コペンハーゲン郊外の、野外博物館(民家園)には、デンマーク各地の伝統的な民家を移築してあります。
建物の時代としては、250年前から、120年くらい前のものでしょうか。
広大な敷地内を歩いて回るには、膝を痛めている夫の脚が心配と思っていたら、タイミングよく馬車が来て、乗せてもらいました。
野外博物館の中には、羊や鶏が馬が飼われ、庭には果樹を植えたり野菜を育てたりして、当時の生活を再現しています。
途中で馬車を降ろしてもらいました。
目についた家から入ってみます。
台所に置いてあるのは、金属や素焼のお鍋です。
寒くないようにという配慮でしょうか、囲まれたベッドが多くありました。
それにしても、昔の人は背が低かった。今の人なら脚を折り曲げないと寝られません。
ときおり、小学生や幼稚園児たちの集団(と言っても、10人から20人)が見学に来て、にぎやかに通り過ぎて行きます。
子どもたちは先を急いだり、おしゃべりが楽しかったりして、家を見ている子は、あまりいないようでした。
当時、このような絵タイルは、すべてオランダからの輸入だったそうです。
この家の主人は、広く貿易をしていたようでした。
というのも、タイルの壁の脇に掛けられていたのは、キューバのバハナの町を描いた額でした。
庭には、養蜂箱が立っています。
どの家も、石畳と草葺き屋根が素敵です。
清潔な家畜小屋。
かつて、台所の竈は、家の暖房も兼ねていました。
どの家も納屋が大きく、家畜を大切にしていた様子が見てとれます。
ロの字型に建てられた大きな家の一部と中庭ですが、建物はすべて家畜小屋と納屋です。
納屋の中には、農作業の道具や、鋸などの大工道具が置いてありました。
小さな島の小さな家は、とりわけ興味深いものでした。
傾斜地に建ち、上から見ると、土の面と土を乗せた屋根が続いて見えます。
ローラ・インガルスの『大きな森の小さな家』のシリーズの、『プラム・クリークの土手で』の表紙絵にもなっている、ノルウェーからの移民の家に通じるものがあります。
といっても、斜面の低い方から見ると、普通の家です。
敷地の中には、石を積んだ物置小屋や、小さな水車小屋も建っていました。
物置小屋の入口。
土を乗せた屋根の防水に使っているのは、白樺の樹皮です。
母屋の屋根の防水も白樺の樹皮です。
この家の中は、こじんまりと懐かしい感じで、結婚したばかりの若夫婦と赤ちゃんが住んでいたのにふさわしい家でした。
「この家を見ると、日本の家を思い出すよ」
と、イエンス。
確かに、まるで囲炉裏と自在のようでした。
この家が建っていたのは小さな島だったので、建築材料と言えば、拾った石、島の外から買ってきた材木と、島に流れ着く流木だったそうです。
「へえぇ、流木でできているの」
家のどこを見ても、木の細工の見事さが目立ちます。
ドアのちょうつがいは、真似してみたいものでした。
各所には、折り畳めるテーブルが備えてあります。
ここは作業場ですが、食卓も折り畳めるようになっていました。
小さな島ですから、夫は漁師さんだったのでしょうか?
羊を飼っていて、妻は糸を紡いで布を織ったのか、織り物の道具もあります。
これらも流木でつくったのか、不定形でした。
こんな家に住んだらどんなに楽しいだろうと思われる工夫が、いたるところに見られる家でした。
イエンスが見せたがっていた、屋根に海藻を乗せた家は、残念ながら改装中で中に入れませんでした。
不思議な家です。
海藻は、断熱のために乗せたのでしょうか?
というのも、海藻をためておく納屋(人は住まない)の屋根には、海藻を乗せていませんでした。
既成品で買ってきたガラス窓が、自然木の曲がりに合わせて、水平でも垂直でもなく、でこぼこと曲がっている家が多かったのも、新鮮でした。
なんでも垂直、水平にしなくていいって、おもしろいことでした。
自然木の曲線にあわせた建築いいですね。昔の日本建築にも屋根裏には曲木、鉄砲梁を使っていましたが、いまやそれらの工法はあまりみられなくなりましたね。西岡常一さんがいう「人間も木もその個性を活かすことが大切」ここにもそんな建築があったのですね。そして、海藻を屋根に乗せる工法。これは、安価で耐久性もあり、産業廃棄物にもならず魅力的な素材ですね。海藻屋根ならば、日本国内でも作れそうですがなぜ、国内ではこれが広がらなかったのでしょうね。湿度が関係するのでしょうか。魅力的な海藻の家、中に入ってみたいです。
返信削除hattoさん
返信削除壁は木に合わせて、窓は壁に合わせてつくるというのは、不思議な感じでした。窓によって光の反射の仕方が違って素敵でした。もし私がこんな窓をつくるとしたら、計算していないように計算しようとしたりして、あとあと見るたびに後悔するつまらないものになってしまうでしょう。難しいものですね。
海藻の屋根は、草がない地方でそうしているのかと思ったら、納屋は草屋根、そして納屋に海藻をいっぱい蓄えていたので、びっくりしました。デンマークは雪は降るけれどそう深くは積もらない、むしろ冷たい風が問題のようです。というわけで、海藻は断熱対策なのでしょうね。家の中に入れなかったのが残念でしたが、冬ではないので、あまり温度を体感することはできなかったかもしれません。それにしても、窓の上にも目いっぱい海藻が垂れ下がっていて、おもしろかったです。