2016年2月11日木曜日

アトリエから集会室へ




だんだん部屋らしくなってきた作業室の中は、ステンドグラスを入れているせいもあって、キリスト教の礼拝堂のような雰囲気がしないでもありません。
数日前に夫が、
「あのさぁ、屋根のかかった場所がいっぱいできたから、工作機械は屋外に置いて、この部屋を集会室にしない?」
と、訊きました。
いつもは、夫の新しい思いつきには反対する私ですが、
「いいわよ」
と、即座に賛成してしまいました。

五年以上かけてつくっているのは作業室、あるいは木工室とかアトリエと呼んでもいい空間です。
その中で木工機械を使えば、いくら南と北の扉が全開できるとしても、鉋屑、鋸屑が膨大に飛ぶので、それをどうしたものかと、ずっと考えていたところだったのです。


機械はどれも工場用ではなく個人(大工さん)用、しかも古いものですから、集中集塵機を取りつけることなどできません。
持ち運びできない大きい機械は、写真の万能木工機(自動鉋+縦引き鋸)とテーブルソー、それにほぞ切り機の三つです。
大きな工作機械を室外、でも屋根の下に置いて、持ち運びのできる大工道具を納屋にしまい、使うときは今までどおり、外に持ち出して作業すれば、収納している大工道具が埃で汚れないうえ、作業した後の掃除も簡単です。

「世代が変わったりして、ある目的のためにつくった部屋を、最初とは別の使い方をするってことはあるけれど、完成する前に変更するなんておかしいね」
「おかしいね。でも、いいんじゃない。室内では埃が飛ばないってことだから。それなら、本棚もつくれるし、どこかに織り機を置けるかな?」
私の織り機も夫の本も、居間の下の、湿気の強い半地下の物置にしまい込んだままです。
「織り機か。大いからなぁ。二階の部屋でもいい?」
「いいよ」
二階には、夫がちゃっかり自分の部屋をつくろうとしていたのですが、譲ってくれるというのです。

母屋の二階が展示室になっているだけでも贅沢と言えば贅沢なのに、アトリエではなく集会室をつくってしまうなんて、ちょっと変でしょうか。しかも作業棟の二階には、お神楽の舞台のような宴会室まであります。


思い起こせば、最初はただ、住む場所が欲しかっただけでした。
ところがこの土地に来て、土地の持つ力に引っ張られて、家づくりはどんどん思ってもみなかった方向に向いてしまいました。私たちは、もしかしたら土地に家をつくらされているのかもしれません。

夫は、先の目途のついた仕事より新しいことを考えるのが好きだから、集会室にすることにしてから、なんだか浮き浮きしています。

 
せっかくつくった天窓を、昼間の明るいうちにスライドショーをするなら暗幕を装置しなければと思っているようで、部品を探すために、こそこそとホームセンターにも通いはじめました。

「この忙しいのに、趣味に走らないでよ」
膝が痛いので、もともと夫は上棟の下働きに関しては戦力外でしたが、ついつい言ってしまいます。
「でも、瓦を葺く前に、いろいろやらなくちゃならないから」
「天井からスクリーンが垂れ下がるような、小細工はやめてよ!」
「.....」
ずぼしだったようです。
「国際会議場じゃあるまいし、スライドするときはスクリーンをそこいらに立てて、天窓は屋根に上ってブルーシートをかければいいじゃない」
「.....」
そう言われても、何やら設計図の寸法を測っては、夫は工作に余念ありません。
決まりきった仕事をしていると、すぐ足が痛くなるのに、夢中になると足の痛さも忘れるようです。

今日大工さんが終了したら、次に瓦屋さんが来ようとどうしようと、膝に人工関節をつける手術を受けさせたいと思いますが、夫は今も天窓のところによじ登っています。





 



6 件のコメント:

  1.  棟上げ以前とまた違った工程を面白く拝見しております。
    野次馬でごめーん膝が悪いのですかー
    私も40年以上の付き合いです。
    当時人工関節の手術がありましたが、リハビリが長くかかるので
    休めずお灸で・九州では「やいと」で抑へました。
     80年代以降医療器具やリハビリも格段の進歩です。
    最近接骨院で甲状腺も関係あると、、、、。
    水は溜まりませんか、痛いのは内側ですかー


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  2. 昭ちゃん
    夫は五十代から忙しくすると膝が痛んでいました。今では軟骨は2mm(通常1cmくらい)しかありません。股関節の手術はもっと難しいようですが、膝はそう難しくないようです。今通っている病院で、人工関節の手術で見違えるように治った人も何人か知っています。ただ、悪い人がいっぱいいるようで、お医者さんは手術を延ばせる人は延ばそうとしています。夫はすぐ、「湿布で楽になった」などとお愛想を言うので(笑)、先延ばしにされてしまいます。
    歩かないと痛くないみたい、歩くと痛くて熊のような格好で歩いています。もう、見慣れてしまいましたが。
    家の方は、今日で大工さんがおしまい、途中お休みもありましたが怒涛の日々が終わりホッとしました。プロの仕事を見るいい機会でしたが、マイペースに戻れてよかったです(^^♪

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  3.  P,S,
    コンクリートや石畳の歩道・傾斜を下るなど微妙に違いますね、
    近所の奥さんが昨年片膝をいまだに痛みが取れないとか、
    それぞれです。

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  4. 明確な使い道が決まってよかったですね!この箱素敵なんだけど何入れたらいいんだかってことよくありますから。それにしもここに来てやっと建物の形がわかってきました。素敵です!春さんと旦那さんの会話も可笑し過ぎる!
    私の83歳の母も5年前に人工関節入れました。膝の痛みはなくなったようですが、そもそも上半身が太り過ぎなのでヨタヨタ歩きで下りの階段は大変そうです。身体障害者手帳が交付されタクシーや各種施設の割引がありましたが、去年からは新規の交付はなくなったようです。そもそも人工関節を入れて手帳が交付されることに驚きましたが。

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  5. 昭ちゃん
    昔から夫は下りが苦手です。私は上りが苦手ですが(笑)。
    というわけで、二人で山歩きを愉しむことはできません。

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  6. hiyocoさん
    しばらく前まで、「背中伸ばしたら?」と言ったりしていましたが、最近は夫の「熊歩き」に慣れました(笑)。左ひざをかばって、足を広げて前かがみになっています。それでも駐車するとき、「ここは障がい者ようだから」などと他をさがそうとするので、「立派に障がい者じゃないの」と言っています。
    大工さんが終わって、瓦屋さんなら私だけでも対応できますが、夫はいろいろ趣味に走りたくて(笑)、病院に足を向けません。
    建設の方、今回は床と壁だけなので、そう難しい工事はありませんが、部屋の使い道を変えたので、扉や断熱材のことをちょっと考慮しなくてはならなくなりました。

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