


部屋の中の襖。
京都から取り寄せたのだったかしら?


襖の模様は、とっても素敵でした。






6 件のコメント:

  1. 建具に描かれたお猿さん親のの画は、新しいものでしょうか?画風からそんな印象を受けます。絵具は?水干絵具?何を使ってかいてあるのでしょうね。

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  2. hattoさん
    少なくとも昭和初期のもの、迎賓館として建て増しされた離れではない母屋なので、戦前のものだと思います。
    部分だけ写した写真をここには添付できないので、本文の方に追加しておきますね。たぶん顔料だと思います。反対側には、華やかな花の絵が描いてあります。
    この当時をどうとらえたらいいのでしょう?日本の伝統的な美の価値判断が崩れて、しかし新しいものの価値もわからず混同して、それはそのまま今日に至っていますが、矢中の杜の母屋の方は、まだ古い美が失われていない様子が見えます。
    一方、財をなした方ですから、贅を見える形で尽くそうという成金趣味もちらついて(笑)、この玄関を入ってすぐの間より、女中部屋や台所の方が美しいという現象も見られます。
    絵は、それなりの絵師を招いて逗留させ描いてもらったようですが、どれも見事ですが、全部合わせたら魅力が減るかもしれません。引き算の美は、あまり考えなかったようです。

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  3. 追記のお写真ありがとうございます。杉戸の襖絵は褪色が見られませんね。多くの色彩が使われている花の図、顔料の色彩数からみて春さんの仰る時代くらいでしょうね。

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  4. hattoさん
    先回の竜巻と地震でずいぶん傷んだとか、長い間復興修理をしていたようです。
    ここはずいぶん熱心なボランティアの方がたくさんいらして、いろいろな使い方も考えています。「矢中の杜のブログ」をのぞいてみたら、いいじまさんはお正月には干支人形や羽子板を飾っていたみたい(http://www.yanakanomori.org/?p=1635)。私は、いつもそっちに関心が行ってしまいます(笑)。

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  5. わたしもここを覗いてみましたよ(サイトを)そして、広間の襖絵が艶やかなこと。あの部屋では、しんみりした会話は似合いませんね。笑 私的には褪色した色彩のものが好みですが、、、。 家は(館は)住み手によって如何様にも変わりますね。どんなよい建築でも、それにあった暮らし方・使い方をしなければ、生きた建築にはなりません。ここは、それを上手に受け継いだ方々がおられ幸せな建物ですね。

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  6. hattoさん
    確かにあれは、幸せな建物ですね。建物の良さというより(失礼)集う人の気持ちで生かされているようです。
    このあたり、とくに萱葺き屋根で残して欲しいと思われるものが数々あります。でも文化財に指定すると制約が増えるし、少しは補助されても出費が多い。息子にそんなものは残せないと、泣く泣く瓦屋根にしたり、壊してしまう家がほとんどです。
    確か矢中の杜はご子孫さんが「いらない」と売られたとか。それが正解ですが、あれは町屋、田舎屋だと世間体もあってそうはいきません。
    残念ながら、世代交代で、古い家がどんどんなくなっています。

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