2016年5月5日木曜日

糸を入れる小引き出し

益子の春の陶器市に行ったとき、のんびりとテントをまわったあと、古道具屋さんの「内町工場」にも寄ってみました。
内町工場には、古道具と古本が置いてありますが、どちらもおもしろいものが置いてあって、益子に行くと、いつも寄ってみたくなる店です。


内町工場には小引き出しが充実していますが、その日は糸の陳列ケースがありました。
ガラスを嵌めた、奥行きのない引き出しに、糸巻きに巻いた糸を三色ずつ並べて見本にしていて、客は欲しい色の引き出しを開けて、奥からストックしてある糸をとりだすというものです。
かつては、どこの手芸品店にも置いてあった、お馴染みのものでした。この引き出し一つで、75色の糸をしまっておけます。
 

ネット検索で見つけた、別の会社の糸ケース。
こんな風に入れていたに違いありません。

ところで、その糸ケースの引き出し、うまく開きません。
引き出しを取り出して中をのぞいてみると、桟が何ヵ所かで取れしまっていました。
「桟をつけるだけで、なおりますよ。なおしてから店に出そうと思っていたのだけれど、連休に間に合わなくって」
と店主。大型連休は益子全体にかきいれどき、いつもと違って店内にはたくさんの客がひしめいていました。
単純なつくりだからなおしてみようと、その糸の引き出しをいただいてきました。


なくなっている桟は、同じ大きさの部材をつくって、とりつけました。
桟は8本いりますが、3本なくなっていました。


真ん中は桟ではなく、箱に強度を持たせるために板を渡してありました。
ところがその板はごく薄いもので、長年使っているうちに、引き出しの重さを受けて、釘を打ったところが欠けたため、別の釘を打って修理した後がありました。修理したところも同じように板が欠け、釘がむき出しになっていて、板はずり落ちてしまっていました。
効いていない釘を三本抜いて、ボンドをつけて、曲がってしまっている板をはたがねで正しい位置に固定してから、細いねじ釘を外から打ちなおしました。

さて、上から二段目の引き出しは、どうしてもきちんと閉まりません。よくよく見たら、桟(上の写真の左から二本目)が手前に出過ぎていて、邪魔していました。
ということは、手芸店に置いてあるときからずっと、閉まっていなかったのです。桟を短く切ったらちゃんと閉まりました。
 
大量につくったであろう引き出しですが、接着剤は使っていないし、桟の長さも一定ではないし、全体に手づくり感があふれています。
きっと、家内工業のような小さな工場で、手分けしてつくったものなのでしょう。
本体はラワン材、引き出しはラワン材とラワン合板でできているので、1960年代か、70年代のものだと思われます。

1960年代は、服は誰もが手づくりがあたりまえの時代でした。
買った布に合わせて、どんな色の糸で縫おうかと、ミシン糸を選ぶのは、誰にとっても楽しい時間だったことでしょう。


修理が終わったら、どの引き出しも、すいすいと開くようになりました。


一番上の、「折鶴印御縫糸」とガラスに書いてある引き出しだけ、三つに仕切ってあります。
はさみやラベルなど、糸ではないものも入れられるけど、大量にストックしなくてはならなかった、需要の多い白糸と黒糸のストックを入れていたのだろうと推察します。


二段目の引き出しからは、全部同じつくりです。

これに、ボルトやナット、ワッシャーなど、細々したものを入れるつもりです。
ガラスのついている前面の引き出しに見本を入れて、その奥に三種類のパーツを入れることができます。
この小引き出しだけで、75種類の細々したものを収納しておけるはずです。素晴らしい!







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