2015年5月28日木曜日

本三昧


西洋珍職業づくし』を読んだとき、似た本を持っていたなぁと思い出し、本棚から引っ張り出してみました。


杉浦日向子の『一日江戸人』(新潮文庫、2005年)です。


この中に含まれる物売りの話はごくわずかですが、久しぶりに読んだら、すっかり杉浦ワールドにはまってしまいました。


はまりついでにと、ほかの本も取り出してきて、しばし江戸を楽しみました。
もっとも、『江戸アルキ帖』(新潮文庫、1989年)は読み返したりしませんでした。
何度か読んで、ほとんど覚えています。


ほかにも物売りの本があります。
『インドの大道商人』(山田和著、平凡社、1990年)は、路上で商売する人たちにインタビューした本です。


もう20年も前に読んだ本で、職業のいろいろがおもしろかったことはともかく、どんな本文だったかすっかり忘れていましたが、読んでみてびっくりしました。
山田さんのインドとつき合う姿勢もさることながら、あまりにも文章が美しいのです。

文章が美しいといっても、いわゆる美文調は嫌いです。
いつの時代にも美文調の人がいます。現代も、某料理研究エッセイストとか、某人類学者とか、書きだしから誇張した美文を連ねられると、鳥肌が立ってしまい、読み続けられなくなってしまいます。
また、最近の文学賞をもらうような、意味もない言葉が書き連ねられている文も、我慢が切れて読めません。そして、翻訳の文の中にも、
「日本語を勉強して、出直してきたら」
と言いたくなってしまうものがあります。

でも、山田さんの文は読みやすい。過不足なく、状況がしっかり伝わってきます。


というわけでもっと読みたくなり、『インド ミニアチュール幻想』(山田和著、文春文庫、2009年)を買ってしまいました。
こちらは、上の三冊のような社会の底辺の人たちの話ではなく、群雄割拠していたマハラジャやスルタンたち、いわゆるヒンドゥーやイスラムの王たちが私蔵していたインド細密画の話ですが、なにせ文がいい、自分でインドを旅しているような気になってしまっています。





2 件のコメント:

  1.  大道商人の舌三寸で客を集める話術は面白いですねー
    インドでもいろいろと見られましたか。
    祭りがイベントとなりなくなった一つの楽しみで
    啖呵売の一種「泣かせ」の全部をみました。
    役者は4人ほと登場しますよ。(大笑いです)

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  2. 昭ちゃん
    もともと言葉がわからないから、インドの舌先三寸の芸はわかりませんが、この本に載っているのは、ほとんどがじっと座って客待ちをしている人たちです。しかも売り子のお父さんも、お祖父さんも、曾お祖父さんも同じ場所に座っていた。著者によれば、路上だけれど、そこには目には見えない商店があってそれが何世代も続いているんだろうって。おもしろいですね。
    インドの列車に乗ると、入れ替わり立ち替わり、物売りが来ます。混んでいて隙間がなさそうに見えるのに、車内をすいすい動いて、炒り豆を売ったり、おもちゃを見せたりします。
    芸をする人もいるかもしれないけれど、しない人が主流だと思います(笑)。

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