お天気が悪かった日が多かったのですが、先週で門+駐車場の全ての瓦工事が終わりました。
暑い中、照り返しのきつい瓦の上で長時間いるのは至難の業だと思いますが、瓦屋さんは汗を流しながら、朝の8時から夕方6時まで働き続けました。
棟瓦を積んだ後、その奥にのぞいている漆喰の部分をコテで整える仕事はとくにたいへんだと思われます。
この部分を整えるための専用コテがあるのですが、引っ込んでいるし、手勝手が悪い上に、無理な姿勢で作業し続けなくてはなりません。
高い屋根と低い屋根が重なって、下になった部分は、特に時間がかかりました。
柱にぶつかるところは、瓦を切って収めています。もちろん直角ではなくて、四寸勾配でぶつかっているので、柱にぴったりくっつくように、複雑に斜めに切って嵌めてあります。
この見事な収まり、惚れ惚れします。
ここは、無理な姿勢を取らないと手に届かないところで、私ならすぐ脚がつってしまいます。
さくらいさんをはじめ、職人さんたちはほとんどが京都で瓦葺きを学んだ兄弟弟子たちです(中には、さくさいさんのもとで修業している人もいます)。その京都の親方は、由緒ある神社仏閣を手掛ける、すごい腕の持ち主だったとか、みんなはその親方に惹かれて弟子入りしたそうです。
親方は亡くなられましたが、その技術は、さくらいさんたちに受け継がれています。そして、また次世代へと受け継がれるのでしょう。
その技術の一端を目の当たりにできたことだけでも幸せでした。
門+駐車場が終わった後、以前葺いたところにも登って、点検修理もしてくれました。てっぺんの、大梁を覆っている鉄骨との取り合いや、コンクリート柱との取り合いが、瓦だけの屋根とは違うから、ということのようでした。
以前、下屋の瓦が一枚だけちょっと欠けてしまったことがありました。
朝起きて、何故、板が屋根に乗っているのか、不思議に思って屋根に上ってみたときに、瓦が一枚、小さく欠けているのに気づいたのです。板は、コンクリート柱の上に仮にかぶせていた板とわかりました。前日に強風が吹いて、置いてあった板が飛ばされて、下屋の屋根の上に落ちてきたのです。まだ足場のあったころ、夫が入院していたころのことでした。
門+駐車場の打ち合わせに、久しぶりにさくらいさんがやって来たとき、入り口の方から歩いてきながら、開口一番、
「瓦が一枚欠けていますね」
と言いました。
すごい!下から見たら、探してもなかなか目に入らないほどの、小さな欠けだったのに、歩きながら見つけたのです。 さすがに餅は餅屋、うなってしまいました。
夫は最初から、「毎日目にするものだから」と、作業棟を瓦で葺くことを譲りませんでしたが、私はガルバリムでいいと思っていました。
ガルバリウムを葺く値段と、焼き締め瓦を葺く値段は、不思議ですが、思ったほど違いません。
ただ、できあがりの重厚さは全く違います。焼き締め瓦の方が値段以上に豪華なのです。私には、あまり重厚に見せたくない、ガルバリウムで軽々と見せたいという気持ちがありました。
焼き締め瓦で完成した今、建物が堂々とし過ぎていて、ちょっと気恥ずかしい気持ちはありますが、毎日逆光で瓦葺きの建物を眺める楽しみというのは格別なものだと知りました。順光で見るより陰影が出てきれいなのです。
というわけで、毎日、瓦や柱に当たる光の変化を楽しんでいる今日この頃です。
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