2016年12月26日月曜日

籠師の吉田さん

見上げるたびに、毎日の気分を爽快にしてくれていた籠玉ですが、今年の八月二十ニ日に強風で小玉がすべて飛び、大玉も外れ、壊れてしまいました。
かつて、茨城県から福島県にかけての太平洋岸の地域には、男の子が生まれると、鯉のぼりとともに籠玉を揚げる風習がありました。
籠玉は、揚げっぱなしにしておくと、二年ほどで傷んでしまいますが、昔は毎年、五月の節句時に、揚げて降ろしていました。
集落の人々に声をかけ、数十人で揚げたり降ろしたりした後は、ご飯やお酒をふるまっていた、それはそれで大変だったそうです。

「籠玉が飛んじゃって残念だなぁ。もう一回買うか?」
「また傷んじゃうから、もったいないよ」
そんな話をしたのは、しばらく前でした。
昨日また、籠玉の話が持ち出されました。
「やっぱりいいよなぁ、籠玉。今まで出しっぱなしだったけど、5月だけ挙げておくというのはどう?」
「降ろしても、置き場所がないと言っていたじゃない」
籠玉は、地上で見るととっても大きいものです。
「作業棟の下屋の軒下に置くのはどう?梁の上に上げたら、じゃまにならないだろう」
「そうか、それだと大丈夫かもね」
「ちょっと、見に行ってみようか?」

というわけで、二年半ぶりに籠玉をつくっている吉田平さんの家に行ってみました。


庭のあちこちに、孟宗の青竹が積んでありました。
「まだ、竹を採ってきたのをやっと片づけたとこ。編むのはこれからだよ」


籠玉は高いところで風雨にさらされます。
真竹だと肉薄で、どうしても早く傷んでしまうので、小さい玉だけ真竹でつくり、あとは孟宗竹でつくるそうです。


「伐るのも、編むのも力が要りますねえ」
「そうよ。今日も今まで片づけていたんだけど、くたびれちゃって休んでいたの」
と、84歳の吉田さんは、にこにこしていました。


仕事場も見せていただきました。
「自転車籠もつくられるんですね」
「何?」
「四角いの」
「あぁ、ここらじゃ配達籠って言うんだよ。あれはまだ途中だよ」


床には編んでいる途中のひごが置いてありました。


六角形がきれいです。


出来上がりはこんな、装飾的な籠になるようでした。
本も広げてあったので、試作かもしれません。


お祭りの、なにか飾りにするようなものもありました。


興味津々、伏せて鶏を飼っておく鶏籠のようなものもあったし、
 

帽子のような形の籠もありました。
カゴメ編み、そして大きいものがお得意と拝見しました。


この背負い籠も美しいものでした。
「いろんな籠をおつくりになるんですね?」
「あぁ、何でもつくるよ」

かつては、北茨城の方の籠玉の注文も受けたけれど、今はそうたくさんはつくれないので、近隣の注文だけこなしているそうです。
「籠玉はいつ要るの?今年中でもできるよ」
「ええっ、今年中って、もう一週間もないですよ」
「ああ」
びっくりした。
13個も小玉を編むのが手間だと聞いていたのに、年末までにできるというのです。
「そんなに急ぎませんよ」
結局、一月の終わりまでに仕上げてくれることになりました。楽しみです。








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